日本のプラントベースフード市場は発展途上
――はじめに、東さんの経歴を教えてください。
私は2005年にPR会社のマテリアルを設立し、15年ほど代表を務めていました。2019年には同グループの株をファンドに売却し、私も経営からは離れることになりました。
TWOは元々マテリアルグループの子会社で、私が株を買い取り事業を刷新した形です。再スタート後は、入浴剤ブランドの「BARTH」を製造・販売していましたが、これも2023年にアース製薬に事業を譲渡し、今は「2foods」のみを展開しています。
――2foodsの事業内容を教えてください。
2foodsは2021年にローンチしたプラントベースフードブランドです。「ヘルシージャンクフード」をコンセプトに、植物由来の原料からできたカレーやハンバーガー、ドーナツなどを販売しています。店舗は渋谷ロフト店のほか、銀座ロフト店、アークヒルズ店(六本木)、ヤエチカ店(八重洲)、麻布十番店など、都内に5店舗を構えています。
――日本ではプラントベースフードの認知度自体、まだ低いように思われますが、東さんは日本のプラントベースフード市場の現状をどのようにお考えでしょうか。
実際、欧米と比べて日本のプラントベースフードの市場はまだ発展途上でしょう。市場規模の差には文化的な違いが影響していると考えられます。たとえば、日本では著名人が公の場で政治的・倫理的な発言をすることは一般的に忌避されますが、欧米ではセレブリティが積極的に政治的発言をしているのをよく目にしますよね。
プラントベースフードを巡る議論にも、環境保全の問題や食肉に関する立場など、センシティブなテーマが含まれていますが、最近では日本で若者を中心にプラントベースフードを試す文化が徐々に広まってきていると感じます。
健康食としてのプラントベースフード
――2foodsのブランド戦略についてお尋ねします。若者をブランドのメインターゲットに選んだ理由を教えてください。
「SDGsネイティブ」と称されるZ世代は、新しい文化に対して柔軟な姿勢を持っています。そのため、プラントベースフードに対する心理的なハードルも他の世代と比べて低いと考えました。店舗によって多少違いはありますが、渋谷ロフト店ではお客様の約4割が10~20代で、最も大きな割合を占めています。
ちなみに、日本では「プラントベースフードを食べることはエシカル消費の一環」というイメージが強いと思いますが、実は欧米では健康食としての側面がより強調されています。つまり「健康的なライフスタイルを求めつつ、食事も楽しみたい」という消費者ニーズに応える食べ物として、欧米ではプラントベースフードが普及しているのです。
また、米国ではMZ世代で動物性食品の食事を減らす「フレキシタリアン(※)」が増加しています。米国のとある調査によると、米国のZ世代の約8割が「現在または将来的に、週に1~2回は肉を摂らない生活にしたい」と回答しているようです(2018年、Aramark調査より)。
※基本的には植物性の食事を摂っているが、ときには肉や魚も食べる柔軟なベジタリアンを指す
「倫理的に優れた選択」ではなく「健康的でありながらもおいしい選択」というプラントベースフードの本質的な価値を訴求できるか否かが、日本における普及の分水嶺だと思っています。そこで2foodsでは、エシカルとは真逆なイメージの「ジャンキー」という言葉と「ヘルシー」を融合させたヘルシージャンクフードをブランドコンセプトに掲げているのです。