※本記事は、2024年1月刊行の『MarkeZine』(雑誌)97号に掲載したものです
【特集】2024年の消費者インサイト
─ 電通消費者研究プロジェクトDDDより 「2024年の欲望トレンド」を発表(本記事)
─ カード決済データから読み解く若年社会人のリアルな消費動向
─ 共働きファミリーの消費活動は、時短のその先へ チームで動く新しい家族のかたちとは?
─ シニア層の消費行動から見えた5つのトレンド
─ ピンチをチャンスに 消齢化社会でインサイトをどう掴む?
欲望の体系化を試みる「DENTSU DESIRE DESIGN」とは
株式会社電通 第4マーケティング局
未来シナリオコンサルティング部
プロデューサー/プランナー 千葉貴志(ちば・たかし)氏
2008年電通入社。営業、デジタル、テレビ、電通総研などの部署を歴任し、現在はDENTSU DESIRE DESIGNの一員として欲望を基点とした消費動向やトレンド研究に従事。また、未来の企業価値を創発する未来予測支援ラボ/未来事業創研にも所属。アイスホッケーが好き。
株式会社電通 第2マーケティング局
マーケティングコンサルティング1部
プランニング・ディレクター 佐藤尚史(さとう・ひさし)氏
古今東西の人文知を武器に企業と社会をつなげるマーケティング戦略の立案とアイデア開発を行う。サービス設計からワークショップ企画、イベント実施まで行う究極のプランニング雑用。個人的パーパスは「人を知ると社会がよくなる」。ポッドキャスト「ニンゲン広告社」主宰。たまにシナリオライター。
──はじめに電通の消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN(以下、DDD)」について教えてください。
千葉:DDDは世の中の消費全体の流れを調査研究する、電通の組織横断型プロジェクトです。どんな時代にも人の心の中にあるものとして「欲望(Desire)」に着目し、定量・定性調査をもとにこれらを理論的かつ体系的に捉えるチャレンジをしています。
特徴は「欲望」と「ニーズ」を区別していることです。データマーケティングの進化が著しい昨今、ニーズやリアクションなど消費者の行動は大方数字で見えるようになっています。これ自体はよいことなのですが、数値化されたニーズばかりを追いかけるあまり、「なぜそのようなニーズが生まれているのか」という手前の部分を捉えられていない状況に課題感を持っていました。データマーケティングが主流になっているからこそ、ニーズのさらに奥に潜む、消費行動の源泉となる心理的ドライバー=欲望を探り、ここを軸にマーケティングを考えていくことが今後さらに大切になってくるだろうと考え、研究にあたっています。
──DDDはどのような方法で「欲望」を定量的に捉えているのでしょうか?
千葉:DDDでは、消費者行動モデルとして「欲望(Desire)行動モデル」を提唱しています(図表1)。
これは、生理的欲求/安全欲求など人間が本能的に持っている「根源的な欲求」と、世の中の移り変わりによって変化してゆく人々の「価値観」が掛け合わされて「(今の時代の)欲望」が生まれてくるという考えのもと構成されたモデルです。欲望を定量化するDDDの試みもこのメカニズムをベースに行われており、簡略的に説明すると、根源的欲求と価値観の両方を定量調査・分析することで欲望を捉えるアプローチをとっています。
たとえば、我々の研究成果の1つとして、2022年に発表した「11の欲望」があります(図表2)。
これは定期的に実施している『心が動く消費調査』の結果を分析し、現代の消費者がみな持っている欲望を集約したものです。強弱はあれど、誰もがこの11個の欲望を心の中に持っていると考えており、不変的とまでは言えませんが、今後も長期にわたって使える欲望体系だと自負しています。
今日ご紹介する「2024年の欲望トレンド」は、11の欲望が消費者の中にあるとした上で、直近の世の中の文脈を「欲望」の観点から読み解いたものです。