来訪が活発な20代と高単価な60~70代
MZ:どのように観光分析を進めたのでしょうか。
相原(三井住友カード):観光プロモーションは「20代のお客様が多いから、20代に注力しよう」というわけにはいかず、すべての年代をカバーする必要があります。そのため、年代ごとの傾向を丁寧に分析し、それぞれに合わせた訴求を考えられるように意識しました。
相原(三井住友カード):消費データの分析によって、20代の若年層と60~70代のシニア層に顕著な傾向が見られたのです。ともに来訪が活発で、20代の多くはコロナ禍でも大分県の新しい施設などを訪れていました。60~70代の方はコロナ禍が落ち着き始めた2022年ごろから一気に大分県を訪れています。高単価な旅館やゴルフ場で消費されている動向が見られました。
三浦(ツーリズムおおいた):実際、シニア層に向けたプロモーションで「ゴルフを楽しみに大分へいらしてください」と訴求したところ、ゴルフ場の消費額が増加しました。
相原(三井住友カード):若年層とシニア層の来訪および消費が活発な一方、それ以外の世代は伸び悩んでいる状況です。コロナ禍の落ち込みから回復できていない実態が2022年のデータによって明らかになりました。今後は伸び悩んでいる層に向けた最適なアプローチを探り、次の施策につながる仮説を提示する考えです。
広告配信にタッチしていない我々だからこそ、フラットな立場でデータを分析してクライアント様にお伝えできる点が強みだと思います。伸び悩んでいる層があればその旨を率直に伝え、改善策を一緒に考えることができるからです。
三浦(ツーリズムおおいた):今回、三井住友カード様やアド・セイル様と最新のデータを見ながら毎月ミーティングを実施できたことも大きかったと思います。スピード感を持ってPDCAを回すことにより、コロナ禍という未曽有の変化を前にしてもタイムリーに動けました。
キャッシュレスデータで根拠のあるPRを
MZ:ここからは、大分県庁が主体となって実施したプロモーション業務委託の公募についてうかがいます。どのような背景で公募を実施されたのでしょうか。
西山(大分県庁):行政のPRでは「プロモーションを実施して終わり」という事業設計が少なくありません。しかしながら2022年秋に全国旅行支援が始まったことで、どの自治体も観光誘客に力を入れています。だからこそ大分県ではデータを基に根拠のあるプロモーションを実施し、明確な効果検証を行いたいと考えたのです。当然EBPM(※)の流れも影響しています。
※Evidence Based Policy Makingの略称。証拠に基づく政策立案のことを指す
三浦(ツーリズムおおいた):旅行会社経由の来訪者の割合が減ってきている影響もありますよね。これまでは旅行会社に聞けば来訪者の反応やパッケージツアーの売れ行きをキャッチアップすることができましたが、今は私たちが直接来訪者にアプローチしなければなりません。そこで重要な物差しの一つがキャッシュレスデータなのです。
西山(大分県庁):ターゲティングの精査からカスタマージャーニーの設定まで、各種データを基にプロモーションを実施するべく公募を行ったわけです。アド・セイル様にはEBPMの観点を踏まえ、私たちが求める提案をしていただきました。