仮説を立てる際に有効なツール
流入元別に顧客をグルーピングし、各グループにおけるユーザーの動きを可視化したとしよう。ネクストステップとしてどのようなアクションが考えられるのか。大城氏は施策の実行と検証を挙げる。
「たとえばアプリ内でプッシュ通知を行うとしましょう。店舗経由でアプリをインストールした後すぐに会員登録をしたユーザーと、インストールしたものの会員登録をしてないユーザー。両者に同じ内容を通知しても、反応は当然異なります。だからこそ、グループごとに施策を変えながら『なぜこのユーザーはKPIに到達していないのか』を仮説検証することがポイントです」(大城氏)
仮説検証の例は次のとおりだ。店頭経由の新規獲得数を改善するために、ポップの設置場所やスタッフの声かけ内容を変えながら、インストールや会員登録につながるベストプラクティスを探る。ほかにもWeb広告およびアプリ内広告のクリエイティブを変えたり、インストール済みのユーザーが再度アプリを訪れたくなるようなリターゲティング広告やプッシュ通知の内容を考えたりするのも手だろう。
「アプリをインストールする前から、ユーザーの熱量やインサイトには特徴があります。Adjustは一人ひとりの熱量がどの程度のものなのか、どのようなインサイトを抱えているのか、仮説を立てる際に最適なツールです」(大城氏)
属性の前に行動を見よ
DearOneはNTTドコモのグループ会社で、BtoC企業のデジタルマーケティングを支援している。OMOのアプリ開発を主事業としているため、飲食・小売のクライアントが多いとのことだ。
同社は主に二つのサービスを提供している。一つ目が伴走型のアプリ開発サービス「ModuleApps2.0」だ。店舗販促に使えるアプリを早く・安くつくることができる。二つ目は米国のプロダクトアナリティクスツール「Amplitude」だ。こちらではアプリ上のユーザー行動を、専任のデータ分析官に頼ることなく簡単に分析することができる。
同社でマーケティング部のゼネラルマネージャーを務める安田一優氏は、アプリの継続利用を促す第一歩として「リテンション率やコンバージョン率が高いロイヤルカスタマーの行動に着目すべき」と語る。
性別・年齢・居住地などの属性を分析する担当者は多いが「ユーザーの趣味嗜好が多様化する昨今、属性だけではユーザーの姿を正しく理解することが難しい」と安田氏。そこで「お気に入り登録を●回以上している」「クーポンの閲覧を●回以上している」「レビューを●回以上書いている」などの行動に着目する“ビヘイビアベースアプローチ”が有効だという。
「『ロイヤルカスタマーは、一般ユーザーよりも特定の行動を多くとっているのではないか』という仮説の下、ロイヤルカスタマーがとりがちな行動を他のユーザーにもとってもらえるよう促し、ロイヤルカスタマーを育成するアプローチです」(安田氏)
ビヘイビアベースアプローチの進め方は次の図のとおりだ。
ロイヤルカスタマーを定量的なデータで定義した上で、属性を具体化する。彼らがよくする行動を新たに発見し、その行動をロイヤルカスタマー化の鍵と捉えて促すための施策を実行する流れだ。UIを変更したり、キャンペーンや割引を行ったりして、ロイヤルカスタマーの行動を他のユーザーがとりやすくする。