累計10億枚以上のレシートを買い取り
WED(ウェッド)が運営する「ONE」は、登録ユーザーからレシートを1枚1円以上で買い取るアプリだ。クライアントが指定した商品のレシートを買い取る「レシート買取ミッション」では、数十円〜数百円と買い取り額が高くなる。

2018年のローンチから7年ほど経った現在、ONEのダウンロード数は600万を超えており、累計10億枚以上のレシートを買い取っている。そのようにして収集した豊富なレシートデータとONEのユーザー基盤を活用し、同社は企業のマーケティングを支援しているのだ。
代表を務める新井俊樹氏曰く、WEDの事業領域は「国内外メーカーのセールスプロモーション支援から自治体の消費喚起施策まで、幅が広がっている」という。本セッションでは、ONEのレシートデータを新商品・新ブランドのローンチ時に活用する方法を紹介する。

新商品の初動をいかに素早く捉えられるか
新商品・新ブランドを市場に投入した直後は、初動が気になるところだろう。多額のプロモーション費用をかけた場合、初週はプレスリリースやCMなどの効果で良い滑り出しを見せるはずだ。しかし、2週目以降も好調を維持することは非常に難しい。「プロモーションの波が落ち着くとともに、販売数も落ちる場合が多い」と新井氏は指摘する。

売上を軌道に乗せるためには、初動を速く捉えて改善策を打つ必要がある。しかし、意思決定に必要なデータの収集には時間とコストを要するため、課題は多いと言える。
「初動で手を打たなければ、リピート購入や小売店などでの定常販売につなげられません。発売直後の動向を素早く読み解き、最適な対策を打つことが重要です。ONEでは膨大なデータをリアルタイムに取得できるため、実購買ユーザーを素早く見つけてアクションを考えることができます」(新井氏)
レシートの「表記ゆれ」問題をどう回避する?
新商品の売れ行きを初動で失速させないために、多くのマーケターは「顧客の購買傾向」「競合の状況」「市場のトレンド」「自社のターゲット」などに目を向ける。それらの根拠として購買データは有用だが、参照元によって得られる情報は限定されてしまう。

たとえば、クレジットカードの決済データを参照すれば「どこでいくら購入した」はわかるものの「何の商品を買った」はわからない。店舗のPOSデータからは顧客属性が読み取れない上、情報がチェーン店内に閉じている。会員カード情報では導入店舗以外の購買データがわからず、消費者パネルデータはデータ量や調査対象となる商品が限定的なのだ。
その点、ONEのレシートデータなら「誰がいつどこで何を買ったか」がわかるという。たとえば、Aさんがコンビニエンスストアでコーヒーを購入した後、スーパーで生鮮食品を購入し、ガソリンスタンドで給油をした場合、それらの連続した購買行動を追うことができる。

「あらゆるチャネルを横断して購買データを集められる点が、ONEの特徴の一つです。ある商品がいつどこでどれだけ買われているか、何と一緒にどんな人が買っているか、ということも分析することができます」(新井氏)
レシートデータを扱う難しさとして、新井氏は「表記のゆれ」を挙げる。たとえば同じ「ONEビール」という商品でも、チェーンや店舗によって「ONE BEER」「ワンビール」など、レシート上の記載が異なるためだ。

「当社では、画像から文字を起こすOCR(Optical Character Recognition)を用いた独自のデータ基盤によって、レシートの印字内容をデータ化しています。それらのデータを機械学習モデルに学習させながら、文字列を商品名・カテゴリー・品番・店名などに構造化しているのです」(新井氏)
ペルソナの迅速な修正でリピート購入者数を伸長
ここで新井氏は、酒類メーカーA社の事例を紹介する。新発売するアルコール飲料のペルソナとして、次のような特徴が設定されていた。

