TikTokだからこそ、リーチできる層がいる
――まず、RENOSYのプロモーションにTikTok広告を活用した背景や課題について教えてください。
木村:TikTok広告活用の一番の背景となったのは「新しいお客様にリーチできる可能性を秘めているプラットフォームである」という想いでした。
木村:RENOSYでは、TikTok以外の検索プラットフォームやSNSをメインにデジタル広告を配信し、集客してきました。しかし、既存プラットフォームだけではCPAの高騰が避けられず、新たな配信先の開拓が急務でした。
RENOSYは不動産投資を提供するサービスであるため、年収500万円以上などの条件を満たす不動産投資用のローンが組める方がターゲットとなり、ターゲティングの難易度が高くなっています。しかし、TikTok導入検討時に「TikTokユーザーの年収が高い」というデータ(※1)を見せていただき、RENOSYでも活用できるのではと思い、TikTok広告の活用をスタートしました。
光安:また、GA technologiesではインハウスで広告の制作から配信を行っています。動画広告のクリエイティブ制作体制も整っていたので、TikTok広告にトライしやすい環境だったのも活用の背景にはあります。
高木:若年層向けのイメージが強いTikTokですが、ユーザーの平均年齢は上昇し多様化が進んでいます。また、木村さんにも紹介いただきましたが、他のプラットフォームと比較してユーザーの年収が高いというデータも得られています(※1)。そのため、RENOSYのようなネット不動産投資サービスなど高単価商材の訴求にも活用いただける環境になってきていると感じます。
※1 博報堂DYホールディングス、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズの共同研究プロジェクト コンテンツビジネスラボ「コンテンツファン消費行動調査」(2022)
ROAS最適化機能で利用につながるユーザーを見つけ出す
――続いて、TikTok広告をどのように活用していったか教えてください。
木村:最初に行ったのは、ターゲティング配信です。しかし、年齢層や年収など様々な条件を加味したターゲティングにした結果、配信ボリュームが減少し、パフォーマンスも厳しい状況が続きました。
この状況を改善するため、提案いただいたのがブロード配信とVBO(Value-Based Optimization:バリューベース最適化)の掛け合わせでした。
高木:VBOとは、課金費用がより高くなる可能性のある良質なユーザーを獲得する、ROAS最適化機能です。コンバージョン(CV)数や顧客獲得単価(CPA)を最適化するのではなく、そのサービスにとってより優先度の高い項目(高額商品や複数回の購入など)に価値(Value)の付与を行っていただきます。その数値をTikTok広告に活用することで、よりビジネスの売上を効率化できます。
光安:私たちはTikTok広告のCVポイントをお問い合わせに設定していました。お問い合わせの中でも成約に至った・至っていない、成約時の金額の大小などその重要度が違います。
それらをTikTok広告に反映することで、より洗練された最適化を目指しています。また、VBOを活用することによって、ターゲティングの条件を緩めることができ、配信ボリュームが少ない問題も解決できました。
VBOで効率よくアプローチする秘訣とは?
――VBOの効率を上げるために、どのようなことを工夫しましたか。
光安:VBOの配信効率を上げるためには、CVの評価を正しく行うことが重要です。RENOSYでは、問い合わせフォームでデータを取得しています。その回答結果と成約状況を紐づけることで、CVごとに売上期待値の予測を行っています。このデータをTikTok広告に反映することで、VBOの効率を高めているのです。
高木:VBO×ブロード配信は元々、高価格帯の商品を販売したいEC事業者様に多く利用されていました。
しかし、今回のGA technologies様のように、リードタイムが存在する商材やサービスでも、売上期待値を精度高く予測すれば、VBOを効果的に活用できるということがわかり、私たちとしても学びとなりました。
インハウス制作×インサイト別訴求のクリエイティブで効果を最大化
――クリエイティブ面での工夫はいかがでしょうか?
