参入障壁に守られてきた日本のテレビ業界
YouTubeやTikTokなどネット上でのクリエイターエコノミーと比較すると、「ソフトとハードの分離」がわかりやすい。
- クリエイター(制作):コンテンツを制作し、SNSにアップロードして広告収益を得る
- プラットフォーム(配信):広告枠を販売し、トラフィックを最適化・最大化する
たとえばYouTuberは、YouTube上での広告収益の4割程度を「配信プラットフォーム利用料」として支払う必要がある。その点、日本のテレビ局はそのコストをほとんど負担することなく放送できている。
さらに、AlphabetやMeta、Amazonなどのプラットフォーム側IT企業は、莫大なコストをかけて自社の配信インフラを維持している。たとえばAlphabetならば、2024年、放映コストに相当する配信トラフィック獲得費用(Traffic Acquisition Cost)として約8.2兆円(549億ドル)を支出した。結果として得られた広告部門の収益は約45.7兆円(3,050億ドル)。つまり、広告収益の約2割を配信コストとして支出している。
フジテレビの広告収入減が騒がれているが、実は根本には、こうした産業横断的な権利の集中構造の課題が潜んでいる。格安の事業インフラ(放送電波)に支えられた垂直統合の事業モデルは、新規参入の障壁が高い。日本の放送業界は、外資系企業はおろか、国内企業でも乗り越えられない参入障壁で守られている。
テレビ局の経営課題や広告収益の減少は、業界全体の構造的な問題として捉える必要がある。「放送電波の価格設定」「ソフトとハードの分離」「広告市場の競争市場」など、国レベルでの議論が必要となるだろう。広告主やマーケターがこの状況に気付き、業界横断的な検討が始まることを期待する。
