ショート動画攻略のカギは界隈×ハッシュタグ
――続いて、ワンメディアがショート動画を企画・制作する際に気を付けているポイントを教えてください。
近藤:まず、1動画1メッセージというのを前提に企画を考えます。ショート動画でいくつものメッセージを盛り込んでしまうと、情報が伝わらなくなってしまうためです。他の広告を展開している場合も、その中から1つだけ伝えたい情報をショート動画に適応させて発信しています。
近藤:この1動画1メッセージを企画する上でヒントになるのが「ハッシュタグ」です。ワンメディアでは企画をする前に、まずTikTok上でハッシュタグをリサーチします。ハッシュタグを見ると、人気の動画コンテンツや、どういうトピックに興味があるのかがわかります。ハッシュタグを見れば、細かな界隈やコミュニティを捉えることができるのです。
たとえば、TikTok上で10億回以上再生されている定番のハッシュタグにはこのようなものがあります(下図参照)。
門口:ワンメディアが支援した森永乳業様のエコらくパックに関するショート動画事例では、この界隈とハッシュタグを捉えた設計を行いました。
エコらくパックは入れかえタイプの粉ミルクで、一般的な粉ミルクで使われる缶を使用しておらず、エコで簡単に使用できる特徴があります。お子様のいるママ・パパがターゲットになるので、育児関連の動画に付いているハッシュタグをリサーチしました。
その結果、「#~~のいる暮らし」というハッシュタグがよく使われていることがわかりました。そして、「#エコらくのある暮らし」というハッシュタグを考え、クリエイターを起用したショート動画に付けることで、発話や動画の視聴につなげました。
「#~~のいる暮らし」のような、トレンドに左右されずに定着しているハッシュタグがあります。ワンメディアでは「定番ハッシュタグ」と呼んでいます。このような「定番ハッシュタグ」とブランドをかけ合わせることで、普段視聴しているコンテンツに馴染み、発話を生むコミュニケーションができるのです。
エコらくパックの事例はまだ始めたばかりで具体的な結果はこれからですが、他の広告主様では似た座組で取り組みを行い、同カテゴリ商品の中でシェアオブボイスが他ブランドより高くなるといった成果が出ています。
ショート動画はクリエイターを起用すべき?判断軸は“文脈”
――ショート動画を作る際に、クリエイターを起用するか、ブランドを主語にした動画にするか悩む広告主も多いと思います。起用する・しないはどのような基準で考えるべきでしょうか。
近藤:有形商材かどうかは1つの判断基準になると思います。有形商材の場合、クリエイターを起用したほうが生活者目線の使用動画が作りやすく、生活者に自分ごと化してもらいやすいです。
一方で、ブランドの識別しにくい商品の場合は、ブランドを主語にした動画のほうが効果の出るケースもあります。たとえば、商材が石鹸の場合、使用動画だと商品の違いがわからず、なんのブランドだったか判断しにくくなります。
クリエイター動画とブランド動画も一長一短なので、生活者にハッシュタグを通じてクリエイター動画もブランド動画も行き来してもらえる設計にできるのが理想です。
――クリエイターを起用する場合は何に気を付けるべきでしょうか。
余頃:冒頭にお話しした界隈を踏まえて起用することですね。フォロワー数や動画の再生数が多いとしても、界隈との文脈がないクリエイターを起用しても、言わされている感が出てしまい、効果が得られません。
門口:有名人を1人起用するよりも、狙いたい界隈に強いクリエイターを10名起用したほうが費用対効果が高いケースもあります。起用する人によって伝えられるメッセージが変わってくるので、伝えたいメッセージに合わせて起用するクリエイターを変えることが重要です。
たとえば、レノボ・ジャパン様と実施したショート動画施策では、オールターゲットをカバーするため、新大学生からファミリーまで合計10名起用しました。そのときも同じ「社会人」のなかでも「新社会人界隈」「リモートワーク界隈」など界隈ごとにクリエイターを起用しました。