内製化した開発チームの強み
同社ではID統合をスムーズに進めるため、開発体制も整えている。開発を支えるのは社内の内製化チームであり、アジャイル開発手法を採用。スクラム体制を組むことでスピーディな開発を実現しており、「小さく早くリリースする」ための専門チームを編成している。
この方法の大きな利点は、顧客の声を常に聞きながら細かいサイクルでリリースできることにある。そのため最終的な成果物は顧客の望むものに近くなっていく。
「デジタルシフトを進めるのは『人』です。どのような戦略を立てても、それを実行できる『人』がいなければ何も成し遂げられないと考えています。イオンでは、ソリューション開発だけではなく、DX人材の育成の取り組みを行っています。たとえば、イオンデジタルアカデミーでは、イオングループの従業員にデジタルスキルを習得させる教育の機会を提供しています」(関矢氏)
イオンスマートテクノロジーにフォーカスすると、キャリアを積んだデジタル専門人材と、現場の理解が深いグループ人材が、半々で融合した会社となっている。グループの人材が現場の真の課題を捉え、キャリア人材が持っている専門的な知見と融合することで、新たな価値を生むソリューションを提供していきたいとしている。
統合IDのマーケティング活用とその成果
同社ではCDPを内製し、蓄積されたデータを活用して、顧客のジャーニーに沿った販促支援を進めている。この基盤を構築したことにより、配信先の顧客に関係のない情報やクーポンの無駄打ちがなくなり、パーソナライズされたデータに基づいた情報だけを届けることが可能だ。顧客と事業者、Win-Winの関係といえるだろう。「会員拡大と同時に、蓄積データの活用も不可欠です」と関矢氏は語る。
このようにiAEON会員の購買データとCDPを連動させ、最適なプロモーションを実施した成功事例としては、まず優良顧客が増加している点が挙げられる。また、ランクアップ施策を継続した場合のバスケット単価(1度の買い物で同時購入する金額)の伸長例を見ると、何も施策を行っていない状態と比べ、CDP施策を継続した場合、2倍以上の伸びを示したという。
現在は、会員情報とID-POSによる購買データを組み合わせた「カスタムセグメント」によるクーポンや広告、キャンペーン告知の配信を行っている。さらに次のステップとして、購買データからは直接見えない顧客の志向性を可視化する取り組みを進めている。これにより、より深い顧客理解に基づいたマーケティング活動が可能となり、さらなる顧客満足度と事業成長を目指すという。