※本記事は、2023年8月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)92号に掲載したものです。
トレンド、世代論では済まされない「Z世代」理解の重要性
マーケティングやブランディングをする上で、そろそろ本格的に、Z世代の理解が重要になってきている――Z世代にフォーカスしたブランドコミュニケーションおよびプロモーションの支援を提供しているMERYの斉田氏は、Z世代マーケティングの重要性をこう説明する。
広義では12~27歳を指すZ世代。数年前までは「Z世代=20代前半の大学生」のイメージが強かったが、最近は20代半ばから後半になる人も増え、「20代=Z世代」という状況になりつつある。Z世代が若年層マーケティングの真ん中に入ってきたと言えるだろう。これから結婚や出産といったライフステージを迎える人が増えてくることを考えると、ますます様々な領域のマーケティングで欠かせない存在となっていくと思われる。
さて、マーケティング界隈でZ世代と言えば、「自分らしさを大切にする」「企業が作り出したブランドやメジャーなものへの警戒心がある」「タイパ重視」「ショート動画など効率のよい情報取得が好き」といったイメージを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。しかし、Z世代の消費・情報行動を、ネクストトレンド論や世代論、次世代のインサイト論として捉えているようでは危うい。なぜなら、Z世代の消費・情報行動は、若年層のトレンド的な論調ではなく、“次の時代のマーケティング理論”として必須になってきているからだ。
思っている以上に、世代間の情報断絶は大きい
「Z世代=次の時代のマーケティング理論」として考える際、特に30代以降のマーケターやクリエイターは、Z世代と自分たちとの間には大きな溝があると認識し、それを積極的に埋めていく姿勢を持つことが求められる。というのも、実は自分が思っている以上に、Z世代と30代以降とでは情報行動に差がある。
たとえば、博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所の調査によると、話題のニュースを見るときに、10~20代と30代以降とではTwitterを使う割合に大きな差があることがわかっている。また、Z世代は「スマホを手にするとまずタイムラインを開く」傾向があり、これも30代以降の情報行動と違いがある。「テレビやラジオ、新聞、雑誌、Webサイトと同様、様々な情報収集ツールの1つとして“SNSも”活用する」というのが従来の情報行動であるとすると、Z世代においてはSNSが起点になっているのだ。ときには、Z世代の間では広く話題になっているようなトレンドが、30代以降には全然届いていないといった現象も起こる。
さらに購買行動においても、SNSファーストな傾向が見られる。Glossom社の調査結果によると、商品やサービスを知るときの情報源としてSNSの投稿およびSNS広告を挙げる人が、20代の特に女性で多いことがわかっている。
「マスメディアの時代」から「マス×Webの時代」、そして「SNSファーストな時代」へ。今後はZ世代を大きな情報行動・購買行動の変化の入り口と捉え、SNSファーストな時代のマーケティング・コミュニケーションへと変革していく必要があるだろう。
さらに、SNSを軸にしたマーケティングを考える際に欠かせないのがインフルエンサーの存在だ。企業主導のマスコミュニケーションや、タレントなど憧れの対象からの一方的な情報発信ではなく、近年ではより親しみを感じられる、身近なマイクロインフルエンサーによる情報が信頼性と影響力を持つ時代になっている。つまり、インフルエンサーとは「手の届かない向こう側の誰か」ではなく、「情報を発信するインフルエンサーであり、自身も消費をするコンシューマー=インフルエンシューマー」になっているということだ。