仕事に対するモチベーションの源泉
先日、後輩の女性から仕事のモチベーションについて質問された。
「なんのために働いていて、どのようにしてモチベーションを維持しているのでしょうか?」
若い時は、偉くなりたいとか、お金が欲しいとか、あるいは、人によっては一旗揚げたいなど、勢いや世間知らずもあって、やる気を持続しやすい。だが、社会人10年以上経過した頃から、進むべき道に悩んだり、モチベーションが低下したりする。そんな人が多いのかもしれない。
一方で、そんな苦労はほとんどなく、順調にキャリアを積んでいるように見える人もいる。彼女には、私のことがそう見えているらしい。業界キャリアが充分にあって、欲しいものは何でも手に入れて、やりたいことは何でもできている。そして、そのうえで、さらに何を望むのか? もう何も要らないのではないか。「それなのに、なぜ、そんなに仕事にエネルギーを注ぐのでしょうか?」と。
広告業界で仕事ができていることに感謝しているが、だからといって、彼女のいうように、「欲しいものは何でも手に入れて、やりたいことは何でもできている」というわけではない。どちらかといえば、思うようにならないことのほうが多い。社内を思うように動かせるわけではないし、業界や社会を変えることは、私個人の力では不可能だ。挫折もあれば絶望したこともある。
でも、ひとつだけ言えることがある。それは、「広告はヒトを幸せにする」、私はそう信じている。心の底からそう思えるとき、自然とエネルギーが湧いてきて、知らない間に、仕事に前向きに取り組んでいる。そんな自分に気がつく。
「なんのために生まれてなにをして生きるのか」。誰もが知っている『アンパンマンのマーチ』の一節だ。ここでアンパンマンを論じるつもりはないが、作者であるやなせたかし氏は、子供たちに「愛と勇気と冒険」の必要性を語りかけてくる。私は、ラディカルな意味で、根源的なところで、広告も同じだと思っている。なぜなら、そこには間違いなく“愛”があるからだ。“愛”がなければ勇気も湧かないし冒険にも挑めない。