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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine Day 2024 Spring(AD)

顧客理解は、マクロとミクロの視点からーー化粧品ブランド「イプサ」が行う、ブランド成長のための顧客分析

 マーケティング活動の成功のためには、顧客理解が重要だ。顧客情報が不足している場合、効果的なマーケティング戦略の策定が難しく、施策の成果も期待できない。一方で、顧客理解の方法に悩んだり、効果が見られず施策に迷ったりする企業も少なくない。MarkeZine Day 2024 Springでは、ノウンズ株式会社の田中啓志朗氏と株式会社イプサの倉本直志氏が、売上へ直結するための正確な顧客理解の方法について解説した。

顧客理解は、マクロとミクロの両視点から

 マーケティング活動にあたり、顧客の理解を深めることが重要だが、具体的な手だてや手ごたえに迷う企業も少なくない。その原因には「間違った顧客理解が多くある」と話したのはノウンズ代表の田中氏だ。

ノウンズ株式会社 代表取締役 田中 啓志朗氏
ノウンズ株式会社
代表取締役 田中 啓志朗氏

 今回は、化粧品ブランド「イプサ」の倉本氏とともに、同社の事例から顧客理解とデータの読み解き方について解説した。

 顧客理解と分析に重要な点として、倉本氏は「マクロとミクロの両視点からの分析が極めて重要」だとを強調。マーケターやブランド担当者は日々新たな課題に直面しているが、その中で効果的な施策を効率的に展開すること求められる。その過程で、「大事な視点が見落とされがちだ」と話した。

 また同じデータでも、視点を変えると次のアクションが変わる。たとえば直近半年のリピート率が30%前後で推移しているため、その期間で見ると、30%を維持するか超えていきたいとなる。しかし、1年前までさかのぼると40%で推移していた場合、リピート率が大きく下落した要因を探る必要がある。このように同じデータでも、分析のタイミングや視点によって得られる洞察は大きく異なる。だからこそ顧客理解と分析ではマクロとミクロの両方の視点から物事を考えることが重要なのだ。

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 倉本氏は「マクロな視点での分析は非常に難しい」と語る。データは主に売上に関する考察に集中しがちで、日々の課題への対応に追われ、長期的な視野での分析が疎かになりがちだ。しかもマクロ視点での網羅的な分析には時間と費用がかかる。

 イプサでも売上、顧客イメージ調査、パネルなど様々なデータ分析を行ったうえで、ノウンズのような外部データも積極的に取り入れている。外部データを利用することの意義として、倉本氏は「購入前の顧客の思考や考えを理解できること」だと述べた。

株式会社イプサ ブランドディベロップメント部 ストラテジー&コミュニケーションG グループマネージャー 倉本 直志氏
株式会社イプサ
ブランドディベロップメント部 ストラテジー&コミュニケーションG グループマネージャー 倉本 直志氏

自社と外部のデータを組み合わせ、顧客の状態を知る

 世代別の価値観や競合情報など、幅広いデータを見られるのも外部データの大きな利点だ。競合分析やトレンドワードの設定などを行う際にも、過去の蓄積データがないと困難を極めるが、ノウンズのデータサービスを活用することで、時間と費用を節約しながら、迅速な意思決定に役立てられる。

 イプサでは、顧客構造のヘルシーチェックを定期的に行い、大きな変化や継続的な傾向を分析している。ノウンズのデータを利用して、購入意向から実際の購入への転換率における問題点を俯瞰し、自社の課題を把握している。たとえば、年代別の愛用者と購入率のデータを時系列で分析することで、特定の年代でマーケットの変化や競合の登場など外部環境の変動に対する洞察が得られる。

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 さらに倉本氏は、消費者データを分析するソリューション「Knowns Biz」の分析が社内で好評を得ている点について、視覚的に整理されているためマーケティングの初心者でも容易に理解できることが挙げられるとした。

「仮説を立てて検証し、PDCAサイクルを回していくプロセスが重要です。経験の浅い人もこのプロセスに参加しやすくすることができており、チームの中でも非常に好評です」(倉本氏)

狙うべき顧客層と価値を知る「7Journey分析」

 セッション中盤で田中氏は、イプサが顧客の購買行動を理解するために採用している「7Journey分析」について解説した。顧客がブランドを知っているか、過去に購入したことがあるか、最近購入したかなどの質問から、顧客の状態を明らかに。

