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MarkeZine Day 2023 Autumn(AD)

ファンとの対話が最強のソリューション!ロイヤル顧客育成の鍵は「価値の階層」にあり

 Z世代を中心に「推し活」や「推し消費」が注目を集める中、マーケティングにおいてもファンダムの存在感が日に日に増してきている。そこで、ファン獲得に有効なコミュニティの運営支援を行っているコミューンがMarkeZine Day 2023 Autumnに登壇。コミュニティの形成・運営のTipsについて解説した。

知る人ぞ知る銭湯のXフォロワー数を1万人弱に

 コミュニティサイトの立ち上げに使えるCMSを提供するコミューン。同社で企業のコミュニティ運営支援に加え、新規顧客の開拓などにも取り組む駒谷氏が本セッションのスピーカーだ。

コミューン コミュニティストラテジー部 マネージャー 駒谷徹氏

 同氏は冒頭、「マーケターにとってはファンとの対話が最強のソリューションである」と指摘。なぜ、そう言い切れるのか。同社が支援した台東区の銭湯「湯どんぶり 栄湯(以下、湯どんぶり)」の事例を基に、その真意を明らかにする。

 湯どんぶりは、芸能人が御用達であったり、テレビドラマ『サ道』(テレビ東京系)のロケ地になったりするなど、サウナ好きには知られた銭湯だ。X(旧Twitter)では、一人のコミューン社員が湯どんぶりのアカウントをワンオペで運用。その結果、数年でXのフォロワー数は数百人規模から1万人弱にまで増加した。さらに、2022年11月26日(良い風呂の日)にはコミュニティサイト「湯どんぶりの待合室(以下、待合室)」を立ち上げ、盛況を博しているという。

コミューン社員によるX投稿の一例(左)と、湯どんぶりの待合室(右)

 この待合室立ち上げの経緯に、訴求力の高いファンコミュニティ形成のヒントが隠されているようだ。

「価値の階層」を踏まえた発信が重要

 まず担当者はXのDMで、湯どんぶりのロイヤルユーザーを待合室に先行招待した。その際は文面にも気を配り、ファンの声を引用した一文を盛り込むことで、共感の喚起を狙ったそうだ。さらに、「先行招待であること」「自分と価値観が近い人しかいないこと」を強調し、特別感と安心感を感じてもらえるようにしたという。その結果、約20〜30人に送ったこのDMには非常に高い確率で返信が来たとのことだ。

待合室への先行招待メールの一例

 さらにその後、約20人でZoom座談会を実施。座談会を通じて、「湯どんぶりの好きなところ」や「今後、期待しているところ」などをヒアリングした。また、待合室のサイト上でも「湯どんぶりの好きなところ」をテーマに意見を募ったという。

 次に担当者は、Zoom座談会や待合室で募ったファンの生の声を基に、ユーザーが「ファン」になる過程の分析を試みた。その結果、ロイヤル顧客育成に有効なフレームワークが見つかったという。それが「価値の階層」だ。

価値の階層

 ファン化のエントリーフェーズであり、かつ最もボリュームの大きい底部のユーザーにとっては「『炭酸泉が充実している』といった湯どんぶりの機能的価値が魅力になっている」と駒谷氏。ロイヤルティが醸成され、中段に移行すると、「仕事でボロボロの時に救われている」といった情緒的価値をユーザーは感じるように。そして、最上段では「より良い銭湯に進化させようとするオーナーの探求姿勢」などのポイントが、ファンの琴線に触れるようになるという。

「各階層における提供価値を意識してファンと対話することで、中の人への共感と愛着が育まれます。一見地道な施策ですが、最終的にはNPS(推奨意向)や来店頻度、ファンによるSNSの投稿といったUGCの増加につながっていくでしょう」(駒谷氏)

価値の階層を意識したXでの発信や対話の一例

ファンが望むことを叶えてあげる

 さらに「ファンが望むことを実現してあげることも重要」と駒谷氏。前述のZoom座談会で、とあるファンから「ボランティアで風呂掃除をしてみたい」という要望が挙がったという。そこで、実際に清掃体験イベントを敢行したのだ。

「その結果、参加者は皆、初対面だったにもかかわらずイベントが終わる頃には友達のような間柄になっていました。さらに、彼らがイベントの感想をXで投稿してくれて、その投稿のインプレッション数は通常時の約10倍を記録しました。来店数も増加したとのことです」(駒谷氏)

 駒谷氏は「ファンのやってみたいことを聞いて、それを実現するのは、非常に今風のマーケティング手法」と話す。これによって参与感が醸成され、ファンの熱量も上がった結果、ファンの企業活動へのコミットをよりエンパワーメントすることにつながるのだという。

「参与感を醸成していくことで、ファンは究極的に、ほぼ『従業員』のような働きをしてくれます。感想を投稿するだけでなく、商品・サービスの使い方を広めてくれたり、商品・サービスの開発・改善提案、ときには販売代理までしてくれたりするのです」(駒谷氏)

 湯どんぶりにおいても、クリエイターを本職とするファンがコラボグッズを作成。渋谷ヒカリエで販売しているほか、ファン同士で集まって近隣の飲食店マップを作成したり、ユーザー主導でウォーキング・ゴミ拾いクラブが発足し、地域経済や清掃に貢献する活動も生まれているとのことだ。

