※本記事は、2024年12月刊行の『MarkeZine』(雑誌)108号に掲載したものです
【特集】2025年・広告の出し先
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「見る」から「体験」へ
──最初に、御社について教えてください。
ARROVAはいわゆるバーチャル領域(ゲーム空間やメタバースといった3Dの空間)や、Appleなども推進する、ARやSpatialComputing領域でプロモーションを行うためのメディアプロダクト開発、コンテンツを企画・制作する組織です。設立は2023年ですが、2020年頃から始動しています。
──バーチャル空間の利用について、活用の現在地や企業の期待感を教えてください。
過去から遡って話をすると、当社は最初に人気ゲーム内の街並みの中に看板広告を配信する取り組みを進めました。バーチャルサイネージ広告(VOOH)と称し、看板を設置するように広告枠を提供するイメージです。
次に、現実に存在するブランドのアイテムを3Dモデル化して設置するプレースメントを開始しました。最近では企業のPR用ゲームを作ったり、空間全体をブランドの世界観にしたり、商材をコンテンツ化して体験しながら遊んでもらえる仕組みを作ったりできるようになっています。
いわゆる広告枠的な2Dの面だけでは伝えきれない深い情報や、長い時間の接触が可能になり、PRやブランドコミュニケーションなどの領域で活用事例が増えてきているのが現在です。
企業の方々が共通して持つ期待感として、若年層へのアプローチがあります。RobloxやFortniteといったゲームを含む3D環境コンテンツのユーザーは全世界で約30億人。日本でも約5,000万人と言われています。とりわけZ世代やα世代は可処分時間の2割ほどを費やしています。
若年層のマスメディアへの接触が減少し、デジタルは競合が多く、ターゲティングの難易度も上がっています。「若年層が熱狂して長い時間を過ごす場所はどこか?」を考えると、ゲームやメタバースに期待の目が向けられているのです。
さらに、バーチャル空間では表現の幅も広いです。ファッションブランドが実在する服をアバター用に提供したり、車メーカーがレースゲームを用意したりしています。ユーザーがコンテンツに10分以上滞在するケースもざらです。ブランドとユーザーの接点を作るという観点では他のメディアにはない特長かと思います。
──いわゆる枠から空間に広告やPRコンテンツが変化しているのですね。効果測定はどうなっているのでしょうか?
データ自体は細かく計測可能なので、見ようと思えばきりがありません。高度なコンテンツの場合は基本的にはエンゲージメントを見ることが多いです。デジタル広告でも完全視聴率やCTRなどを計測することが多いと思いますが、バーチャルでも近い形でコンテンツへの総接触時間の長さや、接触回数、接触人数を見ています。また、バーチャルゲームの実況配信も人気コンテンツなので、インフルエンサーや配信者、その視聴者による拡散もあります。PRやコンテンツマーケティングに近い思考で露出の測定を行っています。
VOOHの場合は広告の閲覧数や広告の視聴時間などが計測できますし、ターゲティングなど配信のベースが整っているので、デジタル広告ライクな測定が可能です。
──ARROVAはバーチャル空間の活用として「プレイアブルブランディング」を提唱しています。これはどういったものですか?
プレイアブルブランディングとは、コンテンツ化された広告を楽しみながらブランドに触れたり、商品やサービスを疑似体験したりすることでより強く記憶に残る体験を作っていくという考え方であり、ソリューションです。
生活者の情報リテラシーは極めて高く、企業の取り組みをしっかり見ています。企業が「私たちはこういうことをしています」と一方的に語っても、生活者が「それで何が変わるか」に納得できなければブランドへの好意度や購買率が上がらない傾向があります。
対策として生活者がバーチャル空間で魅力的なIP・世界観に没入し、印象的に企業メッセージを体験し、コミュニティでその体験を共有することが有効だと考えています。これを我々は「ストーリーテリングからストーリープレイングへ」と表現しています。