テレビCMとネット動画のインプレッション数を比較
ところで、テレビCMのインプレッションとデジタル動画CMのインプレッション数を年代別にしたグラフを見てみましょう。まずは、2018年の関東地区の4週間の数字です。10代、20代ではデジタル動画CMがテレビCMに迫りつつあります。一方、30代以降はまだテレビが圧倒しています。

そして、2023年の関東地区の4週間の数字を見てみましょう。10代、20代では、デジタル動画CMがテレビCMを凌駕しています。

テレビCM消費の急激な高齢化
これらのグラフから、テレビCMにおけるドラスティックな事実が見えます。2018年における60代以上のテレビCMの消費インプレッション数は全体の43.6%ですが、2023年のそれはなんと58.3%です。テレビCM消費の急激な高齢化が起きています。つまり、テレビCMをいくらたくさん打っても、ほとんどが高齢層に当たり、しかもなかなか認知されないという状況にあります。
逆に見ると、2018年の50代までのCM消費インプレッション数は、684.7億impですが、2023年では480.7億impです。私の仮説では、一定のフリークエンシーに接触すれば認知獲得を期待できる層のインプレッション数の激減しており、これは由々しき事態なのです。
そして著者が一番懸念していることは、テレビから離脱したCMインプレッションの質、すなわち「CMの受容性」です。
2018年と2023年のテレビ+デジタルの総インプレッション数はほぼ変わりませんので、テレビから移行したインプレッションはほぼデジタルが吸収しているようです。問題は、パッシブな視聴環境のテレビCMの受容性が、デジタル側に存在しているかということです。
この問題については、別の機会にじっくり論じたいと思います。
いずれにしても、フリークエンシー理論はおしなべてCM接触者全体では論じることはできません。そういう意味で破綻していると指摘しているのです。テレビにおけるターゲットインプレッションと、ターゲットごとにフリークエンシー分布をデータ化して、期待できる効果を論じるべきです。次回は、「ID取得型マーケティングの限界」について、言及してきます。