 さらに、購入意向の有無も含めた7つのセグメントによって、自社商品のターゲットを包括的に分析。結果をもとに、売上最大化の考察を行えるのがメリットだ。

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 過去に購入したが現在は購入していない顧客や、ブランド名は知っているが購入したことがないというセグメントがボリュームゾーンとなる。このセグメントの顧客を、どのようにロイヤルカスタマーに変えていくかが企業にとっての課題である。顧客の特性を理解しその心を動かす戦略を考えることが、売上最大化につながるのだ。

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「企業の最終目的は売上最大化です。この右上のロイヤルの方が最大化すれば良いのですが、実際にそうはいきません。大体はこの手前の、離反予備軍や巻き戻しと言われる部分にボリュームゾーンが存在しています。この先、どうやって右上の方に回していくのかを考えていくのが重要になります」(田中氏)

顧客セグメントとペルソナをどのように捉え、戦略に落とし込むか

 続いて、顧客セグメントとペルソナについて解説。ターゲット・セグメントの絞り込みとその顧客の獲得方法について考える際、デモグラフィックデータなどを使用すると、ペルソナと近くなることが多い。

 しかし、ターゲット・セグメントとペルソナ像が乖離している場合、本来狙いたい層と異なるため、どのように扱えばいいのか議論が起こる。

 倉本氏は、ブランディングのために設定するペルソナと、マーケティングのために分析するセグメントが異なることを説明した。ブランディングのペルソナは、ブランドストーリーや世界観を体験するために設定される象徴的かつ仮説的な顧客像である。

 一方、マーケティングでの顧客像は、実際に商品を購入してもらうためのものだ。ペルソナは顧客像を擬人化し、人物像の設定と詳細をより具体化することで、顧客の考え方や価値観を深く理解するためのツールである。これに対し、ターゲット・セグメントは顧客の行動や状況を明らかにするためのもと言える。

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 ペルソナとターゲット・セグメントを比較すると、ペルソナの情報が詳細だ。ペルソナ設定は、サービスやブランド価値、世界観を構築する上で重要になってくる。顧客の価値観や心の内を理解し、潜在ニーズやインサイトを深く掘り下げることで、マーケターは顧客に対してより効果的なアプローチが可能だ。

ペルソナ設定、3つのメリット

 倉本氏は、ペルソナ設定の3つのメリットを説明した。1つ目は、顧客を理解できる点。特に自分自身がターゲットと異なる場合、ペルソナを設定することで、異なる背景や考え方を持つ顧客の視点を理解することが可能だ。

 2つ目は、プロジェクトメンバー間で顧客に関する共通認識を持つことができる点。これにより、施策や考え方に一貫性が生まれ、マーケティングチームの動きに一体感が増していく。

 3つ目は、業務の効率化が図れる点だ。ペルソナを通じて、自社の商品やサービスを利用する顧客がどのように判断するかを事前に検討することで、判断基準が明確になり、業務プロセスがスムーズになる。

 近年では顧客の価値観の多様化が顕在化しており、ペルソナとターゲット・セグメントの使い分けが重要になってきている。また、顧客自身も複数のアイデンティティを持っている点も見逃してはならない。

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ぺルソナをとらえるには、ミクロ視点の仮説検証が有効

 イプサは以前、詳細なペルソナを作成していたが、現在はグローバル市場での購入者の共通価値に基づいた簡略化したペルソナを設定し、それに加えて用途に応じたペルソナ設定を加えるように変化した。

「ブランド全体の共通の価値観を核とし、逆に尖った個別のサービスや商品を考えるときに、改めてそのペルソナ像を設定。明確にすることで、より施策を打ち出しやすくしています」(倉本氏)

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 これにはミクロな視点からの分析と顧客への直接聞き取りをする必要がある。ペルソナ作成後も、顧客理解は継続的なプロセスであるため、思考を停止せずに常に客観的な視点で顧客を理解し続けることが重要だ。

 「ブランディングにおいて、顧客理解は欠かせないものだと思います。売上を作る上でのマーケターとしても顧客理解を深めていくことが重要です。様々な施策を組み合わせて実施する際に、時には整合性が取れなくなることもあります。そのため、目の前の事象にとらわれず、長期的な視点からお客様を見ていくことが、重要だと考えています」(倉本氏)

 最後に田中氏は、ミクロな視点での仮説検証に役立つKnowns Bizの機能「カジュアルリサーチ」について説明した。これは、仮説に基づく質問を設計し、数百人規模の調査を短時間で実施できるものだ。調査結果は数時間後にはデータ化され、結果も自動でビジュアル化される。「1,000人規模の調査であっても数万円~と手軽でリーズナブルに行えます。みなさまの顧客理解や仮説検証にお役立ちできれば」と話し、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・翻訳ツールなど...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ノウンズ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/45412