ChatGPTとは
ChatGPTは、チャット形式でプロンプト(命令文)に対し、主に文章で回答する生成AIである。2022年11月30日に公開され、約2ヵ月でユーザー数が全世界1億人を突破した。
操作にあたって難しいプログラミングの知識は不要で、チャットでメッセージを送ればChatGPTから回答が得られる。生成できる文章は記事コンテンツやキャッチコピー、メールの文章作成、プログラミングなどに活用できるため、汎用性も高い。
帝国データバンクが2023年6月に実施した調査では、生成AIを業務に活用・検討している企業の割合は61.1%で、活用したことがある・活用したい「文章・コード生成AI」はChat GPTが最も高く87.9%だった。
多くの企業が生成AIの活用を検討しているが、実際に導入している企業の割合はまだ少ないのが現状だ。
ChatGPTの利用プラン
ChatGPTには、複数の利用プランがある。一部の機能は制限される無料プランと、有料のPlus、Team、Enterpriseだ。用途や使用量に合わせたプランを選んでもらいたい。
以下に各プランの概要をまとめる。
ChatGPTの機能
ChatGPTの機能は、無料プランと有料プランとで大きく異なる。無料プランでは使用できる言語モデルが基本的にGPT-4o miniに限られる他※、プロンプトに入力できるのはテキストのみで、画像やファイルは含まない。(※2024年5月より限定的にGPT-4oへのアクセスも可能となる)
ChatGPTからの回答も、文章のみとなる。言語モデルとは、ChatGPTなどのツールの内部で動作する技術のことだ。有料プランでは性能の高い言語モデルGPT-4やGPT-4oが利用でき、プロンプトに画像やPDFなどのファイルを添付できる。
また、DALL-E3を用いた画像生成やPythonコードによるデータ分析、使いたい機能に特化したChatGPT(GPTs)を作成できる機能が利用可能になる。
2024年5月13日に公開された新たなモデル「GPT-4o」では、従来のGPT-4よりも速い回答の生成や、音声や画像のリアルタイム解析ができるようになった。有料プランでは使える機能が大幅に増えるため、ChatGPTを使いこなしたい方は、有料プランを検討してみるとよいだろう。
ChatGPTの活用方法
ChatGPTを使うと、どのようなことができるのか、活用方法を8つ解説する。豊富な機能を持つChatGPTだが、ビジネスにどのように役立てられるのか、参考にしてもらいたい。
記事コンテンツ作成
ChatGPTはプロンプトに基づいてブログやメールマガジンなどの記事コンテンツの執筆が可能である。扱うテーマや想定する読者層、キーワードなどを指定すれば、人間が書くよりも効率的にコンテンツの制作が行える。
これまで外部に記事制作を依頼していた場合は、外注費の削減にもつながるだろう。また、プロンプトに執筆した文章を入力して、誤字脱字や不自然な表現がないか校正することも可能だ。日々の業務で記事作成が求められる場合、ChatGPTを導入すれば業務の効率化が図れるだろう。
キャッチコピー作成
ChatGPTは、キャッチコピーの作成も行える。商品やサービスの特徴、キャッチコピーで何を伝えたいかなど具体的に条件を入力すれば、瞬時にコピー案が生成される。
複数の案の中から良いものを選びたい場合は、プロンプトに数を入力すれば、指定した数の案を提示してくれる。生成された案を組み合わせたり、良いものを選んで人間が手を加えたりすれば、一から考えるよりも効率的に質の高いキャッチコピーの作成が可能だ。
文章要約
膨大な文章の要点をまとめることも、ChatGPTは得意だ。プロンプトに要約したい文章を入力し、要点をまとめるよう指示すれば要約文が生成される。
箇条書きにして要約してほしい場合は、その旨を指示に盛り込めば、希望した形で要約してもらえる。
これにより、情報収集や議事録作成などの業務効率化が図れるだろう。カスタマーサポートの内容を要約すれば、よくある質問をFAQとしてまとめたり、トークスクリプトを作成したりもできる。
アイデア出し
ChatGPTから、新たなアイデアを出してもらうこともできる。「新しいWebサービスのアイデアを教えて」と指示すれば、すばやく多くのアイデアが得られる。
既にアイデアがあり、内容をブラッシュアップしたい時にも、ChatGPTへ相談が可能だ。アイデアの良い点やリスクを聞けば、様々な観点から回答がもらえる。この時、SWOTなどのフレームワークや考え方を具体的にプロンプトに入力すると、より正確な回答が返ってくる。
