知る人ぞ知る銭湯のXフォロワー数を1万人弱に
コミュニティサイトの立ち上げに使えるCMSを提供するコミューン。同社で企業のコミュニティ運営支援に加え、新規顧客の開拓などにも取り組む駒谷氏が本セッションのスピーカーだ。
同氏は冒頭、「マーケターにとってはファンとの対話が最強のソリューションである」と指摘。なぜ、そう言い切れるのか。同社が支援した台東区の銭湯「湯どんぶり 栄湯(以下、湯どんぶり)」の事例を基に、その真意を明らかにする。
湯どんぶりは、芸能人が御用達であったり、テレビドラマ『サ道』(テレビ東京系)のロケ地になったりするなど、サウナ好きには知られた銭湯だ。X(旧Twitter)では、一人のコミューン社員が湯どんぶりのアカウントをワンオペで運用。その結果、数年でXのフォロワー数は数百人規模から1万人弱にまで増加した。さらに、2022年11月26日(良い風呂の日)にはコミュニティサイト「湯どんぶりの待合室(以下、待合室)」を立ち上げ、盛況を博しているという。
この待合室立ち上げの経緯に、訴求力の高いファンコミュニティ形成のヒントが隠されているようだ。
「価値の階層」を踏まえた発信が重要
まず担当者はXのDMで、湯どんぶりのロイヤルユーザーを待合室に先行招待した。その際は文面にも気を配り、ファンの声を引用した一文を盛り込むことで、共感の喚起を狙ったそうだ。さらに、「先行招待であること」「自分と価値観が近い人しかいないこと」を強調し、特別感と安心感を感じてもらえるようにしたという。その結果、約20〜30人に送ったこのDMには非常に高い確率で返信が来たとのことだ。
さらにその後、約20人でZoom座談会を実施。座談会を通じて、「湯どんぶりの好きなところ」や「今後、期待しているところ」などをヒアリングした。また、待合室のサイト上でも「湯どんぶりの好きなところ」をテーマに意見を募ったという。
次に担当者は、Zoom座談会や待合室で募ったファンの生の声を基に、ユーザーが「ファン」になる過程の分析を試みた。その結果、ロイヤル顧客育成に有効なフレームワークが見つかったという。それが「価値の階層」だ。
ファン化のエントリーフェーズであり、かつ最もボリュームの大きい底部のユーザーにとっては「『炭酸泉が充実している』といった湯どんぶりの機能的価値が魅力になっている」と駒谷氏。ロイヤルティが醸成され、中段に移行すると、「仕事でボロボロの時に救われている」といった情緒的価値をユーザーは感じるように。そして、最上段では「より良い銭湯に進化させようとするオーナーの探求姿勢」などのポイントが、ファンの琴線に触れるようになるという。
「各階層における提供価値を意識してファンと対話することで、中の人への共感と愛着が育まれます。一見地道な施策ですが、最終的にはNPS(推奨意向)や来店頻度、ファンによるSNSの投稿といったUGCの増加につながっていくでしょう」(駒谷氏)