実際に体験して商品の価値を届ける 「体験型の小売店」b8taとは?
大里:本連載では、店舗ビジネスの有識者や新たな店舗ビジネスで注目される企業の方々をお招きし、これからの店舗ビジネスの在り方を紐解いています。
b8ta(ベータ)は2015年に米国サンフランシスコで創業後、2020年8月には日本に上陸しました。まずは事業の概要や背景を教えていただけますか。
羽田:b8taは創業以来、Retail as a Serviceのパイオニアとして事業が始まり、「体験型の小売店」というソリューションを推進してきました。
創業者の一人がスマートホームデバイスの開発者だったのですが、店頭に陳列されるだけだと本来の価値を消費者に伝えることができず、悔しい思いをしたということが創業のきっかけでした。そういったこともあり、我々は「発見と体験をお届けする」というコンセプトを重要視しています。
羽田:b8taでは様々なブランドに対して月額制で店舗内の区画を提供しています。
区画内には、テック企業の最新ガジェットから、スタートアップ企業でのベータテスト中の商品、ライフスタイルグッズ、化粧品やトレンド感のある飲食物まで、幅広い商品が並んでいます。来店者は商品に実際に触れたり、b8taテスター(店舗スタッフ)から商品ストーリーを直接聞いたりすることで、商品の魅力を五感で体験できます。そして、気に入っていただければ、店舗に在庫がある商品に関してはその場で購入も可能な設計になっています。
良質な店舗体験に必要なのは“接客の力”
大里:b8taの事業の背景には、テクノロジーの進化とそれにともなう消費者による購買行動の変化があると考えています。日本に進出して3年経った現在、どのような変化を感じていますか?
羽田:b8ta Japanはコロナ禍の最中に2店舗同時にオープンして日本での事業が始まりました。コロナ禍の影響は大きかったですが、一方で逆風を追い風に変えられた面があったとも考えています。当時は百貨店をはじめリテール全体が厳しい状況に置かれていたことで、体験型店舗が多くの企業から“次世代のリテール”として期待されるようになったためです。
現在では、「商品を実際に使ってみる」「試食する」などの接触をともなう体験もできるようになったことでインバウンドのお客様を含め、かなり多くの方に受け入れられるようになったと感じています。
大里:多くの商品がオンラインで購入される中、リアルに介在する接客など、店舗での体験価値が改めて見直されているからこその現象なのではないでしょうか?
羽田:まさにそうですね。実際に触らないと魅力が十分に伝わらない商品は多いです。また、来店されるお客様は必ずしも商品を買うことが目的ではなく、生活にある課題をなんらかの機能で解決したい方や、購買の意思決定に寄り添ってほしいといった目的を持つ方が多くいらっしゃいます。
良質な店舗体験は、商品とお客様と接客スタッフの三者が揃ってはじめて生まれるものです。そのためにも当社ではb8taテスターの採用や育成には特に注力しています。お客様ごとに寄り添った対応をするために、人が介在する価値はまだまだ大きいと思っています。