日本の総トラフィックは、直近37ヵ月ダウントレンドに
ニューヨーク市場で上場し、国内で月間3,000〜5,000社の新規ユーザーがサービスを利用しているSimilarweb。業界王手企業をはじめ4,800社が導入する「ネット行動分析」は、自社サイトだけでなく他社サイトの各ページ数のアクセス・検索ワード・アクティブユーザー数などを推測するサービスだ。サイトの運営をしているが、トラフィックが伸び悩む企業を主な対象ユーザーとしている。
セッションの冒頭で「Similarwebのデータによると、日本国内のトラフィックの現状は全業種で直近37ヵ月間ダウントレンドにある」と、米田氏は語った。
トラフィックから見える、業界それぞれの傾向
Similarwebでは、トラフィックを業界別に分けて確認できる。たとえば、「Eコマースとショッピング」を見ると1位が「Amazon」、2位は「楽天」となり、これらが50〜60%のトラフィックを占めている。しかし、ここ3年間は全体的な減少傾向が見られる。
また、「アニメとマンガ」のジャンルでは、コロナ禍の影響もあり2023年8月までアップトレンドに。生活者の外出傾向の高まりなどを受け、以降はダウントレンドとなっている。
この他、「投資」においては若干のダウントレンドから、新NISAの発表があった2023年2月を機にアップトレンドへ転じた。以降、円安・円高の影響を受け多少の変動はあるものの、現在もアップトレンドにある。
このように、データを集めることで業界やジャンルごとの傾向が見えてくる。しかし、日本全体のトラフィック数が頭打ちしている事実は変わらない。
トラフィックシェア拡大中の企業の施策とは?
今まではトラフィック全体が伸びていたため、自社の業界の中で最適化を目指す方向性で問題なかったといえる。しかし現在、国内のトラフィックボリュームは有限となっている中で、企業はどこにトラフィック拡大の可能性があるのかを見出さなければならない。
「そのヒントは、トラフィックシェア拡大を実現している企業にある」と米田氏。成功している企業について細分化し深掘りしていくことで、どのようなマーケティング施策をしているのか学び取ることが、Similarwebのネット行動分析で可能となるのだ。
本セッションでは、Similarwebのネット行動分析の一つの手法である「キーワード」を活用し、国内ファストファッションを事例に米田氏が解説した。
まずトラフィックボリュームを見ると、「ZOZO」が強く次点で「UNIQLO」となっている。軸を「シェア」に変えると、3年間であまり状況は変わっていないことがデータから見えてきた。
ここから期間を12ヵ月に縮めて前年との対比を見ると、シェアを上げている企業が判明した。「ZOZO」「BUYMA」はシェアを少し下げているが、「UNIQLO」「ベイクルーズ」「パル」「.st(ドットエスティ)」がシェアを伸ばしているのだ。そこで、シェアを拡大するこの4社をベンチマークとして絞り込み、データを深掘りしていった。
シェア拡大中の企業から、トリガーとなるキーワードを抽出
シェアを拡大している企業をピックアップし、一つのセグメントとする。トラフィック発生の大半は検索がトリガーであり、この4社がどのようなキーワードでトラフィックを発生しているのかを見ていった。
3ヵ月前のキーワードは「Tシャツ」であり、「Tシャツ オリジナル」「Tシャツ 著名なイラストレーター」「Tシャツ 骨スト(骨格ストレート)」といったキーワードの組み合わせでの検索行動が見られたと米田氏は紹介した。ここから、引き締まって見える効果がある「骨格ストレートTシャツ」や、著名なイラストレーターとのコラボで販売数が伸びるといった、トレンドがうかがえる。
季節が変わるとキーワードも変化し、直近1ヵ月では「ビジネス ポロシャツ」が267%上昇したことが判明した。Similarwebを使うことで、「ビジネス ポロシャツ」で最もトラフィックシェアを取っている企業がどこか、ドメイン名とクリック数、前月比との変化がすぐにわかるのだ。
「このように、最もトラフィックを獲得している企業の取り組みを確認し、訴求方法を学んでいくことができます。視覚情報を見ることもでき、どのような広告があるのかといったクリエイティブの確認もできます」(米田氏)
トラフィックを解析し、データドリブンな施策運用を実現
ネット行動分析は、「全方位トラフィック」の解析によるサイト流入計画の立案、市場トレンドキーワードや他社プロモーション戦略の分析を、Similarwebで実施するところから始まる。分析の元プロモーション施策を実行し、アナリティクスを使って自社サイトのトラフィック流入を計測、プロモーションの効果検証ができる。
またSimilarwebでは、自社サイトのURLを入力することで、自動的に類似したサイトをまとめて「市場」を形成する。その市場トラフィックから昨対比シェアを確認することでシェアを拡大している企業を選定でき、改善のための示唆を得られる。施策立案を行い、アナリティクスで施策の効果検証を行うことで迅速にPDCAを回していくことが可能となるのだ。
とはえ、トラフィックがどこで発生しているかを見出して、自社施策に取り込むといっても、やはり難しく感じる人もいるだろう。そこで、米田氏は「トラフィックを取っている企業がどんな訴求をしているか、情報として集めていきます。既にアナリティクスは多くの企業が活用していると思いますが、トラフィックが頭打ちのため、キーワードがカギとなるのです」とポイントを示し、「どのようなキーワードを取るべきか、Similarwebで市場トレンドを察知でき、PDCAを回すことが可能となります」と述べた。
市場トレンドをいち早く察知し、施策に活かそう
国内のトラフィックが頭打ちになっているが、少ないながらもトラフィックが拡大している企業は存在する。Similarwebを使ったネット行動分析で判明したキーワードが、トラフィック増加につながるヒントを与えてくれる。
また、最近は生成AIで検索する人が増えている。海外では「3連休 北海道 予定」と検索すると、飛行機の時間やお店の場所などのタイムスケジュールを導き出してくれるサービスも広がっているという。Similarwebでは既にこの生成AIのデータも蓄積しており、検索・サイトアクセス・アプリ・生成AIといった4つのアクセスポイントから予想されるユーザー行動を確認できる、3つのサービスをリリースした。
1つ目は、自社サイトの訪問前後でユーザーがどの外部サイトに訪問・接触し、コンバージョンに起因する態度変容につながったかを探る「ネットジャーニー分析」。ユーザーの8割超がサイト来訪前に購入や登録などの判断をするともいわれる中、どんな行動を経て自社サイトでのコンバージョンまで至ったのかを把握できる。
2つ目は、ネット上の注目サービスや商品のトレンドがわかる「ネット市場トレンド分析」だ。たとえば、トラフィックを地図情報などのデータと照らし合わせることで、地域のニーズを調べられる。これにより、検索ボリュームの多い地域を割り出して、出店計画などに活用が可能となる。
3つ目は、主要な生成AIを活用した質問のトレンドと回答がわかる「生成AIトレンド分析」となる。「これらのサービスは既に米国やヨーロッパで実績を出しており、日本でもデータを活用した売り上げにつながる、効率的なマーケティング施策が期待できます」と米田氏は語り、セッションを締めくくった。
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