「デジタル広告 with リテールデータ」という考え方へ
――広告主は多数あるリテールメディアの中から、どのように広告の出し先を選べばよいでしょうか?
稲森:リテールメディアは様々種類がありますが、大きく区分すると、「サイネージ」「アプリ」「EC」「オフサイト」の4つに分けられます。
・サイネージ:店舗に設置しているディスプレイに配信する広告
・アプリ:小売企業のアプリ内で配信する広告
・EC:小売企業のオンラインショップ(ECサイト)内で配信する広告
・オフサイト:顧客データを外部ネットワークに接続し、WebサイトやSNS、動画サイトなど小売企業外の面に配信する広告
「アプリ広告とサイネージ、どちらをやるべきですか?」と聞かれることもありますが、冒頭でもお話ししたようにメディア特性もそれぞれ違うので、単純比較は難しいです。個人的にはどちらか単体ではなく、クロスメディアでの活用も検討すべきだと思っています。
たとえば、購買データを起点にオフサイト配信をし、SNSなど店舗外で日常的に見るメディアでリーチを取りながら、店舗内のサイネージでコンテンツを放映する。さらに小売企業のアプリでクーポンを配信し購買の後押しをするといった施策を、IDを活用しながら連携して実施できるのがリテールメディアの強みです。目的に応じた組み合わせで効果最大化を目指すのがポイントでしょう。
デジタル広告とリテールメディア、どちらがよいかという質問もよくいただきますが、これはあまり意味がない議論だと感じています。オフサイト配信であれば、購
買データを活用し、InstagramやYouTube、TVerなどへ連携した配信が可能です。つまり、異なるのは、媒体が持つデータを使うか、小売企業が持つデータを使うかという点のみで、媒体自体は今まで活用していたデジタル媒体と何ら変わりないのです。
デジタル広告とリテールメディアで優劣をつけるのではなく、今回はGoogle広告を活用して配信しようとなった場合、じゃあそこにコンビニのデータを連携しよう、ドラッグストアのデータを連携しよう、というように「デジタル広告withリテールデータ」の形で考える方法が今後は主流になっていくと考えています。
――最後にアドインテが掲げる2025年の展望をお聞かせください。
稲森:リテールメディア各社の特長や強みを活かした土台づくりは、まだまだ必要だと感じるため、継続して支援をしていきます。また、リテールメディアのネットワーク化は広告主側、小売企業側でともに需要が高まり始めています。これを受けて2025年、日本でのリテールメディアのネットワーク化に向けたチャレンジはしてみたいと考えています。
もちろん、先にお話ししたとおり、単純にネットワークを構築すればよいわけではありません。また、競合同士のネットワーク化は難しいなど、障壁はあります。しかし、「この方法であれば、日本流のネットワーク化ができるのではないか」という構想はあるので、2025年に挑戦したいと思います。