AIは活用すべき。ただし、最終判断は人が下す
――次に「8.分析・最適化の業務に対して積極的にAI/MLを活用すべし」についてうかがいます。まず、AI/MLを活用することでどういったメリットがあるのでしょうか。
橋本:AI/MLは網羅的にデータをチェックし、人の目では見落とす可能性のある異常値やパターンを高速で検出できます。これを活用することにより、分析スピードの大きな改善が見込めるでしょう。
たとえば、「何度もサイトに来訪してくれるユーザー」と「たまにしか訪れないユーザー」の二つのセグメントで、どんな属性や行動特性の違いがあるかを知りたいといったケースにおいて、マーケターがすべて手動で分析をすると大変な時間がかかります。しかし、AI/MLを活用することで、数十秒で新たなインサイトが得られるといったケースはよく耳にします。

橋本:AI/MLを活用することで、大量のデータを短時間で分析できるのはもちろんのこと、自分たちの仮説や先入観に囚われずに、新しい発見が得られるのも利点ですね。
梅澤:シナリオ設計においても、AI/MLを活用することでより効率化が図れるでしょう。ただし、AIによって生成されたシナリオが実際の売上拡大につながるか否かは検証の必要があります。
飯島:そうですね。たとえば、「検出された異常値が本当に異常値なのか」「売上にどの程度影響するのか」など、AIが分析したデータやシナリオの“正否”は最終的には人が下すべきです。そして、このジャッジはマーケターが日々の業務の中で磨いていくしかなく、マーケターの真価が問われるポイントだといえるでしょう。
「A/Bテストの自動化」がAI導入の第一歩
――データ分析やシナリオ設計以外に、AI/MLの活用例としてはどんなものがありますか?
橋本:たとえば、クリエイティブのA/BテストにおいてもAI/MLは有効でしょう。A/BテストはUI/UXの改善に不可欠な一方、一年に何十ものテストを行う必要があるため、その効率化は大きな課題でした。しかし、AI/MLの活用によって迅速に最適なクリエイティブを選ぶことができ、CVRの向上などビジネスインパクトを高めることができるわけです。
また、レコメンデーションもAI/MLの強みが顕著に現れる領域です。レコメンデーションでは、常に最新データを基に継続的な学習を行い、その結果、ユーザー毎に最適な商品やコンテンツを訴求することができます。たとえば、一斉配信のメルマガ内にパーソナライズされたレコメンド枠を設け、各ユーザーのニーズに合ったコンテンツを掲載する、といった風に。
飯島:最後に補足すると、橋本さんがおっしゃったテストパターンの勝者比較というのは、勝ち負けを判定するKPIをテスト段階で定義できていれば、人がやる必要はありません。そこはAI/MLをどんどん使っていくべきだと思います。読者の皆さんは、テストパターンの自動化からぜひトライしてみてください。
――ありがとうございました。今回は10の手法のうち、7、8について解説いただきました。最終回となる第4回では、「9. どのクリエイティブ/デザインが良いかは机上で考えずにA/Bテストすべし」「10. 無駄な打ち合わせを減らし、分析・最適化の業務時間を増やすべし」について語っていただきます。