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データ倫理は「守り」ではなく「攻め」――AI時代のデータ活用に不可欠な「ELSI」の概念を理解しよう

 2025年2月、ベストインクラスプロデューサーズの創業10周年を記念したイベントが東京と大阪の2ヵ所で開催された。カンファレンスでは「ブランディング」や「地域と企業のサステナビリティ」「広告業界の変遷」といったトピックスについて議論が交わされた。本記事では、その中から「データと倫理」をテーマにしたパネルディスカッションの内容をレポートする。登壇者は、パーソルテンプスタッフの友澤大輔氏、日本経済新聞社の小林秀次氏、大阪大学ELSIセンターの朱喜哲氏。モデレーターはビーアイシーピー・データ代表の渡邉桂子氏が務めた。

データマーケティングの主軸に「倫理」が置かれる時代に

渡邉:このセッションでは『AI時代だからこそ積極的に考えたい「倫理的取り組み」の意義』というテーマでディスカッションし、マーケターに持っていただきたい「データ倫理の視点」と「求められるアクション」について考えていきます。

株式会社ビーアイシーピー・データ 代表取締役 渡邉桂子氏
株式会社ビーアイシーピー・データ 代表取締役 渡邉桂子氏

 はじめに、「ELSI(エルシー)」というフレームワークを使って、データ×倫理に関する理解を深めたいと思います。ELSIとはどういった概念なのか、朱さん解説をお願いできますか。

朱:ELSIとはEthical, Legal and Social Issuesの略で、直訳は「倫理的・法的・社会的な課題」です。意味合いとしては「新しい科学技術を社会に実装する際に生じる、技術以外のあらゆる問題・課題」を総称する概念となります。

 たとえば、最近街中で電動のキックスクーターをよく見かけるようになりました。この交通ルールの整備について各所で議論が起こっていますが、これは典型的なELSIの例です。技術的には可能だが、そもそも実現させて良いか? どのように法整備をすべきなのか? など技術を社会に実装する時には議論すべき様々な課題が出てくるわけです。

 ELSIには、直訳のとおり「法」「社会」「倫理」の3つの観点があります。このセッションでフォーカスしているデータ領域において、企業が自主的に取り組めるのは3つの観点のうち「倫理」だと私は考えています。というのも、法的な問題は対応するのが当たり前として、社会的な問題に関してはリスク(例:炎上)をゼロにする・100%の対策をするのが難しいからです。

大阪大学 ELSIセンター招へい准教授 朱喜哲氏
大阪大学 ELSIセンター招へい准教授 朱喜哲氏

朱:また、企業におけるデータ倫理には、「絶対に守るべきもの」とする考え方と「できる限り意識しよう」とする努力目標的な考え方の2通りがあります。日本企業の場合は往々にして努力目標となっているケースが見受けられますが、欧米企業では「データ倫理は絶対に守るべきもの」として位置づけられています。お客様のデータを自社に預けてもらえるよう“信頼”を獲得するためには、企業が自らの倫理性を示していかなければなりません。Appleが「プライバシー、それがiPhone」というCMを展開していましたが、特に欧米のプラットフォーマーにおいては、プライバシーに対する高い視座、自社の倫理性を示すことがマーケティングの主軸となっているのです。

 これが世界的なデータマーケティングの最先端の考え方であり、欧米企業と同じ土俵で戦っていくためには、「データ倫理」というものをしっかり理解する必要があると考えています。

渡邉:ありがとうございます。通常なら1時間以上かけて講義される内容を、10分でわかりやすくご説明いただきました。

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データ倫理は転ばぬ先の杖。自分たちの言葉に落とし込もう

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/26 08:30 https://markezine.jp/article/detail/48671

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