またChatGPTからの返答に対して、追加でプロンプトを入力し、さらに議論を深めることも有効だ。ChatGPTは人間が思いつかない角度からアイデアを提示してくれる場合があるので、ぜひ使ってみてほしい。
ペルソナの調査
自社サービスや商品のペルソナを調査したい場合にも、ChatGPTが使える。サービスの内容やターゲットなどを詳細に伝えれば、ペルソナを設定してくれる。
この時、ペルソナ設定してもらいたい項目(年齢・性別や趣味・信条、家族構成など)があれば、その旨をプロンプトに示すことで、精度の高いペルソナ調査や設定が可能だ。
有料プランに加入している場合、調査後に設定したペルソナの画像生成を行ってもらえば、より詳細なイメージを持って商品やサービスの設計に着手できるだろう。
SNS運用
SNS運用の効率化もChatGPTで行える。運用目的や目指すアカウント像などをプロンプトに盛り込み、アカウントのキャラクターを設定すれば、キャラクターに基づいたテキストコンテンツの生成や運用方針の策定が可能だ。
投稿する内容についても、ChatGPTからアイデアがもらえる。SNSに投稿する内容を考えるのは大変なので、良きアドバイザーになるだろう。
有料プランに加入している場合は、投稿するコンテンツに適した画像生成も行える。無料プランであっても、コンテンツに合った画像はどのようなものか、イメージを教えてもらえる。
以上のようにChatGPTをSNS運用に導入すれば、効率的に情報発信やフォロワーの獲得が狙えるだろう。
データ分析
有料プラン限定機能の「Advanced data analysis」によって、CSVファイルやPDFなどを読み込み、データの分析やグラフの作成が行える。
データの読み込みや分析が行いたいとプロンプトで指示するだけで、ノーコードによるPythonの実行が可能だ。
「Advanced data analysis」を使えば、ChatGPT上で画像認識や簡単な動画編集などもできる。データの分析や資料の作成を効率化したい場合は、有料プランの導入を検討してみてもらいたい。
画像コンテンツ作成
こちらも有料プラン限定の機能になるが、画像生成AIのDALL-E3と連携した画像生成がChatGPT上で行える。日本語のプロンプトにも対応しており、コンテンツポリシーや利用規約を守れば生成した画像の商用利用も可能だ。
以前は生成した画像の修正はシード値をプロンプトに盛り込むか、チャット上でのやり取りを重ねる必要があったが、現在では画像の修正したい部分を選択した状態でプロンプトによる修正ができるようになった。
柔軟な画像生成をChatGPTで行いたい方は、有料プランを検討してみてはいかがだろうか。
特定業務に特化したチャットボットの使用・作成(GPTs)
有料プランで利用できる機能の中で、現在注目を集めているのが「GPTs」だ。「GPTs」とはデータを読み込ませたり、文章生成する際の条件を事前設定したりといったカスタマイズを行うことで、特定業務に特化したChatGPTが作れる機能だ。
「GPTs」を作成すれば、毎回条件設定のために入力する長文のプロンプトが不要になる。そのため、さらなる業務効率化や、生成される文章がプロンプトを作成する技術レベルに左右されにくくなる。
また、他のユーザーが作成した「GPTs」も、外部に公開しているものであれば利用可能だ。記事コンテンツの執筆やアイデア出しに特化したものなど、既に多くの「GPTs」が作成されている。
作成した「GPTs」を外部に公開したくない場合は、非公開にもできる。ノーコードで自社業務に特化したChatGPTが作成できるため、有料プランに加入したら「GPTs」を作ってみてもらいたい。
ChatGPTを組み込んだツールの開発
少しレベルの高い内容になるが「ChatGPT API」を外部システムと連携すれば、回答精度の向上や対応できる業務領域の拡大が可能だ。
たとえば自社製品の情報を格納するデータベースと連携し、製品情報について精度の高い回答が得られるチャットボットを開発すれば、資料作成やカスタマーサポートの業務効率化に活用できる。
APIの利用にあたっては、Open AIでアカウント開設を行い、従量課金制で使用するため、想定される利用量とパフォーマンスの比較検討が必要だ。後段で紹介する活用事例では、APIを用いて開発されたツールについても紹介するので、気になる方は参考にしてほしい。
ChatGPTの活用事例6選
ここからはChatGPTを業務に導入している企業が、どのように生産性の向上や新たな価値創造を行っているか、具体的な活用事例を基に解説する。
