広告/マーケティングにおける7つの転換点
久しぶりに、MarkeZineにて連載の筆を執ります。翔泳社から2023年に刊行した『2030年の広告ビジネス デジタル化の次に来るビジネスモデルの大転換』では、ビジネス環境を変えてしまう様々な事象を取り上げて、変革を求められるビジネスモデルについて、私の思うところを書きました。
本書の第四章では「マーケティングはどう変わるか?」について書きましたが、書き足りないことが数多くありました。本書では伝えきれなかった内容を、この連載を通して、伝えていきたいと思います。
本連載の構成
第一回:ファネル構造モデルの破綻
第二回:カスタマージャーニーモデルの破綻
第三回:USP思考の限界
第四回:フリークエンシー理論の破綻
第五回:ID取得型マーケティングの限界
第六回:従来型広告枠の効果減衰
第七回:AIクリエイティブによる積み上げ型プロセスの破綻
第一回は、ファネル構造モデルに関して、言及していきます。
ファネル構造モデルの破綻、その3つの要因
ファネル(漏斗)に見立てて、認知から購買アクションまでを辿る「ファネル構造モデル」。読者の皆さんもよくご存じだと思いますが、ファネル構造モデルはAIDMA理論と輻輳(ふくそう)しています。特に、認知から購買までの段階においてこぼれていく(脱落していく)人がいると想定しているのが特徴です。
そもそもAIDMAは1920年代にサミュエル・ローランド・ホールが広告の実務書に書いた消費者の心理プロセスですから、基本的には広告をたくさん打たせるためのものです。そこをベースに作られたファネル構造モデルは、「ファネルの一番上(Awareness)をもっと増やす必要がある」という、広告会社が広告主を説得するような口上になっていました。
さて、「ファネル構造モデルは破綻している」というのが、今回のテーマですが、その要因は主に3つあります。元々このモデルで説明できるのは一部で、すべてではないということと、SNS時代になってこのモデルはさらに説明できなくなったという背景があります。
- ファネルから脱落した人が買わないわけではない
- ミドルファネルには様々な消費者心理があって単純に説明できない
- SNSでのシェアから認知した場合にも様々なパターンがあって表現できない