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Googleの弱点が露呈した「3rd Party Cookie廃止方針の撤回」

露呈したGoogleの弱点

 ところで、余談だが、私から言わせれば、民間企業なのだから、GoogleのプロダクトをGoogleに有利になるように作るのは当たり前だ。Privacy Sandboxに対する規制当局の振る舞いは、プライバシー保護を装った、独占禁止法的な取り締まりだ。

 そうなると、何をやっても叩かれる覚悟が必要だ。独占禁止法は、儲かっている企業を叩き、他の企業を優遇して、一人勝ちをなくすのが目的だと言ってもよい。地球でビジネスする限り、Googleは、逃げられない。

 さて、今回の一連の件で、Googleの弱点が露呈した。Googleは、データ権に光を当てたくないのだ。2018年のGDPR施行の時期に、ヨーロッパのプライバシー保護団体の意見を直接聞いたのだが、彼ら曰く、「Googleは権利侵害の塊だ」(Google is full of rights violations)と。正直、ちょっと過激な発言に、私は驚いたし、偏っていると思った。だが、彼らの認識は筋が通っていたため、その影響でGDPRが成立したし、その他の関連法がその後、強化されている。つまり、残念ながら、Googleは権利侵害企業だと認められてしまい、英国当局が監視しているという状況だ。

 そのとき、ヨーロッパの人達から聞いたのは、大きく、3つの権利侵害だ。その3つとは、(1)「プライバシー権侵害」、(2)「著作権侵害」、(3)「データ権侵害」だ。Googleのビジネスは、これらの権利侵害の上に成り立っている。彼らはそれを自明として、それぞれの業界団体などが活発なロビー活動をおこなっている。彼ら曰く、「Googleのビジネスモデルは権利侵害だ。だから、破壊しなければならない」と。

プライバシー権侵害

 「プライバシー権侵害」は、3rd Party Cookie廃止の流れを生んだ。ユーザーの明示的同意もないまま勝手に情報収集をして、それを使ってGoogleはビジネスをしている(という主張)。その結果、プライバシー保護にも反すると。これは、世界的にその権利侵害が認められた。その結果、GDPR施行、3rd Party Cookie廃止の流れ、AppleのATTなどの対応策となっている。

著作権侵害

 著作権侵害は、周知のことだと思うが、多くの国々で様々なメディア企業から、著作権や著作隣接権の侵害を指摘されてきた。たとえば、元朝日新聞記者で桜美林大学教授の平和博氏が記事「「650億円払え」Googleが受けた巨額制裁の理由とは」で記している。

「グーグルはメディアへのニュース使用料支払いについて、誠実な交渉を行っていないので制裁金5億ユーロ(約650億円)を支払え―。フランスの規制当局「競争委員会」は7月13日、グーグルに対して、そんな決定をした。グーグルが2カ月以内に改善策を示せない場合は、さらに1日当たり90万ユーロ(約1億1,700万円)の制裁金が加算される」

(出典:「「650億円払え」Googleが受けた巨額制裁の理由とは」

 これは、2021年の状況だが、メディア企業との争いは、2000年代から継続しており、いまでは、AIの領域にまで影響している。そして、日本新聞協会も先日、「生成AIは著作権侵害だ」という主張をしている(参照:「検索連動の生成AI、「著作権侵害の可能性」 新聞協会」)。

データ権侵害

 データ権侵害については、まさにGDPRで規定されたため、Googleは不利になった。2018年GDPR施行日から約1ヵ月後に、日経でも「個人データは誰のものか(大機小機)」という記事を掲載した。

 記事によると、「欧州連合(EU)が先月25日から施行した「一般データ保護規則(GDPR)」はその点で重要なステップである。個人情報は個人の所有物だと明確に定義し、取得した情報は個人が利用しやすい形で保有し、個人の意思で他社に移動できるデータポータビリティーを義務付けている」。たとえば、このデータポータビリティー権だが、Googleでの検索履歴データなどを個人(ユーザー)の意思で他社(Yahoo!やMicrosoft Bingなど)に移動できることを想定しているが、そんなサービスが十分に普及している状況では現状ない。その状況について、権利に敏感な人々からすれば、それはGoogleの権利侵害だ、とみえている(ちなみに、これらの点は、すべて、Yahoo! や Microsoft も、基本は同じなのだが、Googleが一番叩かれる)。

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「データ権」から逃れることはできない

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/26 08:00 https://markezine.jp/article/detail/46485

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