どれもすぐに実践できるものばかりなので、どのようにChatGPTを活用してよいか悩んでいる方は参考にしてほしい。
メールマガジンの作成(パーソル総合研究所)
パーソル総合研究所では、メールマガジンの作成にChatGPTを活用している。具体的には、セミナー情報を登録者向けに知らせる文章と件名をChatGPTに作成させ、業務効率化に成功した。
セミナー情報とメリットや価格、数値を盛り込むなど、自社におけるキャッチコピーの評価軸を言語化してプロンプトに入力することで、文章生成を行っている。
最初から完璧なプロンプトではなかったが試行錯誤の結果、8~9割程度ChatGPTから生成された文章が、そのままメールマガジンに使用できることもある。
また、業務未経験のスタッフがChatGPTを使用してメールマガジンを作成したところ、使用前と比較して反応率が約3倍になった。
イベントのキービジュアル作成(ソフトバンク)
ソフトバンクでは、自社イベントのキービジュアルに使用する色や図形のアドバイスをChatGPTからもらうことで、クリエイティブ制作の内製に成功した。
同社では、これまでクリエイティブを広告代理店経由に依頼していたが、ChatGPTに制作テーマを伝え、テーマから連想される色や図形について質問を重ねて得られた回答を基に、ベース画像の加工を行った。
また画像加工には画像生成AIのAdobe Fireflyを使用し、イメージから離れないよう8段階にプロンプトを分けて調整したという。
同社では、自社イベントのキャッチコピー作成にもChatGPTを活用している。人間の考えた案との比較案をChatGPTで膨大に作成した結果、キャッチコピーの内製にも成功した。
CM制作(サントリー)
サントリーでは、自社製品のCM制作において内容やキャスティングについてChatGPTに相談する際、ChatGPTに「AI部長」という役割を与えた上で、そのアドバイスを基に制作を行った。
制作陣は「AI部長」にCMで視聴者に伝えたいメッセージと脚本案を入力し、フィードバックやキャスティングについて指示を仰いだ。
キャスティングについては「AI部長」の指示どおりの声優を起用した。脚本についても、出演者がバレエダンサーとなったり、空から果物が降ってきたりと予想外の展開が続くインパクトの強い内容となった。
「AI部長」には陽気でやさしいがストイックな一面もある、ユニークな発想の持ち主というキャラクター付けもされており、対談インタビューに登場するなど同社のPRにも貢献している。
社外向けレポートの作成(大和総研)
大和総研では、社外向けレポート作成作業の一部をChatGPTに代替したところ、作成時間を約50%削減することに成功した。
同社ではGPT-4を搭載したChatGPTを活用し、レポート作成作業のうち指標の変化とその背景分析、本文の下書きを行っている。これによって、人間は考察内容と本文案を修正するだけでよくなった。
削減できた時間を活用してレポートの質を向上させたり、新たなテーマを取り扱ったりと情報発信の強化に充てているそうだ。
なお、同社ではAIの使用目的や法令遵守についてAI倫理指針を策定しており、適性な利用に努めている。
SNSアカウントの投稿作成(100)
マーケティングツール「HubSpot」のダイヤモンドパートナーである100ではSNS運用にChatGPTを実験的に活用している。
同社のX(旧Twitter)アカウントで投稿しているHubSpotの障害情報や海外の有益情報の発信に、SNS担当スタッフによる手動の情報発信に加えChatGPTを活用し、投稿数を増やしている。
前段でも紹介したように、情報発信するジャンルや文体、取り扱いたい内容などの情報をプロンプトに含めると、ChatGPTが投稿内容を簡単に作成してくれる。そのためSNS運用へのChatGPT導入は、AIの使用を検討している企業も取り組みやすいだろう。
ECサイト運営アシスタント(GMOペパボ)
GMOペパボでは、同社が運営するECサイト構築・運営サービス「カラーミーショップ」においてショップ運営アシスタントの作成方法を公開した。
ショップ運営アシスタントはカラーミーショップAPIとChatGPT Plus限定機能「GPTs」を組み合わせたもので、ショップに登録した商品の確認や、SNSに投稿する紹介文章の生成などが可能だ。
「GPTs」には外部のWebAPIと連携できる「Action」機能が搭載されており、加えてカラーミーショップAPIを連携することで、ショップアシスタントとして機能するGPTsが完成する。
