“夜”にフォーカスして消費額を上げる
MZ:アド・セイルは具体的にどのような提案をしたのでしょうか。
宮﨑(アド・セイル):観光プロモーションにおいては「実際の来訪につながったか」「消費されたか」が重視されます。三井住友カード様の分析結果から、宿泊を伸ばさなければ消費金額増にはつながらないことがわかったのです。少しでも長く滞在して多く消費していただくため、“夜”にフォーカスして「ミッドナイトおおいた」というコンセプトを提案。合計8種類の動画を制作し、ペルソナに合わせて広告を配信しました。
宮﨑(アド・セイル):広告の表示回数やクリック数はKGIにならないため、キャッシュレスデータと来訪計測の仕組みを組み合わせて効果検証を行いました。
安藤(三井住友カード):我々としても「分析して終わり」にはしたくありませんでした。当社のキャッシュレスデータ分析とアド・セイル様が持つ広告配信のご知見を組み合わせることで、現状把握・ターゲットの発見・広告配信・効果検証と、価値ある観光政策をトータルでプロデュースできると考えたのです。
MZ:効果検証の結果、どのようなことが見えてきましたか。
相原(三井住友カード):ミッドナイトおおいたを公開した2月は例年消費が落ち込む傾向にあるのですが、夜の消費に限ってキャッシュレスデータを見たところ、特に2023年2月以降は消費額が上がっていました。力を入れて訴求していた飲食カテゴリの伸びが顕著だったため、施策がしっかりと響いていることがわかります。
西山(大分県庁):大分の夜を知っていただくことで、ナイトタイムと宿泊の消費額に増加が見られたのはうれしかったですね。アド・セイル様に制作していただいた動画は良い意味で“攻めた”動画に仕上がっており、県庁内外で好意的な反応をもらっています。
データドリブンな自治体がリードする時代に
MZ:皆様の今後の展望やチャレンジされたいことについてお話しください。
西山(大分県庁):煩雑なデータの中から深い示唆を汲み取って施策に落とし込むことは非常に難しいと感じます。加えて県庁職員は定期的な部署異動があるため、部署が変わるたびに一から業務のノウハウを身につけなければならないのです。
西山(大分県庁):今回は三井住友カード様とアド・セイル様に、誰が見てもわかるデータと言葉で課題の発見や打ち手の提案をしていただけたため、マーケティングの実務経験がほぼなかった私も知見を得ることができました。これから観光に携わる自治体の方々にも、同様の経験をしてもらいたいです。
三浦(ツーリズムおおいた):我々は引き続き行政と連携を取りながら、観光誘客の体制を盤石なものにしていきたいです。これまで単体市町村のマーケティングは、リソースの問題から勘と経験と度胸に頼らざるを得ませんでした。昨今は行政でもデータが重視されているとはいえ、単体市町村ではできることが限られています。私たちはDMO(※)として各市町村と連携をとりながら、データドリブンな取り組みを進める考えです。
※Destination Management Organizationの略称。観光地域づくり法人のことを指す
宮﨑(アド・セイル):データはゴールを共通化して関係者が足並みを揃えるためのツールです。今後も自治体や企業様の自走化を支援していきたいと思います。
相原(三井住友カード):「インバウンドの消費」や「リピーター消費」など、今回のデータ分析では見えてこなかった部分を可視化して、施策につながる材料を提供していきたいです。
安藤(三井住友カード):2023年はアフターコロナの門が開く年だと思います。インバウンドや観光客の動きはさらに大きく変化するはずです。このことは、従来通り勘と経験と度胸だけに頼り続ける自治体と、データ起点で変化を捉えて戦略を考える自治体の間に大きな差が生まれることを意味します。今後もキャッシュレスデータを活用したご支援を通して、大分県の観光のニューノーマルを皆様と一緒につくっていきたいです。