次なるメイン消費者Z世代の消費行動論「ASISAS」モデル
SNSファーストなマーケティング・コミュニケーションを理解する上で、注目したいデータがある。CCI「Z世代研究会」が行った調査の結果によると、Z世代は認知~欲求の間に検索するスコアが最も高くなっている。つまり、Z世代は商品を欲しいと思う前に、その商品を欲しいかどうかも含めて検索で検討していく傾向にあるのだ。商品を欲しいと興味を持ってから検索行動に移るものだと考えられていた従来の消費行動論を踏まえると、大きな変化だ。
このZ世代の行動を体系的に理解するための方法の1つとして、斉田氏はASISAS理論を提示している。特徴をわかりやすく理解するために、インターネット上の消費者行動モデルとしてよく挙げられるAISASと比べてみよう。
企業側が発信した情報を消費者が受け取るAIDMAの“ONEWAY”モデルから、Webの利用拡大にともなってSearchやShareの行動が生まれ、企業と消費者が互いに関与し合う“インタラクティブ”モデルであるAISASが登場。そこから「見て気になったらとりあえず調べる」行動がSNSで起き始め、消費者同士で購買意欲を高め合う“モチベート”モデルのASISASが登場した――図表2を見ると、今ASISAS理論が有効な理由が腹落ちをもってわかるのではないか。

SNSファーストのコミュニケーション設計
最後に、ASISASを用いて施策に落とし込むときの例を紹介する。まずは、商品を認知し購入するまでの一連の行動をASISASに当てはめて見てみよう(図表3)。

A(認知):最初はSNSのタイムラインや発見タブで商品を認知。その後もSNSで繰り返し見かけると「どうやら流行っているようだ」と思うようになる。ただしこのフェーズでは、「本当に欲しいのか」「自分にとっていいものか」はまだわからない。
SI(検索1段階目~興味):専門家や専門系インフルエンサーなど信頼できる人のほか、マイクロ/ナノインフルエンサーなどSNS上の様々な人の発話をチェックし、興味関心を持つようになる。
S(検索2段階目):より深く知るために、口コミサイトや比較サイトで評価をチェックしたり、ブランドサイトやSNSアカウントなどで情報を検索したりする。
AS(購買~シェア):リアル店舗で商品を確認した上でリアル店舗やECサイトで購入し、自ら情報をシェアしていく。
このような消費者行動の流れに対応するものとして、斉田氏が紹介したコミュニケーション設計が以下だ(図表4)。

A(認知):消費者が「なんだか気になる」と思うような情報を作り、SNS上で広げていく。SNSメディアとのタイアップやインフルエンサーによるPR投稿といった濃い発話だけでなく、定常的なTwitterのプレゼントキャンペーン起点の発話も含めて、とにかく話題になる環境を作る。ただし、個人による投稿だけでは商品の魅力が伝わりきらないため、各発話を第三者配信などのSNS広告と掛け合わせて配信し、多角的かつ頻度高く情報がリーチする環境を作っていく。
SI(検索1段階目~興味):商品を認知した消費者がSNS検索へと行動を移すことに合わせて、カテゴリー内の専門家やインフルエンサーへのギフティングを実施。発信を見た消費者は「この人が勧めているなら信頼できそうだ」と思うようになる。さらに情報を深掘りする中で出会うであろうマイクロ/ナノインフルエンサーに対しても、ギフティングや投稿促進キャンペーンを通じて情報を広げていってもらう。(ここでインフルエンサーの信頼性を見極めるためにはどうすればよいか疑問に思った人もいるだろう。斉田氏は「ジャンルごとに専門家やマニアがおり、
そうした人を見つけられるか、そして巻き込めるか、が重要」と説明する。インフルエンサーマーケティングを行っている会社とともに探索し、関係構築を行っていく必要がある)
S(検索2段階目):SNS検索からWeb検索に移行する消費者に対応するため、商品カテゴリーによっては口コミサイトや比較サイトで評価を確認する。また、ブランドサイトやSNSアカウントの世界観や運用状況を確認するほか、フォロワー数を増やすためにInstagramのプレゼントキャンペーンを広告と掛け合わせて配信する。
AS(購買~シェア):店頭でブランドの世界観が伝わるようポップアップやノベルティ、ショッパーなどを工夫したり、店頭連動での購買・投稿キャンペーンを実施したりすることで再び情報に触れてもらうようにする。商品購入後に熱量を持ってシェアしてもらうことで、また情報が広がっていく構造を作っていく。
一連の流れのポイントは、インフルエンサーを活用していかに発話を作っていくかである。そしてその発話を広告で広げ、自社SNSアカウントで補足していくことが重要である。SNSファーストでインフルエンシューマーに溢れた時代のマーケティングを理解するものとして、ASISASは有効なモデルだと言えるだろう。