「GPTs」の活用は難易度が高いが、使いこなせば大幅な業務効率化につながるだろう。
ChatGPTを用いたツールの活用事例6選
ここからは、企業がChatGPTを組み込んだツールを開発し、社内の業務効率化や新たなサービス提供につなげた事例を6つ紹介する。
ChatGPTをそのまま使用するのではなく、ツールを開発している点で一つ上のレベルの使用方法となるが、これから使い方を学んでいく方にとっても得られるものが多いため、参考にしてもらいたい。
広告コピーの制作
Web広告を扱う企業ではChatGPTのAPIを活用し、Web広告のキャッチコピーをターゲットに合わせた高い精度で生成するツールを開発して業務効率化に成功している。
従来のキャッチコピー生成ツールでは、年齢や性別、興味関心といった外形的な情報を基にしたコピー生成しかできなかった。そのため「朝が忙しいビジネスパーソン」などの状態を踏まえた広告コピー制作は、クリエイターが行っていた。
だが、特性や状態といった詳細なターゲットの内容をChatGPTが理解することにより、ツールによる精度の高いコピー生成が可能となった。
ChatGPT単体でも、詳細な条件を入力すれば広告コピーの生成は可能だが、同社が過去に制作した広告コピーのデータと組み合わせることで、より高い精度での生成を可能にしている。これによって、広告コピー制作における時間や工数の削減につながった。
ブログ記事の作成
Webサービスを提供する企業ではChatGPTを基に、SEOを目的とするブログの記事作成やリライトに使用できるツールを開発した。
同ツールはSEO専門家監修の元開発されており、GPT-3.5・GPT-4を搭載したChatGPTによって記事の見出しや本文、タイトル、リード文が作成可能である。
検索結果の上位表示を狙いたいキーワードを入力するだけで、共起語やサジェストなどの観点から調査をしてくれる。この結果を基に、新規記事の作成や既存記事に足りていないキーワードを調査しリライトを行ってくれるため、ブログ運営初心者であっても効率的な記事作成が可能になる。
電話内容の要約
ビジネスツールを提供する企業では、電話内容の文字起こしを行うアプリにChatGPTを組み込み、文字起こしした通話内容を自動で要約する機能を実装した。
文字起こし内容の要約は箇条書きと文章形式から選択でき、文字起こしした内容はCRMへ自動連携し、顧客情報を漏れなく管理することも可能だ。
同ツールは数分を超えるような通話であっても要約可能なため、複雑な内容であっても後から簡単に内容を確認できる。これによって、電話の内容をまとめて報告書やメールを作成する際の作業工数の削減につながる。
また、部下からの報告を受けた上司が客観的にやり取りの内容を確認する際にも使用できるため、部下からの一方的な報告を鵜呑みにせず、判断しやすくなるだろう。
職務経歴書の作成
転職サイトを運営する企業では、ユーザーが簡単に職務経歴書を作成できるツールを、自社が持つデータとChatGPTを組み合わせることによって開発した。
ユーザーは職種やポジション、業務領域に関する簡単な質問に回答し、過去のデータから推奨されるキーワードを選択するだけで、簡単に職務経歴書に記入する文章作成が行える。
同ツールを使用したユーザーと、そうでないユーザーを比較したところ、ツールを使用したユーザーのほうが多くの企業からスカウトを受け取れたという結果も出ている。
職務経歴書は、過去から現在までの実績や自身の強みなどを他人にわかりやすく伝える必要があり、作成に時間を要する書類であるが、ChatGPTの活用によって効率的に質の高いものが作成可能となった。
プログラミング相談用チャットボット
スキルシェアサービスを提供する企業では、プログラミングについて相談できるチャットボットを開発した。
このチャットボットはChatGPTを搭載した、LINE上で使用できるアプリケーションだ。「Pythonで作業の自動化ツールを作る手順を教えて」「解決できないバグがある」といったプログラミングに関する相談であれば、レベルを問わず相談可能である。
チャットボットからは質問・相談以外にも、クイズやニュースも配信されるため、相談事がない場合でも有益な情報を受け取れる。
全社的な業務効率化
製造業大手の企業では、社員の業務効率化やアイデア創出に活用する、ChatGPTを用いたAIアシスタントサービスを開発した。
同ツールはMicrosoftが提供するChatGPTのAPIを使用しているため、入力したデータはAI学習に使われず、情報漏えいの心配がないといえる。
