データ収集促進の鍵は「価値の交換」
トレンド⑥アイデンティティへの再注目
昨今、プラットフォームがユーザーにアイデンティティの提供をますます強く求めています。たとえばNetflixでは、ユーザーが自身のパスワードを他者に共有することを禁止しました。一部の国ではMetaやXが認証バッジを有償で提供しています。サードパーティークッキーが消滅しつつある中、広告のターゲティングのためにもこの動きは不可欠です。
トレンド⑦より多くの広告とより多くのリターン
このトレンドは非常にシンプルです。プラットフォームが以前よりも多くの広告を表示しています。たとえばMetaの場合、1年前と比べて広告の表示回数が20~30%増加しているそうです。コネクテッドテレビなどの新興媒体も台頭し、広告全体のボリュームが増えている一方、このことはキャンペーンの乱立やユーザーの注意を引くための競争が激化していることを意味します。
以上が第二のテーマとそれに付随する四つのトレンドです。大規模なプラットフォームが変化・進化する中、広告主はそれらといかに付き合っていくか検討するべきです。広告の注目度を測定することもここに含まれます。
──データの保護と活用については、日本でも多くのマーケターが向き合っています。英国企業ではどのように対応が進められていますか?
新商品のリリースや既存商品のアップデートに関する情報提供など、顧客とつながり続けるための取り組みは英国企業でも広く行われています。データの保護と活用において鍵を握るのは、バリューエクスチェンジ(価値の交換)だと思います。メルマガの購読やアプリのプッシュ通知をオンにする理由を企業が提供するべきなのです。メリットを約束すれば、人々はブランドにメールアドレスを教えますし、あなたのブランドを信頼する可能性は高まります。
続いて第三のテーマを紹介します。第三のテーマは「インテグリティ・エコノミクスがブランドにとって不可欠に」です。現在の経済状況において私たち全員が成長を目指すにあたり「多様性」「ブランドセーフティ」「持続可能性」などに目を向けることは依然として非常に重要です。
トレンド⑧成長への新たな局面へ
世界は人種や人々の生き方などの観点において、より多様な場所となりつつあります。 人が自分自身をどのように表現するか。これは、メディア関連のデータに表れます。Apple、YouTube、Spotifyなどのプラットフォームを通じて音楽が選択できるようになり、母国語で音楽を聴く人が増えています。
このことがマーケターに与える意味は何でしょうか。全員に同じメッセージを送れば良いということではなく、それぞれの人に合った自然で親和性の強いオーセンティックな広告を展開していく必要があると考えています。そういう意味で生成AIはマーケターの役に立つかもしれません。簡単に数多くのバージョンのクリエイティブを制作できるからです。
トレンド⑨より安全に、より良く、より速く、より強く
トレンド⑨はブランドセーフティに関するものです。正しい環境において自社の広告が正しく表示されるようにしなければなりません。生成AIの出現によってそれらしい広告クリエイティブを簡単に制作できる今だからこそ、ブランドセーフティへの取り組みはより一層重要であると言えます。自社で生成AIを使って制作したクリエイティブについても注意が必要です。