木村:クリエイティブ面では、弊社の持つ制作体制をフル活用して施策を行っています。
先ほど光安からあったように、VBO×ブロード配信では幅広いユーザーに動画がリーチします。そのため、ターゲットに反応してもらうにはクリエイティブがより重要となってくるのです。また、TikTokはコンテンツとして魅力的な動画が求められており、ターゲットが気になる、思わず見てしまう要素がないとスルーされてしまいます。
そのため、スキップされないために、「冒頭2〜6秒の間にユーザーのアテンションを惹きつけるような要素を織り込む」という動画の基本を押さえつつ、大きく2つの軸でクリエイティブを制作しました。
1つは実写動画クリエイティブです。実際の俳優さんをキャスティングし、広告感をなるべく排除しストーリー性のある構成にしています。動画を見ているうちに自然とRENOSYへの興味と理解を深められるよう意識して制作しました。
もう1つはアニメーションを用いた動画です。実写の動画が多いTikTokでアニメーションを活用することで、違和感を生み出すことを狙いました。
そして、TikTokはクリエイティブの消費スピードが早いため数も重要になります。軸となる2つの構成で1分の動画を1ヵ月に計30本ほどのクリエイティブを制作しました。
――1ヵ月で30本は相当多いですね。どのような訴求内容の動画を制作したのでしょうか。
不動産投資を身近に感じていただけるようなストーリーを目指しました。具体的には多くの方が持っている「資産を増やしたい」モチベーションを分析。短期的な貯蓄の心配なのか、老後の資産の不安なのか、などインサイト別に細かいストーリーを用意しました。
また、配信中も結果をクリエイティブチームにこまめにフィードバックしています。弊社はクリエイティブを評価する際に、クリエイティブ単位で売上期待値の予測をしており、ターゲットに刺さるクリエイティブ制作をするために要素を分析しています。これにより、VBOの効果を最大限に活用できる運用を実現しています。
こうすることでクリエイティブの消費スピードの早さに対応しながら、持続的な成果につなげることができました。
CV数155%&CPA-33%、VBO×ブロード配信の成果
――取り組みの成果について教えてください。
木村:2024年2月から3月まで施策を行ったのですが、VBO×ブロード配信を導入する前と比較してCV数が155%を達成しました。また、CPAは低下しており、配信前より33%抑えることができました。
また、パフォーマンスが安定したことも大きな成果の1つです。VBO×ブロード配信導入前のTikTok広告はパフォーマンスにムラがありましたが、VBO×ブロード配信を導入以降は高いパフォーマンスを維持できています。
光安:CVを評価して広告配信を最適化する手法は、現状実施できるプラットフォームが限られています。ユーザー数の多い動画プラットフォームでありながらこの手法を活用できるのは、TikTokの強みになっています。
高木:4月にはサーチリフトとCVリフトの調査を実施し、VBO×ブロード配信が他プラットフォーム経由の検索数は13.5%増加し、CV数も113%向上しておりました。
不動産業界で、これだけのパフォーマンスを発揮していただけたというのは、TikTok for Businessとしても新しい事例になっています。
クリエイティブ×AIでさらなる成果を
――最後に今後の展望を聞かせてください。
光安:今後、クリエイティブの改善にAIを積極的に取り入れていきたいと考えています。
これまで、私たちマーケターは定量的および定性的なリサーチを通じて、お客様のインサイトを深掘りし、「どのようなクリエイティブが効果的か」を分析しクリエイティブを制作してきました。
これからはマーケターだけでなく、AIでもクリエイティブを分析から制作する体制を整えていきます。
弊社ではクリエイティブに関するモデルをインハウスで構築しています。外部ツールを使わずにインハウスで構築することで、より深いデータをもとに自由度高くモデルの開発が進められています。
現時点では、制作したクリエイティブのパフォーマンス予測が可能であり、その精度は人間が判断するよりも高い状況で、既にクリエイティブのPDCAサイクルにも組み込まれています。
次のステップとして、割り出された各特徴量のパフォーマンスへの重要度をもとに、クリエイティブ自体の生成にAIを活用することに取り組んでいます。
既存の生成AIを使用すればクリエイティブの生成は可能ですが、実際にユーザーが反応するクオリティのものを生成できるかは別問題です。そのため、いかに「ユーザーに刺さるクリエイティブ」を作れるかが重要だと考えています。
マーケターとAIの相互で分析結果などの情報をシェアしながらクリエイティブを制作し、今まで以上に顧客理解やクリエイティブの精度向上ができる形を目指していきます。
木村:動画は静止画以上に改善できる要素が存在するので、TikTok for Businessの協力も得ながら動画の分析に注力したいです。
高木:ぜひ一緒に成果の高いクリエイティブに必要な要素を分析できればと思います。
また、TikTok for Businessとしてはサーバー経由でデータを送信する環境構築の重要性を伝えていきたいです。
サードパーティCookieの廃止が段階的に進んでいくとされており、今後広告のパフォーマンスに大きな影響が出ると言われています。そうなる前に現在の環境の見直し、またサーバー経由でデータが送信できる環境を広告主様と構築していければと考えております。