「いっしょにAI」で広がる生活の可能性
現実世界を膨大かつ複雑なシミュレーションで強化してくれるAIだが、インターフェースは至ってシンプルな「AIエージェント」になりそうだ。AIエージェントは、自然な会話を通じて、情報を探すだけでなくアクションもしてくれる。
たとえば、旅行の計画をAIエージェントに相談すると、旅行先や交通手段、宿泊先を提案してくれるだけでなく、航空券やホテルの予約まで代行してくれる。今回のCESでも家族の幸せを実現するための提案を行い、スケジュールまで押さえてくれるAIコーチや、飛行機での移動をサポートしてくれるAIコンパニオンなど、AIエージェントの萌芽とも言うべきものが出展されていた。
そしてこのようなAIエージェントの居場所は、スマートフォンやPCなどの従来型のデバイスに縛られない。テレビ、クルマ、冷蔵庫、洗濯機、イヤホン……など様々なデバイスに遍在する。いつでもどこでも語り掛けながら、便利で快適に過ごす「いっしょにAI生活」が実現するのだ。
スマートグラスの進化がすごい!
「いっしょにAI生活」のデバイスとして、今年は特にスマートグラスに注目が集まった。特に話題になったのは「Halliday Glasses」。わずか35gと軽量ながら12時間使用可能だ。またこのスマートグラスはプロアクティブAIを搭載し、周囲の音声や状況を把握しながら生活をサポートしてくれる。
コンセプトムービーでは、複雑で長い会議の最中に内容を把握し「このような提案が効果的です」とスマートグラスにアドバイスを映し出す様子や、旅行で多言語翻訳をする様子が紹介されていた。
まさに「いつもいっしょにいて、生活を便利にしてくれるAIエージェントデバイス」だ。Hallidayは米国のブランドだが、軽量で長時間利用可能なスマートグラスは中国発で多く出展されていた。今後、このようなデバイスにAIエージェントが搭載される可能性も大いにある。
ブランドやメディアに求められる「AIエージェント対応」
AIエージェントとの対話という新たな接点が登場する中、企業はAIエージェントに向けたコミュニケーション戦略を構築していく必要があるだろう。これまでサーチエンジンマネジメントが求められていたように、AIエージェントに自社商品・コンテンツを認識し、お薦めしてもらうための戦略が求められてくる。
クリエイティビティのあり方も変化する。生活者の性年代、居住地、視聴閲覧履歴などの「属性」に応じて行う広告配信が、生活のセンシングから体調、感情、気分などの「状態」を把握し行うものとなる。この「状態」に向けて、自社商品・コンテンツをAIエージェントにどう語り掛けてもらうと有効なのか、さらにどのような広告表現だと不快なく効果的になるのかも考えねばならない。
AIの存在感がますます大きくなる未来。「我々マーケターの仕事がなくなる」と懸念を示す向きもあるが、決してそんなことはないはずだ。変化と共に新領域は生まれ続ける。チャレンジは待ったなしなのだ。
