【この記事で学べるポイント】
顧客を漠然と捉え、誰にも響かない施策をやみくもに打つのではなく、顧客の状況や心理を把握して事業成長につながる一手を打てるようになります。
顧客理解の粒度が粗いと、誰にも響かない
MarkeZine編集部(以下、MZ):前回の記事では売上の「質」についてお聞きしました。今回は、「誰に(WHO)」価値を提案するかの根幹となる、対象顧客についてうかがいたいです。新任マーケターがターゲティングを任されることは少ないでしょうが、「ターゲットは30代女性」などの広い定義を提示されても、どうしていいかわからなくなりそうです。
西口:そうですよね。マーケティング初心者だけでなく、経験が長い方も陥りがちなのが、顧客を「デモグラフィック属性(性年代)」や「平均値」で捉えてしまうことです。実在する顧客はもっと多様で、属性だけで語ることは不可能です。
MZ:属性では区切れないのは、なぜでしょうか?
西口:仮に「30代女性」に多く購入されている化粧品を考えると、対象顧客には「毎日その商品を愛用しているファン」や「一度使ったけれど他の商品に移った人」、そして「ブランド名すら知らない人」が混ざっています。
ファンに対して引き続き使っていただくアプローチと、名前すら知らない人にまずは認知してもらうアプローチは、まったく異なります。これらを一括りに「30代女性」として施策を打つと、誰の心にも響かない、中途半端なものになります。結果として、無駄な投資が増えてしまいます。
MZ:確かに、自分に置き換えて「30代女性」「20代男性」などと括られても、ピンときません。
西口:平均値も同じように、使い方に注意が必要です。身長160cmの人と180cmの人がいたら、平均すると170cmですが、170cm用の服はどちらの方にもフィットしませんよね。これは極端な例ですが、これだけ生活者の趣味趣向が多様化している今、粒度の粗い捉え方では前述のデモグラ分析と同じように、誰にも響かないのです。
顧客を「ロイヤル」~「未認知」に分ける
MZ:前回、売上は一緒くたではなく、継続的な事業成長につながる「良い売上」を集めることが重要だとうかがいました。そのためには、具体的に対象顧客をどのように分類するとよいのでしょうか?
西口:大きく2つ、「5segs(ファイブセグズ)」と「9segs(ナインセグズ)」というフレームワークを紹介します。2019年に上梓した『顧客起点マーケティング』(翔泳社)の他、MarkeZineでもたびたび紹介させていただいていますが、前回の「良い売上」と紐づけて、改めて解説します。
先ほど、対象顧客について「毎日その商品を愛用しているファン」「一度使ったけれど他の商品に移った人」「ブランド名すら知らない人」という区分を提示しました。これは順に、ロイヤル顧客、離反顧客、未認知顧客、と言い表せます。でも、ここに欠けている層として、ロイヤルほどではないが普通に購入・利用している一般顧客と、買ったことはないが知っているという認知未購入顧客が挙げられます。
実は、BtoC・BtoBを問わずあらゆるビジネスは、これから購入していただきたい潜在顧客も含め、この5層に必ず分類できます。図解すると、次のようになります。右側に記したように、認知の有無、購入経験の有無、そして購入頻度によって分類できます。このフレームワークを「5segs」といいます。
