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「界隈をハッシュタグで捉える」ワンメディアに聞く、若年層向けショート動画攻略法

 近年、若年層に向けたコミュニケーション方法として注目を集めているショート動画。しかし、企業からすると「クリエイターは起用すべきなのか」「どのような構成の動画にすればいいのかわからない」など、課題は山積みだ。本記事では、YouTubeやTikTokの広告賞の受賞実績があり、ショート動画に関する知見を持つワンメディアの余頃氏、近藤氏、門口氏の3名にインタビュー。TikTokをはじめとしたショート動画活用における考え方や攻略法を聞いた。

若年層向けショート動画のポイントは「発話」量の増加

――様々な企業に取材をしていると「ショート動画を活用したい」と考える広告主は増えていると感じています。「ショート動画」の注目には、どのような背景があると思いますか。

余頃:弊社も広告主様から多くの相談をいただきますが、ご相談の8割以上が「ショート動画の活用」です。

ワンメディア株式会社 取締役 COO 余頃 沙貴氏
ワンメディア株式会社 取締役 COO 余頃 沙貴氏

 最近では、ショート動画の活用目的も広がっています。従来は潜在層へのリーチだったのが、顕在層への理解促進やエンゲージメント向上などを目的にする広告主様も増え、フルファネルでショート動画を活用できるようになっています。

 また、Googleのモバイル検索結果に「Webページ」と並んで「ショート動画」の専用セクションが出てくるなど、情報の主役がテキストから動画に移ってきています。この流れに対応すべく「ショート動画を活用したい」と考える広告主が増えていると思います。

――ショート動画を活用するとき「若年層向けにアプローチしたい」と考える企業が多いと感じています。ワンメディアの皆さんから見て、そこにはどういった課題や背景があると思いますか。

余頃:ショート動画の関心が高まっているのには、広告を“視聴させる”だけでは興味を持たれない、という背景があると考えています。「認知されているが、興味を持ってもらえない」という課題とも言えます。そして、これらの課題によって起きる2つのケースを紹介します。

1つは、テレビCMなどの広告出稿量が多いにも関わらず、思うような売上につながっていないケースです。予算の大きい企業やブランドであれば、テレビCMをはじめとしたマス広告、デジタル広告を組み合わせてブランドや商品の認知率を大きく向上できているはずです。

 しかし、認知率は上がっても、その先の商品理解や購買促進につなげるコミュニケーションに課題があり、最終的に手に取ってもらえないという状況が起きているのだと考えています。

 もう1つは、定番ブランドの若返りが進んでいないケースです。ロングセラーブランドになればなるほど既存ユーザーの平均年齢が上がっていくため、若年層向けの施策が求められます。そのときに「認知しているが、“自分向け”ではない」というイメージを変える必要が出てきます。

 このような場合に、認知から購買喚起までフルファネルでアプローチでき、若年層の利用率も高いショート動画プラットフォームが接点として注目されているのです。

 そして、どちらの場合においても課題となるのは、ブランドの発話量の少なさです。どれだけ広告でリーチをとっても、若年層の間でブランドに関する発話が起きなければ、自分ごと化されません。一方、発話が増えればブランドの理解度や好意度も高まりますし、最終的な購買やブランドの若返りにもつながります。

 テレビCMやVODプラットフォームと違い、ショート動画プラットフォームには「コメント欄」があります。動画を視聴したユーザーが、発話やいいねというアクションを促せます。これまでは発話量を増やす接点としてSNSが注目されていましたが、今はショート動画プラットフォームもその接点として活用できる規模に成長しており、広告主様からの相談も増えています。

Googleモバイル検索結果にショート動画が登場

発話量を増やすには“界隈”を見極めよ

――ショート動画をきっかけに発話量を増やすことで、購買や自分ごと化につなげていけるとのことでしたが、発話量を増やすために必要なことはありますか。

近藤:成功事例を見ていると、生活者のインサイトを捉えているという共通点があります。ワンメディアでは“界隈”という言葉をよく使うのですが、世の中には特定の興味でまとまっているコミュニティが細かく存在しています。