設定したペルソナ通りの人物が新商品のファンとなり、リピート購入しているのか。その点を確認するため、A社ではONEのデータを基に短期間でリピート購入しているBさんを深掘りした。
ONEのデータなら、性別・年齢・居住地・子どもの有無など、アプリに登録された情報に加えて、レシート情報から出かける場所がわかる。Bさんは、平日に新橋周辺と錦糸町周辺で購買することが多いため、このエリアが職場と自宅に近いと考えられる。一方で、週末は小田原や鎌倉など海の近くで過ごしていた。また、SNSで話題のカフェを訪れたり、ヘルシーな食品を購入したりしていたそうだ。
Bさんを深掘りしたことにより、新商品のアルコール飲料がアクティブなシーンでも好まれるポテンシャルを備えていることがわかった。そこでA社はペルソナを迅速に修正。リピート顧客を確実に補足するためのプロモーションを展開していった。

「このアルコール飲料は発売後も徐々に市場へ浸透し、ONEでの購入ユーザー数や購買が確認できるレシート数、取扱店舗数が右肩上がりに増えていきました。また初動では購入者数と購入数がほぼ1:1でしたが、3ヵ月後には約5.6万人のユーザーに8.7万点購入され、一人あたりの平均購入数は1.4倍に伸長。リピート購入されていることが観測できました」(新井氏)
パッケージ改善や新規顧客獲得にもレシートデータが寄与
新商品のローンチ時以外にも、ONEのデータは様々な局面で活用できる。「キャンペーン開始前や終了後もデータを取れる点がONEの強みの一つ」と新井氏は語る。

次の図は、クライアントが指定した商品の購入レシートを高く買い取る「レシート買取ミッション」を活用したキャンペーン(以下、マストバイキャンペーン)実施前後の購入数をまとめたものだ。

マストバイキャンペーン期間中に購入数が増えることは想像に難くないが、この図を見ると実施後も実施前より購入数が増えている。つまり、マストバイキャンペーンでトライアル購入した後にリピート購入したユーザーがいるわけだ。
「ONEでは、マストバイキャンペーン実施前後の変化や、競合と比較した自社商品の強み/弱みを把握できます。また、ユーザーのライフスタイルを知り顧客理解をした状態で、コミュニケーションできる点が強みです」(新井氏)
ONEのデータを商品の改善に役立てた事例として、新井氏は日本製紙クレシアのウェットティッシュ「PULP WET 100」を挙げる。この商品は、既存のウェットティッシュにはない機能性を備えながらも、商品の強みが消費者に伝わっていなかったそうだ。そこで、エリアを絞ったマストバイキャンペーンをONEで実施した。
実施後のアンケートを通じて、商品の強みがパッケージで訴求しきれていないことが浮き彫りになったため、パッケージのリニューアルに至ったという。
「マストバイキャンペーンに参加したユーザーの97%以上がPULP WET 100の新規ユーザーだったため、ONEが新規顧客の獲得にも寄与した好例と言えます。また、ONEに商品特徴を掲載することで機能面での強みを訴求し、リピート購入を促進しました」(新井氏)
主要SNSと遜色ないアクティブユーザー数
新井氏によると、ONEでは国内の月間消費の約1%に相当する規模の消費を、毎月トラッキングしているそうだ。レシートはどの流通業態でも使われているため、国内リテールのカバー率はほぼ100%だという。
「ONEのユーザーIDを、クライアントが保有する会員IDやECサイトのID、あるいはLINEなどのCDPと紐づけることも可能です。これにより、プロモーションを出し分けてリピート購買に生じる差を分析することもできます」(新井氏)
レシートデータのボリュームを確保するためには、多くのユーザーから継続的に利用される必要がある。ONEで1年間アクティブにレシートを投稿するUUは 16.3万人で、Instagramなど主要SNSと遜色のない頻度で利用されているそうだ。

「毎日チェックインするユーザーにインセンティブを付与したり、年末にその年の買い物を振り返るイベントを開催したりと、ユーザーにとって楽しい体験の提供にも努めています」(新井氏)
最後に新井氏は、ONEが認知から興味関心、検討、購買、リピート・定着まで、ワンストップで支援できるマーケティングソリューションであることを強調し、本セッションを締めくくった。
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