「仕事が奪われる」は真実か?
伊佐:「AIに仕事を奪われるのではないか」と不安に思っている人もいるようですが、この点についてボドナーさんはどう考えますか?
ボドナー:AIは感情をともなわない意思決定を得意としますが、逆に人間は感情への配慮や意思疎通ができます。それが人間の提供するコアバリューの一つです。
過去にも大きな技術革新が起こるたび、職業人口や人間の働き方は変化してきました。今は100年前と比べて農業に従事する人の数が大幅に減っています。オートメーションや機器の発達により、農業の生産性が高まったからです。現代社会でも同じことが起こります。AIによって消えゆく仕事もあれば、新たに生まれる仕事もある。AI導入はトータルで見ればメリットのほうが大きいと思いますが、人間の働き方や仕事に必要な人員の数は、向こう数年間で変化するでしょう。
伊佐:AIを活用する人とそうでない人の間の格差はますます広がっていきそうです。
ボドナー:今後ビジネスで成功を手にするのは、AIテクノロジーやツールを駆使して仕事の質を高められる人だと思います。
伊佐:同感です。HubSpotが日本の営業部門のマネージャーや担当者を対象に毎年実施している調査では「勤務時間の約22%が無駄なことに費やされている」という結果が出ています。無駄なこととして「社内のミーティング」や「報告業務」などが挙がりました。社内ミーティングが時間の無駄だと思われている理由は、単なるデータの確認に多くの時間を費やし、ディスカッションや情報共有をほとんど行っていないからでしょう。データの確認や報告業務をAIに委ねれば、ミーティングを有意義なディスカッションで充実させられるはずです。
活用すべき業務を見極められるリーダーに
伊佐:企業がAIを導入するにあたって、直面し得る課題を教えてください。
ボドナー:AIは新しさゆえに十分なノウハウがまだ蓄積されていません。日を追うごとに利用のハードルは下がっていくものの、ノウハウ不足により様々な課題が生まれるでしょう。
その一つが、AIの得手不得手を含む機能理解が進んでいないことです。AIは大まかな解の提示を得意としていますが、完璧で正確な解を出すことは苦手です。たとえば「HubSpotのCRMでカスタムオブジェクトを作成するには?」という質問に完璧な解は必要ありませんから、AIは一連の作成手順を示します。その手順に沿って作成を進めている最中に行き詰まった際は、再度AIに質問を投げかけ、うまくいくまで繰り返せば良いのです。
一方、正確な統計情報が必要な場合や、厳密な手順に従ってプロセスを進める必要がある場合、AIに頼るのは得策ではありません。このように、AIを活用すべき業務の見極めが企業リーダーには求められているのです。
伊佐:AIは賢く活用すれば間違いなく有益ですが、利用方法を誤らないよう注意が必要なのですね。最後に日本のビジネスパーソンへアドバイスをお願いします。
ボドナー:AIは次世代のインターネットであり、Web 3.0の基盤となるテクノロジーでもあります。新しい知識を吸収する際は、信頼の置けるリソースを見つけて根気よく学び続けてください。AIの可能性に対する理解を深めながら、活用目的を絞り込み、実際のビジネス環境でテストしてみましょう。そうすることで実践的なノウハウが身に付き、ビジネスの成長を促進できるはずです。
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