ユニバーサルデザインとは、その名の通り「すべての人のためのデザイン」を意味し、年齢や障害の有無などにかかわらず、最初からできるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインすることを指し、今後企業のWebマスターにとって無視できないキーワードである。
16時からのパネルディスカッションでは杉山知之氏 (デジタル・ハリウッド大学校長)、坂本貴史氏 (ネットイヤーグループ株式会社)、高橋宏祐氏 (富士通株式会社 コーポレートブランド室 担当部長、Webマスター)、濱川智氏 (株式会社カレン商品開発室長・『Web ビジネスのためのユニバーサルデザイン成功の法則65』著者)が登場。提案側、ユーザー側、それぞれの立場から、ユニバーサルデザインについて意見をかわした。
まず「『ユニバーサルデザイン』は『バリアフリー』というイメージと混同しているのが現状だ」と濱川氏。バリアフリーとは障害者や高齢者など特定の人に対する特別な対策、という意味合いが強く使用するのに抵抗がある人も考えられる。誰もが公平、平等に使えるものがユニバーサルデザインの定義のひとつであると語った。
ユニバーサルデザインを実現するにあたって重要な点は「自分のユーザーがどういう使い方をしているのかを理解すること」だという。同じく坂本氏も「ユーザビリティといった場合に何を指すのか。それをきちんと体験して伝えることが必要だ」と述べた。また、ユニバーサルデザインというキーワードが広まるにつれて、「自社のWebをユニバーサルデザインにしたい」という要望が増えているようだ。しかし「企業のブランドがあって、Webサイトのブランドがある」とし、コーポレートブランドからWebサイトへ落とし込むフローの必要性を語った。
一方ユーザー側からの視点から、ユニバーサルデザインを現場に定着させる手段として「欧米のように、制度をつくって組織を成熟させていくことが必要」と高橋氏は語る。ルールを作ってフロー化し、現場の意識を高める必要性を述べた。
これからWebサイトを活用するうえで、企業は何を意識していけばいいのか? という杉山氏の問いに対し「Webサイトが企業を超えることはない。まずは自社ブランドについて理解することが必要」と坂本氏。濱川氏は「Webサイトは『顧客接点の場』という意識を強く持って『コミュニケーション』と『デザイン』について考えること」と語った。また、高橋氏は「Webはデザイン、つまり『主観的』な部分があるが、もっと客観的になっていくのでは」と述べた。
企業のWebサイト活用が叫ばれるなか、日々単純にコンテンツを増やすだけではユーザーは訪れてくれない。今後、ユニバーサルデザインが企業のWebコミュニケーションを改善する手法として広まっていくのか? これからも注目していきたい。
詳細:「ユニバーサルデザインによる新しいWebコミュニケーション」
関連情報:『Web ビジネスのためのユニバーサルデザイン成功の法則65』 濱川智 翔泳社 2006年12月