 この“界隈”を見極めることで、生活者の真のインサイトが捉えられ、普段興味があるトピックについて会話しているなかにブランドが入っていけると考えています。デモグラフィックターゲティングではなく、“界隈”ターゲティングをすることが大事です。

門口:ショート動画は、ターゲットとの関係性が重要だと思っています。若年層にとって「わかってる感」があるコミュニケーションとも言えますね。

 とはいえ、無理やりトレンドに合わせる必要はありません。たとえば、流行語を使って変に合わせすぎた動画にすると、「狙われている」と感じ逆に嫌悪感を抱かれることもあります。成功している事例だと、その境界線を理解できていることが多いです。

近藤:そのブランドらしさが失われていると違和感につながりますね。たとえば、優等生キャラだった子が急に不良っぽい発言をすると、「なんか無理しちゃってるのかな……」と思ってしまうのと似ています。

 ショート動画こそ、ブレずにブランドの人格を伝えることが大切です。狙った“界隈”のなかで「あのブランドって○○だよね」と認識されれば、自ずと発話されやすい土台ができると思います。

ショート動画で発話を生むには

ショート動画攻略のカギは界隈×ハッシュタグ

――続いて、ワンメディアがショート動画を企画・制作する際に気を付けているポイントを教えてください。

近藤:まず、1動画1メッセージというのを前提に企画を考えます。ショート動画でいくつものメッセージを盛り込んでしまうと、情報が伝わらなくなってしまうためです。他の広告を展開している場合も、その中から1つだけ伝えたい情報をショート動画に適応させて発信しています。

ワンメディア株式会社 Studio Dept.マネージャー / プランナー 近藤 望美氏
ワンメディア株式会社 Studio Dept.マネージャー / プランナー 近藤 望美氏

近藤:この1動画1メッセージを企画する上でヒントになるのが「ハッシュタグ」です。ワンメディアでは企画をする前に、まずTikTok上でハッシュタグをリサーチします。ハッシュタグを見ると、人気の動画コンテンツや、どういうトピックに興味があるのかがわかります。ハッシュタグを見れば、細かな界隈やコミュニティを捉えることができるのです。

 たとえば、TikTok上で10億回以上再生されている定番のハッシュタグにはこのようなものがあります(下図参照)。

TikTokで10億回以上再生されているハッシュタグ(ワンメディア調べ)
TikTokで10億回以上再生されているハッシュタグ(ワンメディア調べ)

門口:ワンメディアが支援した森永乳業様のエコらくパックに関するショート動画事例では、この界隈とハッシュタグを捉えた設計を行いました。

 エコらくパックは入れかえタイプの粉ミルクで、一般的な粉ミルクで使われる缶を使用しておらず、エコで簡単に使用できる特徴があります。お子様のいるママ・パパがターゲットになるので、育児関連の動画に付いているハッシュタグをリサーチしました。

 その結果、「#~~のいる暮らし」というハッシュタグがよく使われていることがわかりました。そして、「#エコらくのある暮らし」というハッシュタグを考え、クリエイターを起用したショート動画に付けることで、発話や動画の視聴につなげました。

 「#~~のいる暮らし」のような、トレンドに左右されずに定着しているハッシュタグがあります。ワンメディアでは「定番ハッシュタグ」と呼んでいます。このような「定番ハッシュタグ」とブランドをかけ合わせることで、普段視聴しているコンテンツに馴染み、発話を生むコミュニケーションができるのです。

 エコらくパックの事例はまだ始めたばかりで具体的な結果はこれからですが、他の広告主様では似た座組で取り組みを行い、同カテゴリ商品の中でシェアオブボイスが他ブランドより高くなるといった成果が出ています。

人気ハッシュタグから、コピーを決める

ショート動画はクリエイターを起用すべき?判断軸は“文脈”

