「今あるデータで実現できないか?」と問うことも
──スモールステップの例を教えていただけますか?
たとえば「必要なデータと不要なデータがごちゃごちゃになってしまっている」みたいなことは当社でも度々起こります。綺麗な状態が理想的ですが、その状態を目指すためにデータの設計書を見直したり、細かい運用を現場のマーケティング担当者にお願いしたりするのはなかなか現実的ではありません。
「手が動かせる人員を送れば、このフローを実現できますか?」「今使っている指標のうち、重要な指標を三つに絞れませんか?」「三つの指標を達成できたら次は六つに増やしてみましょう」というように、理想に近づくプロセスにおいてスモールサクセスを重ねていくイメージです。
「今あるデータで実現できないか?」と問うことも多々あります。システムの活用を推進する私の立場上、どうしてもシステムありきの手段を考えてしまうのですが、今あるリソースを使って施策を実現できるに越したことはありません。「この要件だけ諦めれば、今あるデータで実現できるよね」「これで成功したら、諦めた要件を復活させるためにこのツール入れよう」という建設的な議論ができます。
活動成果の言語化が将来的にリターンを生む
──橋本さんが率いるアクセス解析チームのような存在が不在の組織において、マーケティングリーダーは必要なデータの見極めやデータマネジメントをどのように行えば良いのでしょうか。
繰り返しになりますが、やはりスモールステップを刻むことでしょうか。前職でDX組織の立ち上げを経験した際、いきなり大きな絵を描いて一直線に向かおうとすると、どこかでひずみが生じると学びました。小さな成功体験から始めて、雪だるま式に大きなプロジェクトを進めるアプローチが有効だと考えています。
加えて振り返りの項目を作り込み、活動成果を定期的にまとめること。うまくいったことだけでなく、うまくいかなかったことも言語化して共有すると、同じ悩みを抱える仲間が少しずつ増えて来るはずです。施策を実行して目に見える成果が得られなくても、粘り強く言語化を続けていれば、いつかその投資に見合ったリターンが得られると思います。
──最後に、橋本さんの展望をお話しください。
これからもエンドユーザーやクライアントに対して提供可能な価値を意識しながら、手段にとらわれないデータ活用を追求していきたいです。最近はAIを活用した先進的な取り組みにトライする流れがいくつかの事業領域で起こっています。ポジティブな流れだと感じる反面、活用ルールの整備や顧客データの取り扱い方など、企業として果たすべき責任もないがしろにできません。我々のチームにはデータアーキテクチャの設計に関するナレッジが蓄積されていますから、他部門を巻き込むハブになりながら、新しいチャレンジを形にしていきたいです。