2019年以来、4年ぶりに米ラスベガスで開催「Adobe Summit 2023」
現地時間3月21~23日(日本時間22~24日)、アドビは米ラスベガスにて年次カンファレンス「Adobe Summit 2023」を開催した。2019年以来4年ぶりにラスベガスに戻り、リアルとオンラインのハイブリッド形式で実施した今年のカンファレンス。その基調講演では、魅力的な顧客体験の提供を支える“コンテンツ”に関連するアップデートが相次いだ。
最初に登壇したデジタルエクスペリエンス事業部門代表のAnil Chakravarthy氏は、今年のイベントのテーマを「Driving Experience-Led Growth (エクスペリエンス主導の成長を支援する)」と紹介した。顧客により高い体験価値を提供するには、企業はデジタルファーストで顧客体験(CX)の最適化に取り組まなくてはならない。SLG(Sales-Led Growth:営業主導の成長)でもなく、PLG(Product-Led Growth:製品主導の成長)でもない。XLG(Experience-Led Growth:エクスペリエンス主導の成長)の追求が、企業のこれからの成長戦略のテーマになるというのがアドビの主張だ。そのためには組織内の境界線を越えた取り組みが求められ、実際に企業内における組織の境界線はこれまでになく曖昧で意味のないものになってきている。
コンテンツなしに、魅力的なExperienceは作られない
あらゆるExperienceはコンテンツから始まる。大規模なパーソナライゼーションを実現するには大量のコンテンツが必要となるように、XLGの原動力はコンテンツにあると言える。
しかし、世界中の企業のほとんどがコンテンツの供給体制に問題を抱えている。その背景には、コンテンツの需要が爆発的に増大しているにも関わらず、社内の制作体制が追い付いていないという、需要と供給のギャップがあるようだ。
2022年12月にアドビが実施した調査結果によれば、企業におけるコンテンツ需要は過去2年間で少なくとも2倍に増大したことがわかっている。さらに、向こう2年間でコンテンツ需要は現在の5倍になるとの予測もある。ところが、ほとんどの企業で組織、プロセス、ツールの分断がもたらす作業量の増大に組織が疲弊し、顧客の心を引き付ける魅力的なCXを提供できないでいるとアドビは指摘する。
冒頭の今年のAdobe Summitのテーマ「Driving Experience-Led Growth」は、そうした現状を顧客企業と共に改善しようとするアドビの意思を表したもの。XLG戦略支援は、Adobe Experience CloudとAdobe Creative Cloudの連携による、コンテンツの企画から制作、配信、分析に至るまでのプロセスの最適化が起点となる。中でも大きな役割を担うのが、今回のイベントで発表されたジェネレーティブAIサービス「Adobe Sensei GenAI Services」だ。この新しいAIサービスは、Adobe Experience Cloudとネイティブ統合され、“副操縦士”としてマーケターと顧客とのつながりの構築や維持を支援することになる。