基盤が整い、広告面も拡充が進んでいるリテールメディア
――マーケティング業界では「リテールメディア」がバズワードのようになっています。長らくこの領域に関わってきた稲森さんは、この状況を率直にどう捉えますか?
稲森:アドインテは2017年からリテールメディアに可能性を見出し、リテール領域のDX支援およびリテールメディア構築支援に取り組んできました。2017年当時、アメリカでは既にリテールメディアがAmazonやWalmart、クローガーを筆頭に拡大していましたが、日本では詳細を認知している人がほとんどいない状況でした。ですので、我々の目線としては「やっとここまで来たな」というのが現状の見方です。
小売企業が持っている店頭およびECでの購買データや会員データは、マーケティングにおいて非常に重要な1st Partyデータです。2017年のiOSのITPアップデートや3rd Party Cookie規制の問題を筆頭に、Cookieに頼れなくなる中で、小売企業の1st Partyデータに注目が集まることは、以前から自明のことでした。小売企業の1st Partyデータを活用して、消費者にアプローチするリテールメディアの潮流は、やはり来るべくして来たと言えるでしょう。
――2023年時点では、まだ多くの小売企業がリテールメディアの土台を構築している最中でした。約1年経ち、2024年の状況はどうですか?
稲森:2020年からの勃興期を経て、「リテールメディアを構築しよう」という機運がコロナ禍でトレンド的に高まり、小売側のメディア数が一気に増加しました。それから2023年、2024年でリテールメディアの土台が整備され、ようやくデータや様々な顧客接点を活用できる事業基盤が整ってきた状況です。
日本では従来「リテールメディア=店舗内のサイネージやアプリ内広告」というふうに、リテールメディアはリテーラー“内”のイメージが強かったはずです。
一方、リテールメディア市場で特に伸長しているのは、1st Partyデータを接続して外部に配信する「オフサイト配信」です。Webメディアはもちろん、各種SNSやTVer、ABEMAといったCTVなどにも配信先は広がってきています。
オンオフ問わず多彩になってきた広告メニューには、それぞれメリット・デメリットもあります。たとえば、デジタルサイネージはまだ効果検証が難しい部分がありますが、店内での強制視認性は非常に高いです。このように広告枠やメニューによってバラバラなメリット・デメリットを整理していくことが重要だと考えています。