新たな飲用シーンの創出を目指す、ウィルキンソンの戦略
MarkeZine編集部(以下、MZ):本記事ではウィルキンソンのブランディングキャンペーンについて詳しくうかがっていきたいと思います。まずウィルキンソンとはどのようなブランドなのかをお話しいただけますでしょうか?
小諸:ウィルキンソンは、1904年に販売を開始した純国産の炭酸水です。来日していた英国人ジョン・クリフォード・ウィルキンソンが狩猟中に、兵庫県宝塚にて炭酸鉱泉を発見したのが始まりとされています。
ブランドのスピリットとして大切にしているのは「挑戦」です。お酒の割り材としてだけではなく、炭酸水そのものを直接飲む文化を創り上げようと、2010年にペットボトルの「ウィルキンソン タンサン」のテスト販売を開始しました。サイダーなどが並ぶ炭酸コーナーではなく、ミネラルウォーターのコーナーに陳列することで健康的なイメージを与えたほか、水に「刺激」というプラスの価値がある見せ方にし、炭酸水の直接飲用という新しいスタイルを日本中に広めていきました。
MZ:炭酸水市場の成長推移は非常に高く、飲料業界でも注目の市場となっています。ウィルキンソンでは近年、どのようなマーケティング戦略を行われていますか?
小諸:我々は「2030年までにあらゆる世代および場面で、当たり前のように炭酸水を飲む文化を定着させる」という目標を持っています。これまでウィルキンソンは「刺激、強め。」という物質的な価値を磨いてきましたが、近年は同様の方向性で訴求をする他社ブランドが増えてきました。結果、刺激が強いという価値が画一化され、差別化が難しい状況になってきています。
そのような中、ウィルキンソンだからこそ提供できる価値を磨いていこうと、大きく2つの施策に力を入れています。まずは「スタイリッシュで、持っているとかっこいい」など情緒的な価値を高めていくこと。テレビCMでは赤と黒、音楽はレニー・クラヴィッツの楽曲を一貫して使い続けることで、ウィルキンソンというブランドのイメージを作り上げてきました。
もう1つ注力しているのは飲用シーンを広げることです。具体的には「健康」、食事とともに炭酸水を楽しむ「With Food(ウィズフード)」、そしてお酒の代わりに飲む「Sober Curious(ソバーキュリアス)」を象徴的なシーンとして提案しています。