「酒類一体経営」を掲げ、最高で最適な接点を模索
──昨今では、小売企業・メーカーが取り組むマーケティングや顧客とのコミュニケーション手法が変化しつつあります。こうした中、サントリーではどのような戦略を描いているのでしょうか。
中村:メーカーでは今まで、プロダクトアウトを軸に商品開発や展開を考えていくことが主流でした。しかし日本の人口が減っていく中で、結果的にメーカーとしての売上が減っていく可能性が高くなってきています。また近年、お客様の嗜好の変化・多様化が進んでいましたが、コロナ禍によってそれが加速度的に変化しているのです。したがって、顧客起点でお客様のニーズや変化を捉え、新たな需要を生み出す新商品や需要創造の提案を積極的に実施する必要が出てきました。
そこでサントリーでは、「酒類一体経営」を掲げ、国内酒類事業全体で生産部門から営業部門まで一体となり、酒類市場と生活者の変化に対応・価値創造の強化を図っています。具体的にはマーケティング・生産・営業などの部門だけでなく、ビール・スピリッツ・ワインといった事業も超えて結束し、徹底的にお客様の視点に立ったマーケティング活動を推進することで、顧客を中心とした最適な接点をどのように作っていくのかを考えています。
──サントリーでは来店客の動きと購入データを組み合わせて分析し、売り場を最適化する取り組みをしていると伺いました。取り組み開始の背景をお聞かせください。
中村:我々はBtoBtoCの商売です。以前は、店頭でどういった形で販売され、お客様の手に届くのかは流通企業様が主導しており、タイムリーに知る方法はありませんでした。
しかしデジタルインフラの発展にともない、売り場の可視化ができるようになってきました。そこで弊社は、開発・製造・宣伝、販売店様で商品をお客様に購入いただくまでの、バリューチェーンによるマーケティングの高度化に流通企業様と取り組みはじめたところです。
売り場でのお客様の購買行動を可視化・分析に取り組むサントリー
──バリューチェーンの取り組みについて、サントリーではいつから行っていますか。
中村:ビッグデータという言葉が話題となった2011年頃から取り組んでいます。当時は「データをどうやってビジネスにどう取り入れていくか」を軸に進めていました。
その3年後くらいから、カメラやセンサーなどのデバイスを用い、お客様の購買行動やサービスに対するお客様の動き方をモニタリングし始めました。もちろんプライバシーに配慮した形で、流通企業様に協力いただきながら徐々に取り入れていきました。
──サントリーでは、AIカメラを活用した店頭DXについて取り組んでいると伺いました。その概要を簡単にご説明ください。
中村:2014年頃から、とある流通企業様とAIカメラを活用して「売り場でのお客様の購買行動を可視化して分析してみよう」とスタートしました。
結果、お酒をたくさん購入される方とそうでない方、ブランドロイヤルティーの高い方と高くない方で見た際、お酒売り場に来てから商品を取って出て行くまでの売り場における滞在時間が大きな違いがありました。
その当時から「なんとなくそうだろう」と認識はしていましたが、改めてカメラを分析してみると「ここまで違うのか」と驚きましたね。