One-ID化を推進してもデータ活用が進まないジレンマ
デジタルマーケティングやカスタマーサポートなどを支援するトランスコスモス。「LINEヤフーPartner Program」において2024年度の「Technology Partner」のコミュニケーション部門「Premier」に認定され、数々のバッジを取得している。登壇した石田氏は2012年の入社以降、サイト立ち上げ、リニューアルPMを経て、デジタルマーケティング戦略プランナーとして従事。業界・メディアを問わず、デジタルメディア領域の戦略立案業務を推進している人物だ。
このトークセッションでLINEのデータ活用をテーマに選んだ背景として、石田氏はトランスコスモスが配信するメルマガ「trans+」の配信実績について話した。
「メルマガの反応率が最も良かったのは、LINEのデータ活用をテーマにしたものです。逆にいうと、『データ活用』の部分に、企業の皆様がまだまだ課題を持っているのではないかと感じました」(石田氏)
近年、多くの企業がOne-ID化を進め、CDPを導入し、社内部門を横断するデータ活用チームを作っているが、思うようにプロジェクトが進んでいないと石田氏は指摘する。
「ご担当者に話を伺っても、思うようにプロジェクトが進んでいないような印象を受け、『データ活用はOne-ID化をすれば進むものなのか?』という疑問が出てきました。一定の仕組み化はできているはずなのに、施策に落とし込んで実行するまでには至らない。そんなジレンマがあるのではないでしょうか」(石田氏)
その最大の原因は「エビデンスの圧倒的な不足」だと石田氏は主張する。
ハードルを乗り越えるための「エビデンス」が生まれる場
石田氏によれば、データ活用には四つのハードルがある。
1番目は「データ収集と管理の仕組み化」だ。One-ID化や推進チームの設立もここに含まれる。続いて2番目に「施策へのデータ活用企画」となるが、ここまでのハードルを越えるだけではデータ活用は進まない。3番目のハードルは「社内外の連携」だ。ツールだけでなく「人」を巻き込み、意見を一つにまとめなければならない。そして4番目には、それらの「実行コスト」が必要になる。
「実はこの3番目と4番目にある『人』『時間』『お金』の問題が、データ活用が進まない最大の理由です。これらのハードルを越えるために必要なのが、『よし、やろう!』と人を巻き込み、予算を捻出させうる『エビデンス』の創出です」(石田氏)
このエビデンスを創出するためのソリューションが「LINEを活用する」ことだと石田氏は指摘する。
その理由は二つある。まず、LINE公式アカウントでつながる「友だち」はLTVが高いユーザーであり、そのデータを資産として有効活用すれば、結果に反映されやすいこと。もう一つは、「実証実験」に最適な場所であることだ。LINEの広告配信やメッセージ配信などの機能を活用することで柔軟なテストが可能となる。
LINEの特長を十分に活かし、エビデンスを創り出すことで、社内外のメンバーに納得してもらい、巻き込むことができる。連携が取れればリソースの調達にもつながるというわけだ。
ここでLINEを軸としたデータ活用の成功例として石田氏が挙げたのが、食品の大手総合メーカー「カゴメ」の事例だ。