若年層向けショート動画のポイントは「発話」量の増加
――様々な企業に取材をしていると「ショート動画を活用したい」と考える広告主は増えていると感じています。「ショート動画」の注目には、どのような背景があると思いますか。
余頃:弊社も広告主様から多くの相談をいただきますが、ご相談の8割以上が「ショート動画の活用」です。
最近では、ショート動画の活用目的も広がっています。従来は潜在層へのリーチだったのが、顕在層への理解促進やエンゲージメント向上などを目的にする広告主様も増え、フルファネルでショート動画を活用できるようになっています。
また、Googleのモバイル検索結果に「Webページ」と並んで「ショート動画」の専用セクションが出てくるなど、情報の主役がテキストから動画に移ってきています。この流れに対応すべく「ショート動画を活用したい」と考える広告主が増えていると思います。
――ショート動画を活用するとき「若年層向けにアプローチしたい」と考える企業が多いと感じています。ワンメディアの皆さんから見て、そこにはどういった課題や背景があると思いますか。
余頃:ショート動画の関心が高まっているのには、広告を“視聴させる”だけでは興味を持たれない、という背景があると考えています。「認知されているが、興味を持ってもらえない」という課題とも言えます。そして、これらの課題によって起きる2つのケースを紹介します。
1つは、テレビCMなどの広告出稿量が多いにも関わらず、思うような売上につながっていないケースです。予算の大きい企業やブランドであれば、テレビCMをはじめとしたマス広告、デジタル広告を組み合わせてブランドや商品の認知率を大きく向上できているはずです。
しかし、認知率は上がっても、その先の商品理解や購買促進につなげるコミュニケーションに課題があり、最終的に手に取ってもらえないという状況が起きているのだと考えています。
もう1つは、定番ブランドの若返りが進んでいないケースです。ロングセラーブランドになればなるほど既存ユーザーの平均年齢が上がっていくため、若年層向けの施策が求められます。そのときに「認知しているが、“自分向け”ではない」というイメージを変える必要が出てきます。
このような場合に、認知から購買喚起までフルファネルでアプローチでき、若年層の利用率も高いショート動画プラットフォームが接点として注目されているのです。
そして、どちらの場合においても課題となるのは、ブランドの発話量の少なさです。どれだけ広告でリーチをとっても、若年層の間でブランドに関する発話が起きなければ、自分ごと化されません。一方、発話が増えればブランドの理解度や好意度も高まりますし、最終的な購買やブランドの若返りにもつながります。
テレビCMやVODプラットフォームと違い、ショート動画プラットフォームには「コメント欄」があります。動画を視聴したユーザーが、発話やいいねというアクションを促せます。これまでは発話量を増やす接点としてSNSが注目されていましたが、今はショート動画プラットフォームもその接点として活用できる規模に成長しており、広告主様からの相談も増えています。
発話量を増やすには“界隈”を見極めよ
――ショート動画をきっかけに発話量を増やすことで、購買や自分ごと化につなげていけるとのことでしたが、発話量を増やすために必要なことはありますか。
近藤:成功事例を見ていると、生活者のインサイトを捉えているという共通点があります。ワンメディアでは“界隈”という言葉をよく使うのですが、世の中には特定の興味でまとまっているコミュニティが細かく存在しています。
この“界隈”を見極めることで、生活者の真のインサイトが捉えられ、普段興味があるトピックについて会話しているなかにブランドが入っていけると考えています。デモグラフィックターゲティングではなく、“界隈”ターゲティングをすることが大事です。
門口:ショート動画は、ターゲットとの関係性が重要だと思っています。若年層にとって「わかってる感」があるコミュニケーションとも言えますね。
とはいえ、無理やりトレンドに合わせる必要はありません。たとえば、流行語を使って変に合わせすぎた動画にすると、「狙われている」と感じ逆に嫌悪感を抱かれることもあります。成功している事例だと、その境界線を理解できていることが多いです。
近藤:そのブランドらしさが失われていると違和感につながりますね。たとえば、優等生キャラだった子が急に不良っぽい発言をすると、「なんか無理しちゃってるのかな……」と思ってしまうのと似ています。
ショート動画こそ、ブレずにブランドの人格を伝えることが大切です。狙った“界隈”のなかで「あのブランドって○○だよね」と認識されれば、自ずと発話されやすい土台ができると思います。