広告の仕事の本質
「自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)」と呼ばれる代筆屋の少女が主人公、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。かつて「武器」として扱われ感情を持たなかった少女が、相手の想いをすくい上げ、手紙を代筆する。そして、その代筆の仕事を通して、人の感情に触れ、少しずつ“愛”を知るようになっていく(参照:「京アニ制作『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』放送10分で号泣の声続々「泣けた」「心が浄化された」 トレンド1位の大反響」)。
広告の仕事もこの代筆屋と似ている。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観た感想だ。相手の想いをすくい上げ手紙を書く。届けたい相手に届けたい想いを届ける。その根底には"愛"がある。広告の本質だ。マス広告だろうがネット広告だろうが、届けたい想いがある。それは、広告主企業の想いであり、そして、その想いを、届けたい相手がいる。相手は、ターゲット層の生活者だ。
企業活動の中心には“愛”がある。「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助(パナソニックホールディングス創業者)はビジネスにおける”愛”の重要性をよく語っていた。
「日本という国をよくしたいのなら、日本を大事にし、日本を愛し、日本を自覚して、そのうえでみずからの仕事に惚れて喜びを感じ、さらには互いに愛し愛されつつ、進んでいくことを心がけたい。」
「素直な心の中には、愛といいますか、憎むべき相手をも愛するといった心、また誤りを正し、正しい方向に導くといった心、そういうものも含まれると思います。また、高い見識というものも、こういった素直な心によって養われるのです。一言でいえば、素直な心は、人間を正しく強く聡明にするものです。」
(引用:『人間を考える 新しい人間観の提唱・真の人間道を求めて(PHPビジネス新書 松下幸之助ライブラリー)』松下幸之助著)
ほとんどの企業が世の中の役に立つ商品やサービスを提供している。いや、世の中の役に立たないものは売れないので、一時的なブームなどはあるかもしれないが、市場で売れている商品・サービスはすべて、社会の中で何らかの役に立っている。そこにはすべての企業の、そこで働く人たちの、誰かの役に立ちたいという想いがある。"愛"に根差した素直な心で、より良い世界を目指して懸命に働く人々。そのエネルギーが凝縮されている。
もちろん、詐欺広告を出すようなダメな企業も存在する。だが、それは徐々に淘汰されていく。電通や博報堂、サイバーエージェントなどの真っ当な広告代理店が取り引きする企業はすべて、根源的には、"愛"に根差した素直な心があるはずだ。
私たちは通常、オリエンテーションを受けて、広告主企業の想いを聞く。それをできるだけ深く理解し、キャンペーンの目的と予算に応じて、目標(KPI・KGI)設定を行い、ターゲット層を決定し、クリエイティブやメッセージの方向性を定め、メディアプランを作っていく。そして、ネット広告、特に運用型広告であれば、その後、はてしないPDCAサイクルを回していくことになる。