――ショート動画を作る際に、クリエイターを起用するか、ブランドを主語にした動画にするか悩む広告主も多いと思います。起用する・しないはどのような基準で考えるべきでしょうか。

近藤:有形商材かどうかは1つの判断基準になると思います。有形商材の場合、クリエイターを起用したほうが生活者目線の使用動画が作りやすく、生活者に自分ごと化してもらいやすいです。

 一方で、ブランドの識別しにくい商品の場合は、ブランドを主語にした動画のほうが効果の出るケースもあります。たとえば、商材が石鹸の場合、使用動画だと商品の違いがわからず、なんのブランドだったか判断しにくくなります。

 クリエイター動画とブランド動画も一長一短なので、生活者にハッシュタグを通じてクリエイター動画もブランド動画も行き来してもらえる設計にできるのが理想です。

――クリエイターを起用する場合は何に気を付けるべきでしょうか。

余頃:冒頭にお話しした界隈を踏まえて起用することですね。フォロワー数や動画の再生数が多いとしても、界隈との文脈がないクリエイターを起用しても、言わされている感が出てしまい、効果が得られません。

門口:有名人を1人起用するよりも、狙いたい界隈に強いクリエイターを10名起用したほうが費用対効果が高いケースもあります。起用する人によって伝えられるメッセージが変わってくるので、伝えたいメッセージに合わせて起用するクリエイターを変えることが重要です。

 たとえば、レノボ・ジャパン様と実施したショート動画施策では、オールターゲットをカバーするため、新大学生からファミリーまで合計10名起用しました。そのときも同じ「社会人」のなかでも「新社会人界隈」「リモートワーク界隈」など界隈ごとにクリエイターを起用しました。

企業はトレンドを追いすぎないほうが良い

――ここまでお話しいただいたこと以外に、ショート動画を活用する際に気を付けたほうがいいことはありますか。

門口:ついショート動画と聞くと若年層のトレンドに合わせたくなりますが、トレンドを追いすぎるのはあまりおすすめしておりません。

ワンメディア株式会社 Studio Dept.プロデューサー 門口 真子氏
ワンメディア株式会社 Studio Dept.プロデューサー 門口 真子氏

門口:企業が動画を作る際、制作フローは複雑になり、一定の制作期間が必要になります。そのため、動画を公開する頃には、トレンドが終わってしまっている可能性もあるのです。

 また、付けるハッシュタグは再生数より投稿数で選ぶといいと思います。再生数は広告でブーストできるため、界隈が盛り上がっているかどうかの指標である投稿数を重視したほうが効果を見込めます。

近藤:どういう発話やコメントが生まれると嬉しいか、事前に決まっていると安心です。もちろん私たちからご提案もできるのですが、それはあくまで生活者に刺さる訴求であり、ブランドがどうありたいかは企業様にしかわかりません。何を伝えて、どのような反応を得たいかが決まっていると、より効果的な企画が考えられるのでおすすめです。

プロモーション活用なら「定番ハッシュタグ」

「定番ハッシュタグ」をリサーチし、界隈にアプローチしよう

――最後に、これから若年層に向けてショート動画を行いたい方へメッセージをお願いします。

余頃:若年層に向けたショート動画施策に悩んだら、ぜひ弊社にご相談いただければと思います。依頼いただいた際、私たちはまずその商材に相性の良い界隈とハッシュタグのリサーチから始めます。「ショート動画勉強会」というかたちで情報提供からできますので、ぜひお声がけください。

ショート動画制作に欠かせない「定番ハッシュタグ」、業界別ハッシュタグが一目でわかる!

 ワンメディアでは、10億回再生を超える「定番ハッシュタグ」、業界別のおすすめハッシュタグをリサーチしています。特設サイトでは、それらをまとめた資料を配布しておりますので、ぜひご参考にしてください。

ダウンロード資料画像

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ワンメディア株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/09/05 10:00 https://markezine.jp/article/detail/46377