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Googleの弱点が露呈した「3rd Party Cookie廃止方針の撤回」

アドテク関連企業への影響

 そして、Googleだけではなくて、そのほかのアドテク関連企業のビジネスも行き詰まる。AppleがATTでやっているのと同じようなことをやったら、たとえば、ユーザーの同意取得率が20%程度になってしまうかもしれない。そうなると、Google広告の売上が20~30%ほど落ちてもおかしくない。いや、もっと落ちるかもしれない。そしたら、Googleの株価は、暴落する。市場価値は半減するかもしれない。さらに、そもそも、アドテク関連企業もバタバタと倒産するだろう。

 もちろん、英国の競争・市場庁(CMA)なども、成長市場であるネット広告関連企業の倒産、それによる失業などを望んでいるわけではない。そのため、GoogleのPrivacy Sandboxの開発方針に理解を示しつつ、監視してきたわけだ。

 今回の件を、2024年7月29日付のアタラCEO杉原剛氏の記事「Google、誤算と打算のCookie継続 「追跡」はユーザー責任」が的確にまとめている。AppleのATTと類似のものを想定して、次のように書かれている。

「ブラウザー上でユーザーに明示的に「クッキー利用を容認するか否か」の選択肢を提示し、オプトインまたはオプトアウトを促すものになると考えられる。アプリに行動の追跡を認めるか否かをユーザーに選ばせるAppleのATTでは、オプトイン率は20%から30%だ。クロームに類似の新機能が実装された場合、多くのユーザーがサードパーティークッキーを使用しない環境を選ぶと考えられる」

(出典:日経デジタルガバナンス「Google、誤算と打算のCookie継続 「追跡」はユーザー責任」

 2024年8月24日午前5時ごろ、私のiPadのYouTubeアプリで、アタラ杉原氏の予言通りの表示が出た。

 「次の画面では、広告のパーソナライズおよび広告の測定を目的として、YouTubeがこのアプリのアクティビティをGoogle以外のアプリやウェブサイトのアクティビティとリンクできるようにするかどうかを選択します」と記載されていて、その後に、ズバリ、「判断はお客様次第です」とボールドで表記されている。

 アタラ杉原氏は、Googleに内通しているのではないか? と思うほどで、提示された画面上ではユーザーに明示的に選択肢を提示している。現時点で、ブラウザのChromeやGmailなどGoogleの他のアプリでは確認できていないが、私の直感では、おそらく、一部のユーザーに対して技術的テストやオプトインの反応をみるために、試験的ベータ版として表示しているのかもしれない。

 これは、私の推測だが、ユーザーに選択肢を与えることによって、アドテク関連企業に対しても、規制当局に対しても、一つの逃げ口上ができる。「ユーザーが選択したのだから、仕方ない」ということだ。その一方で、Privacy Sandbox、あるいは、その延長のプロダクトの開発を進めていく。ここで、これまでと大きく異なるのは、規制当局に対しては「ユーザーに選択肢を与えている」と言える。

 Privacy Sandboxの開発では、今度は、自社への利益誘導をしているという規制当局の指摘をかわすことができる。なぜなら、ほかのアドテク関連企業のために開発する必要はないと主張しても、話が通る。ほかのアドテク関連企業は3rd Party Cookieを使えばよい。

 だが、そのユーザー同意取得率が低くて、アドテク関連企業に不利だったとしても、それは、ユーザーの選択結果であって、Googleの責任ではない、と。もちろん、Googleの知人に聞いても、これについては、「回答できない」「わからない」とのことだった。

 つまり、ほぼ使えなくなる3rd Party Cookieの同意を取るという表面的な一時的対応をする。そして、Privacy Sandboxの機能開発がGoogleへの利益誘導になっているという批判をかわしやすい状態を狙った。私の推測の域をでないが、これからどうなるのか、見守りたいと思う。

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露呈したGoogleの弱点

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/08/26 08:00 https://markezine.jp/article/detail/46485

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