AIアシスタントサービスは国内の全社員に提供されており、IT部門に限らずすべての社員に対してAI技術の活用方法を学ばせるという狙いもある。現在はGPT-4を導入し、精度の高い運用を目指している。
同社のグループ企業においては、このツールに自社の公式情報を学習させ自社業務に特化したAIツールとして利便性を向上させた。2023年10月以降は社外秘情報も学習させ、さらなる業務改善につなげることも予定している。
ChatGPTを活用するためのコツ
ChatGPTを業務にうまく活用するためのコツを3つ解説する。ChatGPTを導入すれば、いきなり業務が効率化されるわけではない。本章で紹介するコツを踏まえて、自社での導入に活かしてほしい。
業務を細分化して使用する業務を選定する
ChatGPTは汎用性の高い生成AIだが、業務を丸投げしてしまうと、その真価は発揮されない。したがってChatGPTができることと、効率化したい業務の重なるところをしっかり分析する必要がある。
たとえば活用事例で紹介したメールマガジン作成業務は、次のステップに分解できる。
- テーマ選定
- 件名作成
- 本文作成
- データの分析
このうち、ChatGPTを利用できそうな業務を選定して1つずつプロンプトに落とし込まなければならない。プロンプトを作成するには、人間が行っている作業や判断基準を正確に言語化する必要がある。
この辺りは実際に利用しながら、プロンプトを微調整して対応となる。
命令文を具体的に書く
ChatGPTはプロンプトに具体的な指示を入力しないと、精度の低い回答が生成されてしまう。たとえば「集客できるメールマガジンのタイトルを考えて」と漠然とした指示を出すよりも、ターゲットや文字数、評価軸といった条件や良い例、悪い例を示す方が精度の高い回答が得られる。
プロンプトに詳細な条件や例示を盛り込むためには、ユーザー自身がアウトプットのイメージを具体的に持ち、言語化する必要がある。
また抽象的な指示であっても、GPT-4であればユーザーの意図を汲み取る性能がある程度高くなるため、有料プランの導入も有効策の一つだ。
一度のやり取りで完結しようとしない
業務効率化を目的としてChatGPTを活用すると、一度の指示で完璧なアウトプットを求めてしまう方も多いだろうが、やり取りを重ねながら精度を高めていく姿勢が大切だ。
プロンプトに見落としている観点がある可能性や、ChatGPTがアウトプットするのに必要な条件が不足している場合もある。得られた回答に対して「もっとこうしてほしい」と指示を追加する中で、プロンプトも回答内容も磨かれていく。
特に利用し始めて間もない頃は、何度もやり取りをしながらChatGPTに適したプロンプトを学ぶ必要がある。
ChatGPTを使用する際の注意点
ChatGPTは、業務効率化やアイデアの創出に大きく寄与するツールである。しかし、使用にあたっての注意点も存在する。
本章では、ChatGPTを使用する際の注意点を3つ解説する。これから使用を検討している方は、参考にしてもらいたい。
間違った情報を出力することもある
ChatGPTなどの生成AIは、事実と異なる内容を、もっともらしく出力してしまうハルシネーション(幻覚)と呼ばれる現象に陥ることがある。
そのため、ChatGPTが生成した内容を鵜呑みにせず、ファクトチェックする必要がある。特に記事コンテンツなどの情報発信にChatGPTを使用する場合、誤った情報を発信すると自社の信用を損ねてしまう。
ChatGPTの使用にあたっては、必ず人間による出力内容の確認が求められる。
情報漏えいに気を付ける必要がある
ChatGPTはユーザーが入力した情報を学習用データに使う可能性があるため、使用にあたって個人情報や機密情報などは入力しないほうがよい。学習用データとして利用された場合、入力した情報が別の誰かの回答に用いられる可能性があるためだ。
入力する情報を学習に利用されたくない場合は、ChatGPTの設定を変更したり、有料になるが、ChatGPTのAPIやAzure OpenAI Serviceを利用したりする必要がある。
以前は、設定変更による学習データへの利用を禁止すると、チャット履歴も残らない使用になっていたが、2024年4月末のアップデートでチャット履歴を残せるようになった。
ChatGPTの設定変更は、ログイン画面から簡単に行えるため、ぜひ試してもらいたい。
最新情報は生成できない
ChatGPTは学習データを基に回答内容を生成するため、最新情報を基に回答ができない。学習データは無料で使えるGPT-3.5は2021年9月、有料のGPT-4(turbo)であれば2023年12月以前の情報しか保有していない。
