多様性への理解が成長の必要条件
トレンド⑩注目度を高め、排出量を削減
最後のトレンドはサステナビリティに関するものです。極めて重要なトピックですね。2023 年は観測史上最も暑い年でした。異常気象がますます増える中、企業は脱炭素と地球温暖化に対する自社の貢献をより一層意識する必要があります。
広告主はこの問題にどう対応すれば良いのでしょうか。ヒントは広告のアテンションにあります。サプライチェーンのアドテクを最適化すれば、無駄を排した効率的な広告配信が実現できるはずです。同時に広告主やエージェンシーは、CO2の排出量を押さえつつ、より効果的なキャンペーンが展開できるようになります。広告配信の最適化や効率化の取り組みが、脱炭素化につながるというわけです。
以上が第三のテーマとそれに付随する三つのトレンドです。どの企業もできるだけ早い成長を遂げようと尽力していますが、多様性への理解が成長の必要条件であることを覚えておきましょう。なぜなら自社の商品を誰もが利用できるようにすることは、商品のユーザーを増やすことにつながるためです。
──日本企業のマーケターは、これら10のトレンドをどのように参照・活用すれば良いのでしょうか?
今ご紹介した10のトレンドは、グローバルに当てはまる共通した傾向であると私たちは考えています。レポートの作成時、私たちは世界中の同僚と「このトピックに意味を感じるか」「このトレンドはあなたの国の市場で共感を呼ぶか」といった観点でディスカッションを重ねました。
私がいる英国と日本では、メディアの状況が大きく異なりますよね。LINEのようなコミュニケーションプラットフォームは欧米で使われていませんし、逆のケースもあります。しかし、10のトレンドの多くはグローバルなメディアやテクノロジーを対象に含んでいるため、日本の市場にも当てはまるはずです。
英国では広告支出の約70%をデジタル広告が占めています。日本の広告支出におけるデジタル広告費は約50%です。私は日本のメディア事情の専門家ではありませんが、世界的な傾向として、より多くの予算がデジタルチャネルに移行しつつあります。2030年に向けてデジタルメディア企業の重要性はますます高まっていくでしょう。特に第二のテーマとして掲げた「収益化に向けた競争の激化」は、2~3年のうちに日本でも見られると思います。
──今後もこのメディアトレンド調査を継続的に実施していく予定ですか?
はい、続ける予定です。私たちの同僚やクライアントから非常に人気があり、有用性も感じてくれているためです。この調査は私たちがエージェンシーとして見据えた将来を人々に示すツールと言えます。私たちには未来をより良くナビゲートするためのアイデアを持っていますから、調査を通じてそのアイデアを発信していきます。
──今回の調査結果を踏まえ、dentsuグループとしてチャレンジしたいことをお聞かせください。
dentsuとして私たちが計画していることをお話しします。現時点ではAIに関して非常に多くの取り組みを進めているところです。Amazon、Google、Microsoftを含む多くのパートナーと協力しながら、生成AIを活用したテクノロジーや手法の開発に取り組んでいます。サードパーティークッキーに頼らない広告配信においてターゲットを適切に設定できるよう、広告IDなどにも重点を置く考えです。私がこれまで話してきたすべてのトレンドに対応するテクノロジーとソリューションを活用しながら、クライアントの支援に引き続き尽力します。