顧客の自己実現を目指すマーケティング4.0

 そもそも、なぜファンとの対話が重要なのか。「なぜなら、マーケティング4.0の時代だから」と駒谷氏。マーケティング4.0とはコトラーが提唱する理論で、駒谷氏いわく「顧客の自己実現を目指すマーケティング」だという。

 自己実現とは「マズローの欲求5段階説」でピラミッドの最上段に位置する欲求であり、「自分の能力を発揮したい」「創意工夫したい」などの欲望を指す。つまり、顧客に「自分の能力を発揮できた」と思ってもらうことを目指すのがマーケティング4.0であると駒谷氏は解説する。

 マーケティング4.0が顧客の自己実現をゴールとする背景には、スマホとSNSが普及し、個人の訴求力が強まったことがあるという。「今や企業の直接的な宣伝よりもユーザーによる二次拡散のほうが、購買の決め手になり得る」と駒谷氏。つまり、ファンコミュニティを形成し、UGCを生み出すことが現代の有効なマーケティングメソッドということだ。

 駒谷氏はマーケティング4.0の具体事例として、カルビーの「じゃがりこ 細いやつ(仮称)サラダ」を挙げる。カルビーが同商品のテスト販売期間中にSNSで正式名称を公募した結果、Xでは大喜利大会が始まるなど大きなバズりを見せた。最終的には、仮称が正式名称として採用されたため、一見無意味な企画に思えるかもしれない。

 しかし「ユーザーを巻き込み、商品名を考えさせ、集まった声を“見えるところ”で反映させるプロセスそのものが、このプロモーションの肝だった」と駒谷氏は指摘。なぜなら、マーケティング4.0ではユーザーの自己実現がゴールであり、企画への参与感や、「Xという開かれた環境で自分の声が反映されるかもしれない」という期待感が自己実現につながったからだ。

カルビー「じゃがりこ 細いやつ(仮称)サラダ」のキャンペーン投稿

コミュニティとSNSの相互補完的な関係

 駒谷氏は、ファン育成の重要な“場”である「コミュニティ」と「SNS」の関係性に言及する。同氏によると、「コミュニティとSNS​​​は相互に補完し合う関係」とのことだ。

「SNSだけではファンと密に交流することは難しいですし、コミュニティのみだとファンの声を世間一般に拡散させづらい。したがって、コミュニティで熱量を高めてユーザーにファンになってもらい、そのファンにSNS上で一般の方々に向けて発信してもらう。その口コミに感化された人が新たにコミュニティに入ってくる……こうしたサイクルを作るのがベストなソリューションです」(駒谷氏)

 さらに駒谷氏は、「コミュニティを深く理解するには、実際に参加して体験することが最も重要」と述べ、コミューンが運営をサポートしている次のサイトを紹介する。いずれも参加無料のコミュニティだという。

コミューン支援で登録ユーザー数は約5倍に

 駒谷氏は続けて「コミュニティ運営の予算が年間2,000万円未満の場合、サイト立ち上げにあたっては自社で開発するよりも既存のベンダーのCMSプラットフォームを利用したほうが良い」と勧める。なぜなら、スクラッチ開発には初期投資だけでなく、メンテナンスや追加の機能実装にもコストがかかるからだ。

 また、各ベンダーの提供するプラットフォームの機能は様々。「UI/UX」をはじめ「ダッシュボードの視認性」や「レコメンド機能」さらに、1st Party Dataと連携する際の「APIの柔軟性」など、見るべきところは複数ある。

「どのベンダー企業も『自社はカスタマーサクセスが充実している』などとアピールしますが、CSの分野でも得意領域は様々あるため、注意が必要です。その点、手前味噌ですが、私たちコミューンが提供するCMSとサポート体制は、業界内でも優れているほうだと自負しています」(駒谷氏)

 同社の提供するCMSには、初めてコミュニティに参加したユーザーに自動でウェルカムメッセージを送る機能が搭載されている。

「ユーザーが初めてコミュニティに参加する場合、運営側から放置されるか、きちんと個別にメッセージをもらえるかで、その後のコミュニティへの“想い”には雲泥の差が出てきます。ウェルカムメッセージの自動送信機能はニッチな機能のように思われるかもしれませんが、非常に大事な意味を持つのです」(駒谷氏)

 さらに、ユーザーの不適切な投稿に即座に対応するための「炎上防止機能」や、オン/オフのイベント運営のサポートなど、多岐にわたるサービスを提供しているという。

コミューンでは、ノベルティの作成も一部、請け負っている

 確かに、FacebookやLINEを活用すればコミュニティ運営を無料で済ませることは可能かもしれない。しかし、過去に無料のプラットフォームを利用していた企業がコミューンサポートに移行した結果、登録ユーザー数が約5倍に拡大した例もあるという。「コミュニティ運営には実は多くのノウハウや経験が求められる。ぜひ私たちの知見を活用して、成功への道を探ってもらえれば」と駒谷氏は語り、セッションを終えた。

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この記事の著者

中込 めめ(ナカゴメ メメ)

ライター

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提供:コミューン株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/17 12:00 https://markezine.jp/article/detail/43529