ブランドを育てるための戦略的バランス
しかしながら、長期的なブランド構築が重要である一方で、短期的な施策も必要になる。久保田教授は、このバランスを「体力作りとおしゃれの関係」に例えた。
ブランディングは、筋トレや運動のように長期的に取り組むことで効果が現れるものであり、即効性のあるプロモーション施策は、ファッションやヘアスタイルのように、その場の魅力を高める役割を果たす。しかし、表面的な施策だけではブランドの基盤が弱くなり、長く愛されるブランドを作ることは難しい。
「決してブランディングがいらないわけではなく、かといってブランディングだけでいいわけでもない。つまり、長期的なブランディングと、即効性のあるSP(セールスプロモーション)的な施策を組み合わせることが重要です」(久保田教授)
この考え方は、実際のマーケティング施策にも当てはまる。武内氏もこの意見に賛同し、次のように語る。
「顧客は一様ではなく、ブランドに対する期待も異なります。そのため、ターゲットごとに目的を変えた販促施策や、即効性の高いキャンペーンも組み合わせています。ただし、ブランドパーソナリティを一貫させることが何よりも重要です。もし一貫性のない施策を実施すれば、ブランドの信頼が崩壊してしまう可能性もあるでしょう」(武内氏)
ブランドパーソナリティの一貫性が重要という視点は、消費者のブランド選択にも大きく関わる。消費者がブランドを選ぶ理由は、単に商品のスペックや価格だけではない。ブランドが持つ価値観やストーリーに共感し、自己と重ね合わせることで、ブランド・リレーションシップはより強固なものになる。サッポロビールのように、ファンと共にブランドを創り上げる姿勢こそが、長く愛されるブランドを生み出す鍵となるのだ。