収集したデータを企業に還元 リテール流カスタマーサクセス
大里:体験型ストア「b8ta」だからこそ提供できる価値は何だと考えていらっしゃいますか?
羽田:体験型ストアならではの価値の一つに、実店舗内の行動データを収集できることが挙がります。当社では、店内の天井にAIカメラを設置しており、来店者の動きをモニタリングしています。区画の前を通り過ぎた人数や商品に興味を持った人数、おおよその性別・年齢層の計測まで行っています。
これにより、実際にどのような流れで購入まで結びついたかといったCVのポイントまで把握できるのも特徴的です。
しかし、データは取得するだけでは意味がありません。そこで、出品企業につき必ず一人は専属のCS(カスタマーサクセス)担当をアサインしています。当社のCSは、出品企業によるデータ活用の目的をヒアリングし、それらをb8taテスターに共有します。そして、取得したデータを基にレビューミーティングを行い、出品企業に合わせてその事業成長につなげるためのデータの活用方法や施策を提案しています。
こうして当社では、出品企業の商品の売上ひいては事業成長につなげるためにデータを還元するようにしています。
大里:もはやコンサルに近いですね。創業当時から、同様のビジネスモデルだったのでしょうか?

羽田:創業時からCSの部隊はありましたが、日本で進化した領域だと捉えています。我々は“売ること”を主目的としない事業体であり、出品企業にとって一番の価値になるのは、課題解決や新たなビジネスにつながる消費者のインサイトを提供することだと考えています。
売れなくても理由の深掘りで価値ある出品に
大里:出品企業にヒアリングをする中で、商品訴求に関する共有もあると思います。それがb8taの来店者には合わない場合、訴求ポイントを変える提案などもされるのでしょうか?
羽田:いえ、最初はブランドが伝えたい形で訴求することを第一にしています。しかし、それが来店者に刺さるかどうかは別問題です。当社ではネガティブな結果も含め、お客様のリアルな声を集めて企業にフィードバックしています。実店舗でユーザーの本音を引き出し、それをデータとして共有できることが私たちの強みだからです。
大里:確かにそうして得られたフィードバックは、通常のユーザーインタビューとは違って、購入を検討する立場にいる人が持つ“気持ちの揺れ”などが収集できます。より現実に即したデータとなりますね。b8taではお客様の声をどのように記録し、出品企業と共有しているのでしょうか?
羽田:b8taテスターがデジタルデバイスを使って音声入力でメモするなど、ツールを積極的に活用しています。また当社が作成したプラットフォーム上で、出品企業とb8taテスターが直接コミュニケーションできる仕組みを整えています。
そこでは、b8taテスターが商品説明デモを行った回数やお客様からのレビュー内容が見られるだけでなく、商品の認知経路や、買った・買わなかった理由に至るまでの詳細なコメントをやり取りすることが可能です。
たとえ店舗内で商品が売れなかったとしてもそれは失敗ではありません。その原因を店内のAIカメラによって取得した定量データと、お客様に響かなかった理由などの定性データ双方から読み解くことができるからです。それこそが出品企業にとって大きな価値になります。

大里:たしかに商品が刺さらなかった理由を深掘りできれば、商品の方向性を変えたり、訴求の切り口を変えたりとチューニングの材料になりますよね。場合によっては、投資を辞める判断も早期で行うことができます。これは、企業にとって大きな価値ですね。