20年以上前から取り組んできたダイレクトマーケティング
磯山:サントリーグループで健康食品や美容商品の分野を担うサントリーウエルネスさんですが、グループの中でも特にお客様とのコミュニケーションにこだわっているイメージがあります。
藤澤:サントリーウエルネスはお客様と直接つながるダイレクトマーケティングモデルを採用しているのが特徴で、20年以上前から取り組んでいます。
磯山:そんなに前からですか。ダイレクトマーケティングに取り組むことになったのにはどういう背景があったのですか?
藤澤:我々は単に“健康”である状態を提供したいのではなく、「ウエルネス」という社名にもある通り、お客様の“心も体も健やかで美しく最も輝いた状態”の実現を目指しています。そのためには、お客様一人ひとりに向き合い、最適な提案をし続けることが重要だと考え、ダイレクトマーケティングに取り組み始めました。
磯山:今でこそD2Cモデルが広く普及しましたが、お客様一人ひとりに「ウエルネス」を提供するためにいち早くダイレクトマーケティングに取り組まれてきたんですね。
「個客原理主義」に基づき、1,400人と直接対話
磯山:ダイレクトマーケティングの取り組みとして、具体的にどのような施策を行っているのでしょうか。
藤澤:当社は「『個』客原理主義」を掲げ、一人ひとりのお客様にとって本当によいものをお届けすることを大切にしています。たとえば、2020年から「オンライン家庭訪問調査」を実施していて、当社の全社員がお客様の健康状態や日々の生活、現在抱えている不安などをヒアリングさせていただいています。
これまでに約1,400人のお客様に日々の生活や課題などを直接お聞きし、当社のお客様の多くを占めるシニアのお客様の個客理解を進めています。
磯山:「顧客から話を聞け」というのは、D2Cを運営する皆さんが口を揃えて言いますよね。直接聞いてみてわかることは多いですか。
藤澤:累計2,800時間以上、お客様と向き合って見えてきたのは、人は年齢を重ねるとともに多様性が広がるということです。マーケティングの文脈では「シニア層」と一括りにされがちですが、身体の状態も抱える課題もそれぞれ違います。
さらに、「アクティブに生きたい」「まだまだ現役だ」と考える前向きな方が非常に多くいらっしゃることもわかりました。
磯山:そうした調査結果を受けて、お客様とのコミュニケーションで気をつけているポイントはありますか?
藤澤:健康食品の広告というと「膝が痛いからグルコサミン」や「血液がドロドロだからDHA」など、負の解消を訴求するものになってしまいがちです。そうしたアプローチは継続しつつも、多様性のあるシニアのお客様に訴求していくために、前向きな気持ちや付加価値を訴えることも意識しています。
たとえば、「グルコサミン」は当社以外にも扱っているブランドが複数あり、すでに「グルコサミン=シニア向けの成分」という認識が浸透しているのが現状です。しかし、我々は「グルコサミン=アクティブな生活を実現するためのブランド」という認識に変えようと取り組んでいます。アクティブな生活のために早めに膝のメンテナンスをしませんか、と従来とは異なるコミュニケーションを行っているんです。
磯山:多様性のある、楽しくわくわくした生活を送りませんか、この商品で実現できますよ、という導き方にしていきたいという話ですね。
藤澤:そうですね。社名にもある「ウエルネス」は「ヘルス(健康)」の先にあるものです。身体の不調を健康な状態にする「ヘルスケア」の先、心も身体も健やかで輝いた状態であり続けていただくための商品ですので、広告活動もそこに整合させていこうとしています。