マーケティングの世界に起こり得る10の事象を特定
──今日は夜分遅く(英国時間で22時)の取材に対応いただきありがとうございます。
お話しできることを大変うれしく思っています。過去に2回ほど日本を訪れたことがあり、東京が大好きです。新幹線にも乗って移動しましたが、大変すばらしい乗り心地でした。
──まずはDanさんの自己紹介をお願いできますか?
dentsuで働き始めて20年余りが経ちました。会社でいくつかの役割や仕事を経て、現在はメディアの将来に関するレポートを作成しています。新しいテクノロジーにも非常に興味があります。たとえば人工知能と、これが世界や私たちの業界にもたらす違いについてです。
──アナリストのような立場ということでしょうか。
はい、ある意味では。しかし、私が行っているのは市場調査ではありません。世界を観察し、起こっている様々な出来事のパターンを特定し、そのパターンから未来を想像するような取り組みです。
──dentsuが発表した「2024メディアトレンド調査 ~The Pace of Progress(進歩のスピード)~」がどのようなものなのかを読者に前提として共有したく、調査の概要や実施の背景、目的を教えてください。
私たちは2010年から同様のレポートを作成してきました。このレポートが有益であると自負しています。毎年将来を見据えることにより「同僚やクライアントに何が起こりそうか」「それらの変化にどう備えることができるのか」をアドバイスできるからです。
私たちの同僚、特にストラテジストは、日頃から何が正しいかを見極め、クライアントからの質問に耳を傾け、さらにはテクノロジーを理解しようと努めています。「今の技術で何ができるのか?」「昨年は不可能だったことが、来年には可能になるかもしれない」などの疑問や期待を抱えているのです。私たちがレポートを通じて、メディアとマーケティングの世界で起こりそうなことやテーマを特定すれば、彼らは数年後に向けて準備を整えることができます。
──具体的にどのようなプロセスで調査を行っているのでしょうか。
主に資料の読み込みと会話によって、様々なストーリー間のパターンとつながりを発見し、それが将来にもたらす意味を考察しています。
──調査の結果、メディア業界における10の重要な変化の要因が明らかになったそうですね。一つずつ説明いただけますか?
このレポートでは大きく三つのテーマを設定しており、それらのテーマに紐づいたトレンドを合計10個紹介しています。第一のテーマは「生成AI技術が主役に」です。
トレンド①生成検索(ジェネレーティブサーチ)の台頭
生成AIの台頭によって、検索エンジンが変化しつつあります。「Bing」「Google」「バイドゥ」などの大手検索プラットフォームでは、仕組みが再設計されているのです。このことが世界をどのように変えるのか、そして広告主はこの事態をどのように理解し、準備する必要があるのか。トレンド①はそのヒントを示しています。
トレンド②クリエイティビティの再構築
生成AIは人々の創作方法を変えています。私たちが身を置く広告業界では、明らかに多くのコンテンツが生成AIによって制作されており、この傾向は確実に進むでしょう。トレンド②では「テクノロジーが具体的にどう機能するのか」「広告やブログなどの作成にどう活用できるのか」を説明しています。