最新情報を基に回答してほしい場合は、有料のChatGPT Plusで回答時にWeb検索を行うブラウジング機能を使用する必要がある。他には、プロンプトに回答のベースにしてほしい最新情報を含めるといった方法が挙げられる。
業務効率化に活用できる生成AI
最後に業務効率化に活用できる、ChatGPT以外の生成AIを4つ紹介する。ChatGPTの登場後、多くの企業が生成AIの開発に乗り出した。
本章では各生成AIの特徴とともに解説するため、自社が欲しい機能を搭載している生成AIを、場面ごとに使い分けてもらいたい。
Claude
「Claude」は、米国のAnthropicが開発したテキスト生成AIだ。画像生成やWebブラウジング機能、GPTsのような特化したツールを作成する機能はないが、ChatGPTのように自然な文章生成を得意とする。
2024年3月4日に公開された「Claude3」では3つの言語モデルが公開され、中でも最上位の「Claude3 Opus」は、GPT-4に引けを取らないほど精度が高いという声もあるほどだ。
現在「Claude3 Opus」は、有料プラン(Claude Pro)限定で公開されており、利用料金は月額20ドルのため、資金に余裕のある方はChatGPTと両方加入してみてもよいだろう。
Gemini
「Gemini」はGoogleが開発した生成AIで「Bard」の後継にあたる。Bardと同様に無料プランでWebブラウジングが行えるため、最新情報を基にした回答生成が可能だ。
Gemini独自の機能として、生成された文章を他サイトに掲載されている情報と比較して、類似する内容が掲載されているか色分けして表示できる。これによって、回答内容にハルシネーションが含まれるかのチェックが容易になる。
また、生成された文章をGoogleドキュメントやGmailにエクスポートできるため、日常利用するビジネスツールとの連携がしやすいのも特徴の一つだ。
有料プランの「Gemini Advanced」では最も高性能なGemini 1.5 Proが使用できる。利用料金は月額2,900円なので、こちらもChatGPTやClaudeと比較して、導入を検討してみてはいかがだろうか。
Microsoft Copilot
「Microsoft Copilot」は「Bing AI」から名称変更した、Microsoftの生成AIツールだ。
ChatGPTではGPT-4の利用やWebブラウジング機能、画像生成は有料プランに加入しないと利用できない機能だが、Microsoft Copilotでは利用者数がピークに達しない限り無料で使用できる。
また音声によるプロンプト入力や画像認識、他のユーザーが作成した「Copilot GPT」の利用も可能だ。Copilot GPT とは、ChatGPTにおけるGPTsのようなものである。
有料プランは個人利用向けの「Copilot Pro」(月額3,200円)と企業向けの「Copilot for Microsoft365」(月額4,497円/人)があり、有料プランではWordやExcelなどのMicrosoft 365と連携が可能になる。
日常的にMicrosoft製品を使用している場合は、Microsoft Copilotの導入も視野に入るだろう。
NotionAI
「NotionAI」は、ビジネスツールの「Notion」上で利用できる生成AIツールだ。チャット上でやり取りをするだけでなく、プロンプトに基づき、テキストファイル上に直接文章を生成させられる。
これによって、生成された文章の編集や文章の一部を指定して、AIに文章修正を行わせることが可能だ。他にも、ToDoリストの作成やスケジュール管理、ワークスペース内の情報をAIに質問できるQ&A機能などがあり、テキスト生成以外の業務効率化も担ってくれる。
利用にあたっては、通常のNotion利用料金に加えてメンバー/月あたり1,350円の支払いが必要なため、NotionユーザーやNotionの利用を検討している方にお勧めだ。
まとめ
今回はChatGPTの活用方法と注意点、国内企業の活用事例12選を中心に紹介した。
ChatGPTは汎用性が高いため、幅広い目的に活用できる。しかし、導入を検討している企業は多いものの、実際に業務へ導入している企業はまだまだ少ない。
ChatGPTを導入すれば、業務効率化やツールの開発によるビジネスチャンスの創出など、新しい可能性が開けることを見ていただけただろう。本記事が、自社にChatGPTを導入するきっかけとなれば幸いである。