ファネル構造モデルは一部のパターンにすぎない
まず、一つ目の要因「ファネルから脱落した人が買わないわけではない」についてです。
もちろんカテゴリーにもよりますが、事前にその商品を認知していなかったとしても、店頭で買い物かごに入れて購入に至るのは珍しい行動ではありません。同様に関心まで持っていなかったり、比較検討などしなくても購買したりすることは多々あります。むしろファネルの上から下へ、順当にファネルを進んで降りて来る人(パターン)のほうが少ないのでは、と感じます。
つまり一部のパターンしか説明していないのです。ですからブランド側のマーケターは自分の扱うブランドのカテゴリー、価格帯、購買影響要因などによって、複数ある購買ルートを購買から逆算して想定する必要があります。一般論で説明しようとしてはいけません。単純化は危険です。
ミドルファネルにからむ様々な消費者心理
そして二つ目の要因「ミドルファネルには様々な消費者心理があって単純に説明できない」についてです。前述したように、様々な購買ルートがあるのですが、必ずしもそういうルート(順列)を辿らないといけないわけではありません。
消費者の頭の中で「ビンゴ!」となり、購入意思を決定するボタンが押されるために、必要なパーセプションの順番を意識することは、あまり意味がないと筆者は考えています。購買に至るルート(順列)は組み合わせであり、パーセプションが揃うことが大事なのです。そしてこの組み合わせのパターンがターゲットによって何種類かあるのです。
さて、本来の説明に戻ります。まずは、各ブランドが固有のミドルファネルを設定することが重要です。ファネルで考えるかどうかは別にして、ミドルファネルにいる状態とは何でしょうか。
まず重要なのは「レリバンシー」です。つまり「このブランドは自分と関係があるかもしれない」と意識することです。この状態をどうやってつくるかが、マーケターの役目です。ここにはブランドごとに消費者心理を研究し、どういうパーセプションをもってもらえるようにするのか、試行錯誤して組み立てることが必要です。
認知はテレビCMで醸成できるかもしれませんが、レリバンシーはどうやってつくればいいのでしょうか。自然に自分と関係があるブランドと思ってもらえる、つまり認知させればそのうちの何割かは必ずレリバンシーをもってもらえると期待していませんか? それは、大昔にテレビCMが絶大な力をもった時代に引きずられた勘違いです。
ミドルファネルをないがしろにしていると、購入意思が顕在化した人の検索行動には対応するものの、マスメディア認知と購買の間が希薄でつながりがありません。またSNS時代のマーケティング思考(SNSからの共感認知は、従来のマスメディア認知とは「認知の質」が違うことなど)を駆使する必要がありますが、全くそれができていない状況です。
