コミュニケーションを軸に提携
――今回はMIXI(以下、ミクシィ)とハブが提携してからの具体的な取り組みや、異業種間でのシナジーを生むヒントをうかがえればと思います。まずは両社から見た提携の意味や背景をうかがえますか?
奥山:当社は経営の多角化と発展を目的に2018年頃から投資活動を強化しています。いわゆるキャピタルゲインを狙ったものではなく、ともに事業を作っていくことが目的です。
ハブさんに関しては、友達や同僚が集まってコミュニケーションをする場として長く注目をしていました。当社はスポーツの領域にも注力をしています。プロスポーツチームの経営や、公営競技の領域といった様々な事業を展開する中で、リアルなコミュニケーションの場とスポーツの相性は非常に良いと思ったのです。
土屋:ハブは1980年の創業から英国パブの事業だけに絞り、あえて多角化せずにニッチなマーケットを極める戦略を持っています。おかげさまでコロナ禍まで業績不振を理由としては1店舗も退店せず、着実に成長を積み上げてきました。
しかし、単一事業だったがゆえにコロナの影響が直撃しました。やっと営業が再開できても酒類の販売禁止や時短営業などの制限があり、一部退店も余儀なくされました。そんなタイミングの2020年冬にミクシィさんから業務提携のお話をいただきました。
正直に言うと、当初はミクシィさんと当社では親和性がないと思っていました。ハブはリアルコミユニケーションの場作りにこだわってきましたが、ミクシィはインターネットのコミュニケーションを中心に事業を展開していました。相反するのではないかと懸念しました。
しかし、ミクシィさんのことを学んでいくうちに、奥山さんが言うようにコミュニケーションという軸をしっかり持っているという共通点が見えました。また、オンラインとオフラインをつなげたいという考えに可能性を感じ、両社での取り組みを模索することにしました。
店舗から一旦離れ、ミクシィ×ハブの可能性を探った
――業務提携が決まってから、両社のコミュニケーションや組織体はどのように変化されましたか?
土屋:まずはお互いにしっかりコミュニケーションを取るために、ミクシィさんのご担当者様に週2で当社の本社へお越しいただき、ディスカッションを行いました。また、提携開始のタイミングで当社の組織も大きく変化しました。
それまでは営業本部と管理本部の2本部体制でしたが、アライアンス事業本部を新設。営業本部長だった私は提携に特化するミッションを与えられ、アライアンス事業本部長へと異動しました。事業提携部というミクシィさんとのやり取りに特化したチームを作り、週2回ほどミクシィさんのオフィスに出社し、事業部の方と直接ディスカッションさせていただきました。
ですから当時は、週5日勤務するうちの週4回はミクシィさんとコミュニケーションを取っている状態でした。トップからも、ミクシィさんにいる2日間はミクシィ社員としてハブを使って何ができるかを考えるように言われていました。
店舗の営業を見ながらアライアンスを考えると、どうしてもバランスを取ってしまいます。営業のことは一旦置いておき、提携で何ができるか?を集中的に考える。ある意味で覚悟を決めて何かを生み出そうという体制になった点が、スタートとして非常に良かったと思っています。
2種類のコラボを開始
――ここから、具体的な取り組みについてうかがえればと思います。一般ユーザーの感覚としては、ハブさんはこの数年でコラボが増えた印象があります。
土屋:そうですね。大きく2種類のコラボに取り組んでいます。1つはミクシィさんのスポーツ事業とのコラボレーションです。たとえばサッカーのFC東京や、バスケの千葉ジェッツ、競輪や競馬との取り組みがあります。
我々もコロナ前からスポーツに関しては取り組みがあったので、どちらかと言うと既存価値をさらに強めるためにミクシィさんにお力添えをいただいています。
もう1つがIPとのコラボです。こちらはミクシィさんと業務提携するまでは一切やってこなかったジャンルです。「早い時間に、女性のお客様にもっと気軽に来ていただくためにどうするか」を考えていた際に、奥山さんからプロメア※とのコラボをご提案いただいたのがきっかけです。
※プロメア:アニメーションスタジオ「TRIGGER」とミクシィが初めて共同製作したオリジナル劇場アニメーション作品。キャストに松山ケンイチ氏、早乙女太一氏、制作には監督・今石洋之氏、脚本・中島かずき氏などを起用し、2019年5月に全国公開。2021年11月には観客動員数100万人を突破。