四マス広告費も含め「いかにデジタルと連動させるか」に注力
──マスコミ四媒体の広告費における最近の傾向を教えてください。
北原:テレビメディア広告費は前年比96.3%と割り込む結果となりました。一方、若干ですがラジオと雑誌が前年比で増加しています。
ラジオは例年、前年比100%ちょっとで推移しています。今回は、外食など外への人流が戻ってきたことによるところが大きいです。ラジオですと広告告知よりも、キャンペーン連動型・イベント連動型のものが多い点もこうした結果につながっています。
雑誌の販売金額は減少しているのですが、出版社が強みとするコンテンツの力で広告費が増えてきています。またデジタル施策との連動に加え、出版コンテンツ由来の知的財産も多くあるため、今までとは異なる形で評価されているように思います。

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──マスコミ四媒体由来のデジタル広告費はいかがでしょうか。
森永:マスコミ四媒体は、デジタル施策と連動させて出稿する傾向がより強まっています。
特に雑誌やラジオは元々コミュニティ的な要素が非常に強く、デジタルとの親和性が高いことは以前から言われていました。ラジオデジタルですとradikoや放送局が運営するポッドキャストなどが伸びています。ながら聴取など気軽に接触が可能であることから、年代を問わず一定数の注目が集まっています。

メディアイノベーション研究部 主任研究員 森永陸一郎氏
クリエイティブ部門、コーポレート部門を経て2012年から現職。「日本の広告費」の詳細分析などを担当している。
──テレビメディアデジタルはどのように見ていらっしゃいますか。
森永:テレビメディアのサービスが充実してきたことから広告出稿が増えています。具体的にはドラマ以外の番組見逃し配信も増え、スポーツ中継・バラエティー・アニメ・情報番組など様々な番組コンテンツが配信されることで、ユーザーが右肩上がりに増加していることが要因です。
見逃せないコネクテッドTVの普及
──インターネット広告費では、ソーシャル広告も伸びてきているように感じますが、いかがでしょうか。
北原:ソーシャル広告は、前年比113.3%の9,735億円となり、インターネット広告媒体費に占める構成比の中でも徐々に高まってきています。種類別に分類するとSNS系が4,070億円、ユーザー投稿型の動画共有系が3,372億円となっています。

森永:スマホの普及により縦型動画は増えてきている一方で、視聴方法としてテレビがインターネットと接続されたコネクテッドTVが普及してきています。このため、大画面でデジタル動画広告に触れる機会も増えてきていますし、「ブランドプロモーションとしても、しっかり使いたい」という広告主の意図も相まって、依然として横型の比重も高い傾向にあります。
北原:とはいえ、縦型動画は若い人が中心に親しんでいるので、これからどのように活用が広がっていくのかは注目すべきポイントです。
──動画広告市場は大きく伸びているとのことですが、動画の制作費も伸びているのでしょうか。
森永:今回の調査で好調だった動画広告市場は、2024年も二桁成長となることが予測されていることからも動画広告の制作量は増えています。一方で、動画広告の種類によっては、制作コスト低減懸念もあります。最近では、生成AIなどを活用してタイプ別に量産することも容易ですし、安価にたくさん制作する動画広告と、しっかりと予算をかけて見ごたえのある動画広告を作っていくといった両側面で活発化しているように思います。