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愛されるブランドの仕組み:ブランド・リレーションシップ入門講座

ブランド・リレーションシップを形成・活用するには?リコーの好例と実践的なアプローチを解説【第7回】

マーケティング効果から考える

 活用と形成のバランスについて検討するには、ブランド・リレーションシップに期待するマーケティング効果から考えるのが良いでしょう。まず、ブランド・リレーションシップにどのような効果を求めるかを明らかにし、それを達成するにはブランド・リレーションシップの形成に力を入れるべきか、活用に力を入れるべきか、あるいは両方に同時に取り組むべきかを検討するのです。

 第4回で説明したように、ブランド・リレーションシップには様々な効果があり、頑健な継続購買傾向、価格受容性、アップグレードといった購買効果もあれば、肯定的なクチコミ発信、否定的な情報への抵抗(免疫効果・ガーディアン効果)、ブランドに対する支援といった購買以外の効果もあります。

 これらの効果はいずれも大切ですが、第4回の「ブランド・リレーションシップの相対的効果モデル」で明らかになったように、「支援」はブランド・リレーションシップの特徴的な効果です。

 またそのなかでも「顧客知識の提供(革新や改善のためのアイデアとなる有益な情報を、顧客が企業にフィードバックしてくれること)」は、製品開発や製品改善、ブランド・ポジションの変更、その他様々なマーケティング活動に対して有益な示唆をもたらします

 ブランド・リレーションシップが形成された消費者は、そのブランドに対する強い愛着と深い知識を活用して、ブランド・コミュニティのリーダーを担当してくれたり、アドボケイツとして活躍してくれたりすることもよくあります。ブランド・リレーションシップからもたらされるマーケティング成果を、購買効果だけに限って考えるべきではないのは明らかです。

活用と形成が両立した好例:リコーの「GR」シリーズ

 活用と形成のバランスに、話を戻しましょう。ブランド・リレーションシップの活用と形成を効果的に両立させた好例として、リコーの高級コンパクトカメラ「GR」シリーズが挙げられます(久保田・大竹, 2016)。GRシリーズは1996年に発売されたGR1以来、熱心な顧客との相互作用を通じて進化を遂げてきました。

 熱心な顧客からの提案を「スナップ・シューター」というコンセプトへと昇華させ、2005年のGR DIGITALとして具現化しました。また、ユーザーとの対話を通じて「GRらしさ」を構築していきました。さらに、プロ写真家やテクニカル・ライターとの撮影会などのイベントを通じた直接交流、ハイアマチュアとの双方向型コミュニケーション、写真好きの販売スタッフとの継続的な対話など、多層的なアプローチを展開しました。これらにより新たなファン層を開拓し、「本物」「正統派」というブランド・イメージの確立にも成功しました。

 特筆すべきは、従来から存在した献身的なファンの存在によってブランド・コンセプトが磨かれ、その魅力的なコンセプトが新たなファンを呼び、さらにファンがファンを呼ぶという好循環が生まれた点です。これは「活用」と「形成」が相乗効果を発揮した典型例と言えるでしょう。

 ここまでを簡単にまとめます。自社ブランドにまだリレーションシップを抱いていない顧客との間に新たにブランド・リレーションシップを「形成」することも大切ですし、既に自社ブランドにリレーションシップを形成している顧客を経営資源として「活用」することも大切です。いずれにおいても、ブランド・リレーションシップからもたらされるマーケティング成果を、購買だけでなく幅広く捉えることが必要です。

次のページ
「形成」の第一歩は「顧客のブランド経験」への理解から

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この記事の著者

久保田 進彦(クボタ ユキヒコ)

青山学院大学 経営学部教授、博士(商学)(早稲田大学)。日本商業学会学会賞受賞(2007年論文部門 優秀論文賞、2013年著作部門 奨励賞)、公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究吉田秀雄賞受賞(2010年度、2016年度)。最新作は『ブランド・リレーションシップ』(有斐閣)他著書多数。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/02/27 08:30 https://markezine.jp/article/detail/47949

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